初耳のSPP(State Partnership Program)
100ヶ国以上と米軍の州軍が協力交流枠組み
地上部隊中心から空や宇宙協力に拡大中
7月17日から18日にかけ、米軍の州軍(National Guard)が30年前に開始したSPP(State Partnership Program)の30周年記念集会が開催され、当初対ロシアを念頭に13か国の旧ソ連圏東欧諸国と米国各州の州軍の間て結ばれた軍事協力枠組みが、今や100ヶ国以上(活動中なのは88ヶ国と)にまで拡大したが、今後は対象国数の拡大ではなく、現存関係の「質や深さ」を追求していく方向が内外の参加者により確認された模様です
本記念集会の様子を伝える7月18日付米空軍協会web記事は、全ての対象国とそれぞれの国とパートナー関係を持っている州軍の一覧表を掲載していますが、対象国には日本や英仏独など「G7」諸国は含まれない一方で、ブラジルやアルゼンチンなど地域の主要国、南アフリカを含むアフリカ諸国、中東から中南米諸国のほか、南シナ海を取り囲むPhilippines, Vietnam, Malaysia, Thailand, IndonesiaがSPP対象パートナー国となっています
「活動中なのは88ヶ国(88 active partnerships)」との表現で示される「アクティブでない国」の存在が気になるところではありますが、州軍司令部(National Guard Bureau)のWilliam Zana計画部長は、「これまでとは異なった関係の進化や進展を今後目にすることになろう」、「今我々はパートナー国空軍と州空軍の著しい関係発展を目にしており、この傾向は続いて行くだろう」と述べ、
更に宇宙ドメインでの協力が加速している様子について、「パートナー国からの、宇宙分野でより緊密に連携していきたいとのシグナル増加を目にしている」と語り、計1000名以上の州軍兵士が、宇宙分野任務で「6つの国:six states」に派遣されている現状にも触れています
そして特に注目している地域として、ウクライナ戦争で緊張が高まっているSPP創設当時からの焦点である東欧諸国や、南シナ海を囲むPhilippines, Vietnam, Malaysia, Thailand, Indonesiaなどの国とのパートナー関係だと同計画部長(少将)は述べ、
あまり目立ってはいないが、SPP枠組みでウクライナと加州軍が連携関係にあったことが、今回のロシア侵略対応の基礎を支えたとして専門家の間で称賛されているともアピールしています
当初からのパートナー国の一つルーマニアの参謀総長は、「SPPの更なる発展への努力が米国の対象エリアへの関与を示す戦略的メッセージとなる」とSPPの意義を表現し、米統合参謀本部計画部長のStephen Koehler海軍中将は、「スピードと総合運用性深化の更なる追及が、紛争抑止と有事の任務達成に大きく貢献する」とSPPへの期待を表現しています
課題についてウィスコンシン州空軍のPaul Knapp少将は予算の安定確保と予算年度期間の相違を上げ、パートナー国と予算年度の期間が異なり、訓練や交流の計画が立てづらい点や、昨今の予算圧縮の影響を受け長期的な関係強化計画が困難な点を同記念集会で指摘しています
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SPP(State Partnership Program)との言葉と枠組みを初めて知りました。54州とワシントンDC等の州軍が、一つの州軍で複数の国とパートナー関係を持つことが普通にあるようで、州軍の力量も大したものです
州軍に取っての貴重な訓練機会だとも思いますし、パートナー国にとっても「肩ひじ張らずに付き合える」米軍なのかもしれません。実際の活動について全く把握&ご紹介できていませんが、機会があれば次の機会に・・・
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