防衛研究所主任研究官による技術側面に焦点の力作速報
「ウ」と「イ」緊密情報交換で「イ」のイラン奇襲でも活用可能性
ロシア民間ネット回線と最新無人機操作ソフトとAI搭載ドローンで
無人機117機を露国内1ヵ所で組立&二重屋根コンテナで輸送
ウクライナから 1000~4500km以上も離れたロシア奥部の「聖域」と考えられていたロシア空軍基地を見事に奇襲し、ロシア空軍の戦略爆撃能力の34%に相当する Tu-95MSやTU-22M3、早期普戒管制機A-50を含む41機を破壊した技術的側面について解説されていますので、いつものように「つまみ食い」の概要紹介させていただきます
なお、この「NIDSコメンタリー第 385号」には、短期間に様々なソースから筆者がかき集めた速報情報が、筆者作成の解説図やウクライナ保安庁 SBU公開の写真等で分かりやすく詳細に解説されており、ウクライナとイスラエルが緊密に情報交換して成就したと言われる、
イスラエルによる 6 月13日のイラン奇襲作戦初動と同様に、敵国内に密かにドローンを持ち込んで、1機数10万円のドローン群で数100億円~数1000億円規模の損害を与えた、画期的かつ「新しい現実」を我々に突きつけていますので、是非原文をご確認ください
「クモの巣作戦」の全体概要
●作戦で攻撃を受けたロシア空軍戦略爆撃機等の3基地は、ウクライナからそれぞれ約1000km、1900km、4800kmも離れた基地
●使用された 117 機の小型ドローンと爆発物等は極秘ルート運搬され、露チェリャビンスクの秘密準備拠点で組み立てられ、極秘輸送用に木製コンテナ天井部に設けた「すき間」に隠された。
●木製コンテナは大型トレーラに乗せられ、積み荷を知らないロシア人運転手により攻撃目標の露空軍基地の近傍(5~10km圏内)まで輸送された。
●大型トレーラが現地到着後、木製コンテナの開閉式の屋根が遠隔操作で開かれ、同じく遠隔操作(無人機 1機に遠隔操作員1名配置)でドローンが発進して攻撃を行った。なお、作戦後に大型トレーラは仕掛け爆弾で処分
ドローン発進から目標到達まで(技術面概要:推測含む)
●データリンク
ロシア国内の民間 4G/LTEモバイル・ネットワークを活用し、ロシア民間の一般通信に紛れて傍受妨害を回避して数千キロの遠隔操作を実現。妨害され易い GPSやスターリンクには依存せず。
●ドローン安定運用や誘導
市販の自動操縦ソフト ArduPilot の推測航法(デッド・レコニング)や飛行安定化機能、遠隔操作信号の遅延や一時的号途絶時にも飛行高度、速度、方向を維持するフェイルセーフ機能で安定した飛行を維持
●ドローン OSA 本体
・ドローン OSA は、目標機体の多数の画像を機械学習で学び、数千キロの遠隔操作による操作信号の到達時差や信号の一時的途絶を補完可能な、名刺サイズのAI機能を備えた小型PC(Raspberry Pt)を搭載。
・このAI搭載小型カードPCが、目標であるロシア爆撃機等の事前に指定されたピンポイントの急所に「自律的な終末誘導」で到達するように設計
事前の準備作戦など
●2023年5月、海上無人艇にドローンを積み込み、ドローンを遠隔操縦で離陸発進させ、クリミア半島のロシア軍カチャ飛行場を攻撃。この際、海上の強風や遠距離通信による情号遅延など、様々なリスクへの対処法を教訓として積み上げ、今次作戦でのシベリアや北極圏に近い露基地の厳しい環境への対応を磨いた
●OSA ドローン開発のファースト・コンタクト社は、「クモの巣」作戦の1年半前になる2024年1月時点で、既にAI搭載型無人機の実験室システム開発を終え、最終テストを開始。当時、同社CEOは、「目標までの最終1マイルの弾頭運搬、目標追尾、AIでの目標選別等、全ての課題に取り組んでいる」と語り、「特殊な通信システムも搭載」とインタビューに答えていた。
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最後に、同論考「おわりに」部分に記載されている、筆者川村幸城・主任研究官の言葉をご紹介しておきます
●(ウクライナとイスラエル、)両者に共通していえるのは、わずか 1機数 10万円のアセットで、数100億円から数1000億円規模の損害を相手に与えることができたという点だ
●(比較的容易に入手可能な最新技術に支えられたドローン部隊は、)シベリアやテヘラン上空など、これまで作戦の範囲外と考えられてきた地域へのアクセスも可能にした。
●小型コンピュータと SIMカードを内蔵した小型ドローンは、それが隠密に運び込まれさえすれば、どこからでも、どこへでも破壊工作に利用できる。
●こうした高い費用対効果とアクセス可能性は、今後、国家のみならず非国家主体にとっても魅力的な選択肢となり得る。「クモの巣」作戦とイスラエルによる特殊工作は、そうした新しい現実を私たちに突き付けている
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これだけ中国人やその影響下にある勢力が存在する日本で、ウクライナやイスラエルのような攻撃は極めて容易だろうと思いますし、もっと単純で直接的な「迫撃砲」とか「小型ロケット弾」とか、なんでも使用可能な世界がそこにある・・・と考えるくらいが適当だと思います。飛行場などは特に・・・
ウクライナとイスラエルの革新的兄弟作戦
「ウの革新的ドローン遠方攻撃」→https://holylandtokyo.com/2025/06/06/11771/
「イ工作員の防空網破壊が口火」→https://holylandtokyo.com/2025/06/23/11962/

