今年後半から各パート試験がスタートし
MDA長官が空席のままなようですが・・・
8月9日、米陸軍主催の「Space and Missile Defense Symposium」でミサイル防衛庁長官代理のDoug Williams海軍少将(本来長官出席予定が上院の承認遅れで・・・)が講演し、ミサイル防衛庁最優先事業である対中国作戦の一大根拠基地グアム島のミサイル防衛体制構築に向けた各種試験を、今年後半から各パーツ毎に開始し、一連の第1弾防御兵器群が配備される2024年には、イージスシステムとSM-3 Block IIA対象の初の飛翔体対象試験も開始すると説明しました
2022年5月に当時のHill長官は、グアム島の防衛は、極超音速兵器から弾道ミサイル及び巡航ミサイル等の多様な脅威を想定した重層的なものが計画されているとし、以下のような方向性を示していました
●ルーマニアやポーランド配備のAegis Ashoreのような固定システムだけではなく、移動式ランチャー活用や移動可能型指揮統制センターが実現できないか検討している
●米海軍のSM-3やSM-6、陸軍のPAC-3、そして現有のTHAADの組み合わせを基本とするが、米陸軍が2023年に配備予定の「Mid-Range Capability missile」などの将来装備導入も検討
●指揮統制システムとして米陸軍「Integrated Battle Command System」での連接を柱に、「イージスシステムの火器管制能力」も活用。まず弾道ミサイルと極超音速兵器対処に取り組んみ、その後にPAC-3の持つ優れた巡航ミサイル対処能力を米陸軍C2システムを通して融合させる
●2013年から配備&運用しているTHAADに加え、PAC-3 MSEを地上配備を完了することで、グアム島周辺海域でローテーション待機するイージス艦を3-4隻を開放することができる
8月9日のWilliams長官代理講演では、昨年5月のHill長官発言の内容が2024年度予算に組み込まれ、米海軍は約1140億円、陸軍は900億円の予算で強力にグアム島ミサイル防衛を推進する方向が再確認され、特に米海軍に比して遅れ気味だった米陸軍は、低層用の「Lower Tier Air and Missile Defense Sensors」やPAC-3 MSEミサイル3セットのグアム島へ導入を進める模様です
イージスシステムの地上配備では、アラスカに設置されている宇宙監視センサー「Long Range Discrimination Radar」技術を導入した、新型の機動センサー「AN/TPY-6 radars」を4セット導入してシステムの脆弱性を削減しつつ能力強化を進めており、8月16日には大陸間弾道弾ICBM探知追尾試験が計画されている模様です
更に12月には、ミッドコースでのミサイル防衛能力「Ground-based Midcourse Defense system」を強化する新型迎撃体(two-stage selectableが特徴)の試験も計画され、その後続々と、SM-3 Block IIA、THAAD、PAC-3 MSEの試験が実施される計画だと同長官代理は説明しました
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グアム島のミサイル防衛の難しさは、もともと島の地籍が限られる中、火山活動で出来た凹凸の激しい地形によりミサイル防衛装備展開可能エリアが限定され、地元先住民が先祖から受け継ぐ「神聖な場所」への配慮も欠かせないパズルを解くような点にあり、Williams長官代理がこの面でどのように現状を語ったのかが気になります
また、米海軍イージスシステムと陸軍の防空システム群の、センサー情報や指揮統制融合も大きな課題であったはずですが、この方面に関しても特段の報道はなく、順調なのかどうか「?」な状況です
ここ1か月余りで、中国経済崩壊が怒涛の勢いで進み、台風5号による河北省や北京の洪水など習近平体制の基礎がぐらつく事案が続いていますが、米軍の皆様には粛々と対中国体制構築を続けて頂きたいと思います
グアムのミサイル防衛関連
「グアムMDを再び語る」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「整備の状況と困難」→https://holylandtokyo.com/2022/04/05/3082/
「分散&機動展開可能型へ」→https://holylandtokyo.com/2021/08/23/2146/