空軍参謀総長の「他軍種を犠牲に空軍が拡大」示唆発言に敏感に反応
米陸軍の代弁者として議会やメディアで発信続ける代表的OBのご意見
この投稿の直接的背景には、5月19日付「Breaking Defense」掲載のインタビュー記事で Allvin米空軍参謀総長が、「他軍種を犠牲にして空軍を優先する必要があるか?」との誘導的かつ挑発的な質間に対し、「That would be my case:私の場合はそうだろう」、「空軍が他軍種を犠牲にして勢力拡大することが目標ではないが、そうなる可能性もある」と発言したことに反応したもので、
AIlvin大将の発言を「統合軍の基盤を揺るがすもの」と冒頭で批判して始まっています。そしてFynn 退役中将は・・アジア太平洋地域における米陸軍の重要性を主張するため、以下の要旨で投稿しています。
●ドメイン間の境を埋める
今日のグレーゾーンでの競争とインド太平洋での大規模戦争脅威の中、敵対勢力は各ドメイン境界のすき間を探ろうとしている。(Allvin大将のような)浅薄で偏狭な見方は役に立たず、分断をさらに露呈させる。一方、変革能力を備えた陸軍力を基盤とする完全に統合された部隊は、こうした境界を繋ぎ止める。
●人民解放軍の重心は陸軍
将来の台湾海峡両岸侵攻において、人民解放軍海軍、ロケット軍、その他の部隊は重要な役割を果たすが、人民解放軍の陸軍力が上陸、機動、住民を制圧できなければ、中国共産党の勝利は不可能である。この狙いを抑止できるのは、幅広い変革能力を備えた前方展開地上部隊を含む、宿頼性の高い統合部隊のみだ
●統合軍司令官であるPaparo太平洋軍司令官も期待している
・太平洋軍司令官は、重要な抑止手段として「地上火力は重要な戦力増強手段」と度々言及し、兵站拠点、統合防空、通信、AI や陸軍が支える地域パートナー関係が重要だと繰り返し述べている。
・中国 A2AD に対抗するには、低コストで生存性・機動性・再装填性に優れ、長時間持続する地上火力、工兵や兵站部隊、地上照準部隊、多層的指揮統制部隊、重要地形確保の機動部隊が必要で、地上に永続的な駐留が求められる
●陸軍部隊の地域へのアクセス能力不足への批判
・2021年以降、陸軍はオセアニア、東南アジア、南アジア全域において、散発的な展開、実弾演習、備蓄品の事前配備を大幅に拡大し、比や豪州で共同兵站訓練実施
・地域の同盟国等においては、印日韓比豪台に加え、小規模な島嶼国軍でも引き続き陸軍が優位な位置にあり、米陸軍は地域同盟国等とのパートナーとして重要な、緊密に連携した戦略的陸上戦カネットワークを形成しており、この能力強化によってのみ、必要な陣地的優位性を獲得可能
●敵対勢力の陸軍は強力
・人民解放軍は世界最大の陸上部隊で米陸軍の2倍、北朝鮮やロシア陸軍もウクライナで貴重な戦場経験を積んでおり、我々はこれを注視すべき
●米陸軍は大きな改革を実行してきた
・現在の紛争だけでなく、過去の紛争からも教訓を得ながら、米陸軍は近年、最大の変革を実行に移し、近視眼的な見解や偏狭な通説を払拭する機会を生かしている。
・米陸軍指導者はより一層以下3点に取り組むべき。
① 統合の中での陸上戦力の重要性を戦略を示す
② 米陸軍の地域車との協力関係が、どのように米軍全体の地域アクセスに貢献し、同盟条約を強化するかを示す、
③ 米国指導層やパートナー国や米軍兵士に、主要な戦争と数十年の平和と安定維持における米陸軍の犠牲と貢献を思い出させる
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Flynn 氏の投稿の契機となった「Breaking Defense」のインタビュー記事で、Allvin米空軍参謀総長は海軍、海兵隊、陸軍の役割を軽視しないよう極めて慎重に発言していますが、「Breaking Defense」は「空軍は軍種を犠牲にして拡大を目指している」と見出しを掲げてアクセス数を稼ぐ細工をしているわけですが、
米陸軍がこれに過剰反応し、Flynn 退役陸軍中将に「あまり効果的とは思えない反論のネタ」を提供し、「自ら墓穴を掘っている」ようにしか見えません。
陸軍司令部の幕僚か官僚が作文したかのような、抽象的な形容詞と修飾語がてんこ盛りで「何が言いたいのか良く分からない」英文を眺めながら、まんぐーすはそう思いました。
5月19日付「Breaking Defense」のAllvin大将へのインタビュー記事
タイトル「EXCLUSIVE: Allvin says Air Force must grow, even at ‘expense’ of other services」
→https://breakingdefense.com/2025/05/exclusive-allvin-says-air-force-must-grow-even-at-expense-of-other-services/
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