7月に「QUICKSINK」試験と米空軍発表
ただし使用兵器の細部には言及せず
8月8日、空軍研究所AFRLが、7月に艦艇攻撃用GPS誘導JDAM と推定される「QUICKSINK」構想の兵器試験を実施し、メキシコ湾上の廃棄貨物船 Monarch Countess を目標にして、B-2 爆撃機から兵器の投下したと発表しました
「QUICKSINK」構想は、米軍が対中国作戦で多数の艦艇を攻撃目標とする必要がある中、高価な魚雷や対艦ミサイルだけでは対処が難しいことから、より安価な攻撃兵器としてJDAM の艦艇攻撃用バージョン具現化を目指したものと言われています
ただ、敵艦艇の防空能力が飛躍的に向上する中、目標命中まで発射母機が目標にレーザー照射を継続する必要があるレーザー誘導型 JDAM (GBU-24)ではJDAM運搬母機のリスクが大きいことから、自ら目標に向かう GPS 誘導型(GBU-31)の改良を追求することになり、2022年4月実施のF-15Eでの「QUICKSINK」構想試験では、艦艇攻撃用に改良されたGPS誘導のGBU-31 JDAM が用いられました。
GPS 誘導型は、レーザー誘導型のように雲や雨に影響されない全天候対応型であることが特長ですが、レーザー誘導型が具体的命中個所を指定しやすいのに対し、GPS誘導で目標艦艇の「艦橋」「推進機関」「弾薬庫」「燃料タンク」などの具体的部分を狙って攻撃できるのかは不明で、米空軍側は 2021年夏の第1回「QUICKSINK」試験から、目標ポイント選択精度への言及は避けています。
しかし空軍研究所は、「QUICKSINK」構想試験を開始した 2021年時点から、標的船の上部、喫水線、水面直下など、標的船の特定の地点に兵器を狙い撃ちしたい語り、2022年4月の試験時にも開発担当幹部が、「JDAMの先端部分を再設計し、水面で爆弾がはじかれずに水面下の目標地点に到達できるよう検討している」と説明しており、2024年7月の試験では何らかの新たな改良がテストされた可能性があります
なお米空軍は、「QUICKSINK」が大型魚雷よりも安価で、更に「Open Systems Architecture」を追求して多様な企業の部品供給競争でコスト低減と性能向上を図っているとアピールし、米空軍のほとんどの戦闘機から発射できる柔軟性も「売り」にしています。
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米空軍は「QUICKSINK」構想実現に向け、米海軍が進める「Maritime Weapon Program」との連携を図っているようですが、米海軍も中国艦艇攻撃能力の向上を、7月実施の RIMPAC 演習(環太平洋合同演習)でも主要な訓練項目としています。
具体的には、退役した輸送ドック型艦「ドゥビューク」と強襲揚陸艦「タラワ」を、ハワイ沖で米豪蘭韓&マレーシアの航空機と艦船が協力し、長距離対艦ミサイルやRGM-84ハープーンミサイルなどで攻撃し撃沈したようです。
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「艦艇攻撃用に改良の GPS 誘導JDAM」→https://holylandtokyo.com/2022/05/13/3219/