戦争省との名称は現時点であくまで「副次的な名称」

過去1789年から1947年の間は「戦争省」
法令で定められた正式名称は依然として「国防省」
大統領令では法令内容の変更は不可
しかしトランプ政権は法令改正で「戦争省」正式化を目指す

9月5日、トランプ大統領が国防省(the Department of Defense)の「副次的な2番目の名称:secondary title」を「戦争省(the Department of War)」と定めるとの大統領令に署名し、ペンタゴンのヘグゼス国防長官オフィスドアの表示は、「Office of the Secretary of Defense」から「Office of the Secretary of War」へ架け替えられ、国防省の公式ウェブサイトは「war.gov」に変更されました。

ただし、国防省(the Department of Defense)との組織の正式名称は米議会の承認を得た法律で定められたものであり、これを大統領令で変更することはできないことから、現時点では米議会の関与を必要としない、あくまで「副次的な名称:secondary title」で、「国防省」の名称は「法律によって変更されるまで」は維持される、とホワイトハウスも説明しています

ただし大統領令によると、ヘグゼス長官は「公式文書や通信、儀式、そして行政府内の非法定文書」において「戦争省の戦争長官」の称号を使用でき、国防省も同様に「戦争省」を使用できるとのことです。

9月6日付米空軍協会web記事は「副次的な名称」について、ビジネス界ではこの手法をDBA(Doing Business As)と呼び、企業が正式名称とは異なる名称で事業を運営する際によく使われる手法だと説明し、「Alphabet Inc.」が正式名称のインターネット検索大手企業が、「Google」との名称のまま事業を行っている事例を紹介しています。

一方で、「戦争省」との副次的名称を定めた大統領令は国防長官に対し、「60日以内に国防省の名称を正式に恒久的に戦争省に変更するために必要な措置の提言」提出を求めており、「戦争省」との名称を「副次的」で終わらせるつもりはさらさらなく、正式に法令を改正して「恒久的な」名称にするつもりのようです

改称の意義について国防省報道官は声明で、「我々の誇りある伝統への敬意表明だ」とし、「この変更は、国防省の中核的使命である『戦争に勝つ』を反映するもので不可欠だ」、「平和を願いながらも戦争に備えることが使命であり、防御だけでは不十分だ。敵を攻撃し支配する備えを整えることが任務だ」と説明しています。

トランプ大統領は5日の大統領令署名時にヘグゼス長官と統合参謀本部議長を従えつつ、「これは勝利のメッセージだ」、「我々は非常に強い。誰も理解できないほど、はるかに強いのだ」と、いつものトランプ節で語っています。
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歴史的には、「戦争省」との名称が使用された期間は「国防省」より長く、「戦争省」は1789年から1947年の間に158年間使用された経緯があり、「国防省」が1949年から2025年の76年間の歴史しかない点からすると「新参者」とも言えます。

米議会では、民主党はもちろん反対で、共和党議員の中にも、改称に必要な予算を装備品導入に投入すべきとの論者が出てきており、正式改称の道は険しそうですが、米国メディアは今後のニュース配信でどの名称を使用するのでしょうか? FOX系は「戦争省」で、その他は「国防省」のままでしょうか・・・? 日本のメディアはどうするのでしょうか? 反応が目に浮かぶようですが・・・

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