Silicon Valley企業などStartupや中小企業の参入増
引き続き国防省側の改善や迅速性がカギ
8月22日付DefenseOneが、米国防省が追求している調達先の多様化、つまり長く国防装備品の設計開発に携わってきた大手の代表的軍需産業だけでなく、Silicon Valley企業に代表されるフレッシュなアイディアを持った小規模企業やStartupからの装備品導入を目指す取り組みが、現状では調達比率1%に過ぎないが成果を上げつつあるも、依然として要改善点は残されていると論じています
AI の進歩とIT技術革新が相まって、国防分野での画期的な進歩が、少数の既存の軍需請負業者ではなく、軍隊経験のない若者により、安価で簡単に入手できる部品で、従来業者の数分の1 の時間とコストで実現できる状況になりつつあり、また、若いプログラマーや起業家のマインドが、2018年にグーグル技術者が国防省案件への協力に強く反対して同社が国防省契約を打ち切った時代とは変化し、国家安全保障に直結する大きな案件に関わりたいとの動機で挑戦する雰囲気が出てきていると紹介しています。
同記事は最近の事例として
●今年2月、国防省事業と全く接点のなかった24歳の若者ら3名が、偶然ITイベントで接触したウクライナ関係者からの依頼を受け、妨害を受けやすいGPS信号に依存しない、Google Mapと実際の現場カメラ映像をAI技術で照合してナビゲーションする小型無人機を、24時間以内に500ドル未満で作り上げた。現在、米陸軍特殊部隊と共に演習や実験で細部の仕様を調整している
●世界で最も著名なベンチャー資金提供会社である「Y Combinator」は、DoorDash、Instacart、Airbnb などの消費者向け企業創設を支援したが、8月19日の週にAres Industries という会社設立支援を発表した。なんとその企業は低価格の巡航ミサイル開発を目指す企業で、大きなニュースとなった
一方で、国防省事業参入への壁として記事は
●克服が容易でない構造的な課題として、第一に、国防省と協力する企業は外国資金を拒否すること求められ、協力を検討する新興企業が、競合業者と資金調達面で愛国心の低い競合企業に本業分野で競争力を失う可能性等がある
●ただ資金量に関しては、「近年は、軍事分野を扱う専門ベンチャー・キャピタルだけでなく、a16zやGeneral Catalystのような一般キャピタル企業も惹きつける国防技術ブームにあり、米国内からの資本は豊富にある」と専門家は述べており、「障害は米国資本の不足ではなく、国防予算を迅速に新技術に振り向ける国防省の予算の柔軟性の欠如だ」との声を記事は取り上げている
●新興企業の若い創業者たちには、国防省資金を利用する結果として政府機関が求める、面倒で労力を要する「監査」や「監視」の準備が大きな負担となる。新興企業関係者が「国防省との仕事には、何千ページもの調達規則やガイドラインに従うことを意味しており、(国防省との交渉は、」一般顧客よりも依然として最も困難だ」と愚痴をこぼす現実がハードルとなっている
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上記でご紹介した課題は国防省もよく理解しており、数年前から様々な場で国防省高官も改善への取り組みを語っており、具体的に、国防省や各軍種に設置された迅速能力開発室(RCO:Rapid Capabilities Office)のような組織が、Startupや中小企業への働きかけや説明会や相談会等々を通じて参入を支援したり、複雑な手続きや「監査」簡素化に取り組んだりしているとも聞こえてきますので、
米空軍の目玉事業「無人ウイングマン機CCA」有力候補に、新興企業Andurilが選ばれた勢いで、「新興企業から購入比率1%程度」が今後変化することを大いに期待したいと思います
迅速能力開発室(RCO)関連の記事の一部かな
「4企業がCCA候補」→https://holylandtokyo.com/2024/06/21/5988/
「無人機対処ビーム兵器」→https://holylandtokyo.com/2023/11/20/5211/
「50KWレーザー」→https://holylandtokyo.com/2024/05/16/5780/