MDA:極超音速兵器の迎撃兵器新規開発は急ぐな!

米議会議員が迎撃兵器開発を催促する中で
GPIはあくまで 2035年以降の脅威対応だと現実見据え
まずは近未来に可能な選択肢を検討すべきと正論を

Colins CSIS.jpg6月6日、CSISで登壇した米ミサイル防衛庁 MDA長官のHeath A.Colins 空軍中将は、極超音速兵器の迎撃を目指し、2035年以降の運用を狙って「ゼロからの」開発が日米共同で始まったばかりの GPI( Glide Phase Interceptor)について、極超音速兵器兵器の脅威を懸念する米議会が「2029年までにGPIが初期運用能力を獲得することを義務付ける」との決議を 2023年末に行ったことに関し、

国民の代表たる米議会の決定に対し慎重に言葉を選びつつも、ゼロから開発する最先端兵器の配備を急ぐべきではなく、より即効性のある、現有の能力を組み合わせた現実的な対処案に現時点では注力すべきだと示唆しました。

6日付米空軍協会 web 記事によれば・・・
Colins CSIS4.jpg●ロシアはウクライナで極超音速兵器を使用し、2023年度の国防省報告書では中国が世界をリードする極超音速兵器を保有すると説明しており、これらを受け米議会がGPI 開発を前倒しするように動いている

●しかしMDA予算計画ではGPI 迎撃ミサイルの納入開始は2035年以降にしか予定されていない。米空軍でも兵器開発担当を務め、新規装備開発の難しさを知る同長官は、「(GPI は)今目ではなく、2035 年以降の脅威対処に設計されたシステム」で「重要なプログラムだが、時間がかかるだろう」と語った。

Colins CSIS2.jpg●更に同中将は、「ただ現時点で既に存在し、今後数年で脅威が更に増す極超音速世界での戦闘に、より早く、2029~30年に何らかの能力を持つことが求められており、これには創造的な取り組みが必要だ。おそらく『新兵器の開発』とは異なり、存在する兵器になる可能性が高い」と表現した

●しかし、同長官は細部を語らず、米国防省が既に保有するTHAAD、PAC-3、イージス、SM-6、開発中の Ground-Based Interceptor 迎撃ミサイルなど、多様な選択肢のどれが使えそうか等については全く言及せず、MDAがどう判断するにしても完璧は難しく、全ての脅威に対処可能なものはないだろうとのみ語った

Colins CSIS3.jpg●ただし同長官は、日本がロケットモーターと推進部品の開発を主導することで 5月に日米共同開発に合意したばかりのGPIについて、実行可能性があるならば(米議会が求める速度で)開発を急ぐことに反対ではないと述べた。

●また同中将は、極超音速兵器の発射を検知し追尾するMDA 事業の最新情報として、2月に MDAと宇宙開発庁 SDA が協力し、低高度軌道にMDAのHBTSS や SDAの Tracking Layer spacecrat を含む一連のミサイル追跡衛星を打ち上げ、MDA衛星が1週間以内に探知追尾用の細部機器調整を開始すると説明した。

MDA 長官Collins中将のCSIS発言(約85分)


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GPI MDA5.jpg極超音速兵器に関して十分な知見がないまんぐ一すですが、米議会が米国として攻撃用の極超音速兵器を保有すべく迅速な開発を促し、同時に強く脅威を認識して迎撃態勢確立を急ぐ一方で、Kendall 空軍長官や本日ご紹介したMDA長官のように、国防省側に「冷静に考えるべき」との冷めた雰囲気があるところに興味津々です

国防省側が目先の他の事業にとらわれすぎなのか、米議会が騒ぎすぎなのか・・・・気になるところですが、現時点でまんぐーすは、直感的に「冷静に考えるべき」派です

迎擊兵器 GPI開発関連
「日米共同開発PAに合意」→https://holylandtokyo.com/2024/06/06/5933/
「米国は予算削減し日本が負担か」→https://holylandtokyo.com/2024/04/11/5732/
「迎撃兵器を日米共同開発で」→https://holylandtokyo.com/2023/03/22/4438/
「迎撃兵器開発を2企業と契約」→https://holylandtokyo.com/2022/07/01/3405/

極超音速兵器はそんなに脅威か?
「突然グアムでARRW講習会」→https://holylandtokyo.com/2024/03/08/5662/
「同兵器を過大評価するな」→https://holylandtokyo.com/2023/12/15/5343/
「ウで次々撃墜:同兵器を過信するな」→https://halylandtokyo.com/2023/06/01/4695/

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