人口20万ながら米本土や日本より広いEEZ
対中国に不可欠な米国の独占的軍事アクセスが予算問題で
政府間の協定延長交渉は合意も、米議会が予算未承認
2月23日付Defense-Newsが、西太平洋で日本より35%も広いEEZ(排他的経済水域)を擁し、現在は米国との自由連合協定(COFA:Compacts of Free Association)により米国から種々の援助を受ける代わりに、米国の独占的な軍事アクセスを許可しているミクロネシア3国(パラオ共和国、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国)とのCOFA協定延長に関し、
2024年9月末で完全失効するCOFA協定の米国と3国政府間の延長交渉は、今後20年間に渡り米国が合計約1兆円の支援を3国に行うことで2023年中に合意しているが、その資金を裏付ける法案を米議会が未だ承認しておらず、この間に、3国の内の2か国との現行協定が失効し、2023年末から現在は臨時支出法案により何とかギリギリ資金を捻出している綱渡り状態にあると報じ、このすき間に中国が進出する可能性等を懸念しています。
国防省のJedidiah Royalアジア太平洋政策担当次官補代理は、パラオ政府が既に予算不足に陥っており、3か国政府関係者からの「米国は本当にこの地域に留まるつもりがあるのか?」との疑念と戦っていると述べ、2019年に3か国近隣のソロモン諸島が外交承認を台湾から中国に切り替え、後に実質的に中国軍や治安部隊を受け入れる協定を結んだことや、2024年1月に島国ナウルも中国との国交を回復している点を例に懸念を表明しています
Defense-News記事は3つの視点で懸念を整理し、
●まずはソロモン諸島やナウルの例から明白なように、中国との勢力争い。米国にとって、ミクロネシア3国は、米国領土のグアムと北マリアナ諸島、およびパプアニューギニアや豪州などの米国の同盟国等と近接し、米安全保障や国防関係者にとって不可欠な領域である
●朝鮮半島や台湾での不測事態の際、ミクロネシア3国やその近接国は、アクセス確保の点から全ての計画の「大前提」になっている存在で、ミクロネシア3国に関してCOFAで米国は、領土への独占的アクセス権を持ち、米国船舶の領海侵入や、米航空機の領空飛行が可能な状態を確保し、同時に、米国は敵対者、特に中国の同様のアクセスを拒否することが可能となっている
●2つ目の懸念は、3か国の島々に現存する米国既存の軍事施設の存在で、マーシャル諸島の「Ronald Reagan Ballistic Missile Defense Test Site」実験場や、パラオに米国が建設中のレーダー施設がこれに当たる
●仮にこれら施設の移設を迫られた場合の必要経費をRoyal次官補代理を把握していないとしているが、外部専門家には「hundreds of billions of dollars(数十兆円)」と見積もる者もいる
●3つ目は、アジア太平洋地域全体における米国政府への信頼度低下の懸念である。ミクロネシア3国との協定延長が円滑に進んでいない現実をアジア太平洋諸国は目にしており、西太平洋地域での対中国作戦で「分散運用」を掲げ、分散拠点を切望している米軍や米国防省にとっては、他国との交渉上の大きなブレーキとなっている
なぜ米議会は予算承認していないのか?
●COFA協定延長に必要な約1兆円($7 billion)は、2024年度国防授権法案に含まれていたが、米下院指導部が約3400億円($2.3 billion)分は他の国防省予算を削減して拠出するよう要求し、2月の期限までに政府と妥協できず、法案に盛り込めなかった経緯がある
●Royal次官補代理は事の重要性に鑑み、事態打開に向け議会への説明を頻繁に行い「立法に向け24時間体制で取り組んでいる」と説明しており、約50人の下院議員からなる超党派のグループも下院議長に書簡を送り、合意形成に努力するよう要請しているが、合意案作成は2月20日時点では行き詰っている
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この分野に関し全く基礎知識が欠落しているので「ググって」見つけたのが、ご紹介している外務省など作成の地域のEEZ地図と、以下にURLをご紹介する「日本財団」のミクロネシア3国解説web記事です。
太平洋戦争時の悲惨な記憶を乗り越え、親日的な国も多いことから、日本国民としても関心を持ち、関係強化に努力したいものです
外務省作成の「太平洋の島々」解説スライド
→https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ps_summit/palm_06/pdfs/map.pdf
「日本財団」の解説web記事
→ ここをクリック
太平洋の島々関連の記事
「中国とソロモン諸島の安保協定案リーク」→https://holylandtokyo.com/2022/04/11/3119/
「日本戦前の南洋諸島進出を学ぶ」→https://holylandtokyo.com/2020/08/14/523/