7回目の飛行で初めて具体的任務に言及
10月10日、米宇宙軍トップの Chance Saltzman 大将(Chief of Space Operations)が、2023年 12月に打ち上げられた「謎の実験宇宙船X-37B」の7回目の飛行で以下の試験を行うと突然発表し、「謎」だった✕-37Bの具体的任務への初言及に界隈へさざ波が広がっています
第7回目となる今回の特徴は、出力が巨大な「Falcon Heavyロケット」で打ち上げられたことです。6回目までの打ち上げは低高度軌道(高度 110-150マイル)でしたが、計算上は高度22000マイルの静止軌道にも投入可能な能力を持つロケットで、可能ペイロードも格段に増えており、試験内容の拡大が予期されていたところでした
その試験とは・・
●「燃料を節約しながら機動性を高めるという宇宙軍の取り組みの一環として、軌道を急速に変更する新しい方法をテストする。地球の大気を利用して減速し、軌道を切り替えるエアロブレーキングの実験を行う予定だ」
●「NASAはこの操作を実施したことがあるが、X-37Bにとっては新たな挑戦である」
●「エアロブレーキ操作試験が完了すると、X-37Bは他のテストと実験を再開し、目的が達成された時点で機体は軌道から外れ、これまでの6回のミッションと同様に安全に帰還する」
●「X-37B によるこの種の初挑戦は、困難な領域で能力拡大を追求している米軍にとって、非常に重要な節目だ。この成功はチームの献身と忍耐の証となる」
あらためてX-37Bとは・・・
X-37Bは「9m x 4.5m x 3m」とマイクロバス弱程度の大きさで、ロケットの先端に取り付けて打ち上げられ、帰還時は滑走路に着陸する無人宇宙船です。OTV(Orbital Test Vehicle)が正式名称の実験船ですが、宇宙でどんな実験を行っているのか非公開部分が多く「謎の宇宙船」とも言われ、追跡マニアが「中露の衛星を追跡している」等々の「噂」や「推測」を流して時に話題になったりしています
それでも時代の流れでしょうか、第6回目からは「差しさわりのない」実験の一部(空軍士官学校学生提案の装置試験など)が公開され始め、今回7回目でも以下の実験が任務の一部だと公開されています(細部は過去記事参照)
●前回に引き続き NASAによる植物の種子実験「Seeds-2」
●細部は不明ながら「future space domain awareness technologies」の実験
今回7回目の飛行も宇宙空間滞在期間は非公開ですが、2010年4月打ち上げの1回目の宇宙滞在が224日間、2回目が468日間、3回目が675日、2017年5月に帰還の4回目は718日間、2019年10月帰還の5回目は780日と任務の度に滞在日数を更新しており、最長記録は 6回目の908日間となっています
X-37B 関連の記事
「7回目の任務開始」→https://holylandtokyo.com/2024/01/12/5407/
「6回目=記録更新の908日滞在」→https://holylandtokyo.com/2022/11/24/3952
「宇宙滞在記録を更新中」→https://holylandtokyo.com/2022/07/29/3458/
「6回目打上:少しソフトに?」→https://holylandtokyo.com/2020/05/15/672/
「ちょっと明らかに?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-05-11
「中国版X-37B?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-15
「中国衛星を追跡?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-07
「Sシャトルの代替?」→http://halyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-12
「米が宇宙アセット防護計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-16
「関連小ネタ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-04
「X-37Bをご存じですか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20