米空軍2トップ:航空優勢は重要だが不可能だし必要もない

最近のウクライナや中東戦況から吐露
従来の「航空優勢」定義やその追及の要領や必要性再検討
まんぐーすの邪推満載で発言ご紹介

Allvin16.jpg5月14日付米空軍協会web記事が、Allvin米空軍参謀総長(輸送機パイロット)とSlife副参謀総長(特殊作戦ヘリパイロット)が2024年に入ってから行った、ウクライナや中東での最近の戦いを踏まえた「航空優勢(Air superiority)について従来の考え方を改めるべき」とか「航空優勢は依然として重要だが、もはや恐らく不可能で、必ずしも必要ない」との発言を取り上げ、それら発言と米空軍指導者らが最近訴え続けている「IAMD:統合防空・ミサイル防衛」の重要性や、関連する「電子戦の重要性」、「無人機対処の重要性」と絡めて説明を「試みています」

Slife4.JPG全く論旨が不明確な記事で、米空軍応援団であるAFA米空軍協会(戦闘機命族が支配している)の編集幹部が、記者の原稿を大幅カットまたは編集して意味不明になっているのでは・・・とまんぐーすは考えていますが、今年に入って米空軍制服2トップが、全ての軍事作戦を優位に進める前提として米空軍が「錦の御旗」としてきた、「航空優勢確保が絶対的に重要で、だから空軍が重要(そして戦闘機が必要)」の論理に(間接的&婉曲的ながら)疑問を呈し始めている点は極めて重要ですのでご紹介し、併せてまんぐーすの邪推も語らせていただきます

14日付米空軍協会web記事は航空優勢関連発言を・・・
Russian drones3.jpg●13日にAllvin空軍参謀総長はCFR(外交評議会)で講演し、最近のウクライナや中東での作戦状況や教訓を踏まえ、「制空権は依然として重要だが、以前のようには恐らく不可能であり、またその必要もないことを理解する必要がある」と語っている

●また最近Slife副参謀総長も、米空軍はそのドクトリンで重要な位置を占めている「航空優勢」の定義と追求の仕方を、最近の戦いの様相を踏まえて変えるべきだと主張している

Russian drones.jpg●なお2月の空軍協会のイベントでもAllvin大将は、米空軍は制空権が不可欠であると定義しているが、その重要性は任務の目的によって異なり、指揮官は状況や任務目的に応じて制空権の重要性をよく考える能力が必要だとし、制空権の伝統的な重要性は戦争の性質の進化により変化している、と主張している

●13日のCFR講演でAllvin大将は「航空優勢」の考え方見直しの背景について、従来の航空優勢では、味方が敵の防空能力を破壊や後退させ、空での活動の自由を確保して味方の地上部隊等の自由を確保することを意図しているが、ウクライナでは双方に航空優勢を維持する能力がなく、たとえ従来概念の「航空優勢」が確保できたとしても、敵の電子戦能力は生き延びて、味方の自由は確保できない状態になっている、と語っている

SHAHED-136 3.jpg●最近Slife副参謀総長は、ウクライナの最前線や中東の米国前線基地への小型攻撃無人機の脅威を引き合いに出し、制空権の変動する力学について語っている

(上記内容を紹介した後に同記事は、米軍が重要課題としている本格的な敵との紛争では、F-35ステルス戦闘機でも電子戦攻撃と組み合わせて運用する必要があるとか、4月13日夜にイランが弾道ミサイル100発以上、巡航ミサイル30機以上、無人機150機で実施したイスラエル攻撃に関し、同盟国も交えた多層的な防空が効果を発揮した点を踏まえ、Allvin大将がIAMD(統合防空・ミサイル防衛)推進の重要性を強調した、と紹介し、意味不明な流れで終わっています)

以下はまんぐーすの邪推ですが・・・
SHAHED-136.jpg●Allvin米空軍参謀総長やSlife副参謀総長はストレートに表現しないが、従来米空軍が追求してきた戦闘機や爆撃機による「航空優勢」(中高度から高高度の支配)を確保しても、ウクライナや中東で最近顕著なように、敵は利用可能な低高度域を活用した無人機攻撃や、従来「航空優勢」の影響が及ばない電子戦能力で粘りずよく反撃し、従来「航空優勢」が狙った友軍地上部隊や海上部隊の行動の自由が確保できていない

●・・・なので本当は、従来「航空優勢」の考え方再検討を訴えつつ、従来「航空優勢」コンセプトを支えてきた戦闘機への過剰投資見直しに結び付けたいとの思いがあるが、米空軍(同盟国空軍も)を支配する「戦闘機命族」への配慮もあり、とりあえず、過去20年間以上の対テロ作戦で失われた電子戦能力や、本格的な敵との戦いに不可欠なIAMD(統合防空・ミサイル防衛)整備の重要性に言及し、時間が必要な「脅威の変化」への理解浸透を待っているのでは・・・
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Allvin12.jpgウクライナの戦いついて、米空軍の戦闘機族が「様々な制約で戦闘機が投入できないことで戦いが硬直しているウクライナの現状が、まさに戦闘機の重要性を示している」的な論旨で語る様子を見聞きしてきましたが、戦闘機乗りでないAllvin米空軍参謀総長(輸送機パイロット)やSlife副参謀総長(特殊作戦ヘリパイロット)が、2024年に入って従来の「航空優勢確保が命です」コンセプト見直しに正面から言及していることに強い感銘を受けました

また「まんぐーすの邪推」部分で紹介した、「中高度から高高度の支配」と「低高度域の利用」との視点を提言し、「ウクライナで戦闘機による制空の時代は終わる」、「戦闘機や空中戦が輝いた栄光の時代が完全に過ぎ去らないにしても、もはや唯一の重要な要素でないことに気づくべきだ」とウクライナ開戦直前の2022年2月7日に喝破した、勇気ある米空軍輸送機パイロット大佐とその寄稿記事(下記の過去記事参照)に再度敬意を表したいと思います

ウクライナでの航空優勢を考える
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→ https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/

イラン対イスラエルの攻防を考える
「4月13日の攻防を防研が速攻分析」→https://holylandtokyo.com/2024/04/25/5847/
「出来すぎのイラン攻撃への迎撃作戦概要」→https://holylandtokyo.com/2024/04/16/5812/

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