フォード級空母はEMALSと着艦フック信頼性がカギ

国防省試験評価部(DOT&E)が年次評価レポート
海軍は懸命に自己弁護も、さびで機能しない装備など言い訳厳しく

DOT&E Ford5.jpg米国防省試験評価部(DOT&E)が今年1月発表の2022年年次レポートで、当初計画から6年遅れで暫定的とも言える作戦任務航海を昨年秋行った米海軍の新型空母フォード級1番艦について、新規導入した電磁式カタパルト(EMALS)や着艦フック等の信頼性の低さから、2024年末(2024年9月末)までに完了予定の運用試験(operational testing)終了が危ういと厳しい評価を下しています

DOT&E Ford4.jpg一方の3日付Defense-News記事によれば米海軍は、2022年8月から9月の大西洋運航時に出た関連トラブルで、任務航海を中止して運用開始評価チェックをクリアできなかったトラブルはあったが、その後必要な部品の交換等を行って同年10月から11月の間は故障は発生しても短時間で修復できており、問題なく任務を継続遂行できており今後の計画に問題ないと主張しています

このフォード級空母は、沿岸戦闘艦LCSやステルス駆逐艦DDG-100、更に価格が高騰している次期戦略原潜コロンビア級などと共に、「何をやってもダメな米海軍」と揶揄される象徴的な主力装備品で、大型艦艇のミサイル攻撃への脆弱性が問題視される中にあって、従来のニミッツ級空母価格の2倍(1隻1兆7000億円:艦載機を除く)でも物議を醸しているものです

DOT&E Ford3.jpg更に当初書計画から6年遅れでも、未だに地域コマンド司令官の指揮下で運用できず、運用開始と言えども米海軍の管理下で、緊張感の薄い大西洋で2022年秋に3か月間限定の任務航海に入ったところ、鳴り物入り新規装備の電磁カタパルトや「jet blast deflector:離陸時のジェット排気遮蔽版」不具合で任務中止&帰港となり、すこぶる評判の良くない状態にあります

国防省試験評価部(DOT&E)は年次報告書で、「昨年秋の航海で、部品の錆から、4つある全てのjet blast deflectorが正常に作動しないなど、引き続きカタパルトや着艦フック信頼性を含め、艦載機の離発着数や運用効率に負の影響を与えている」と厳しく現状を評価し、

DOT&E 2023.jpg「空母運用に緊要なサブシステム信頼性が、引き続き2024年末(2024年9月末)までに完了予定の運用試験(operational testing)終了に関する主要なリスクとなっている」と年次レポートに記載して、電磁カタパルトEMALSと着艦フックの故障回数や故障からの平均回復時間が基準を満たさず、昨年9月には各数値が低下傾向を示していること等を問題視しています

そして試験評価部(DOT&E)は、米海軍は今後も継続してこれら重要サブシステムの信頼性改善に注目し、より良い部品の入手に努めるべき、と年次報告書で要求しているところです

DOT&E Ford.jpg一方で米海軍は、10月以降は問題ないと主張し、秋の教訓は2番艦以降の設計建造に教訓として生かすと説明し、更に試験評価部(DOT&E)は故障発生回数で評価しているが、米海軍は稼働時間率で評価してさほど問題ないと反論するなど、双方の見解には隔たりがあります
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国防省試験評価部(DOT&E)は、米議会が国防省のでたらめな装備品プロジェクト管理を監視するために設けた部署で、国防省や米軍に遠慮することなく、厳しい指摘を行うことで知られた組織です。

DOT&E Ford2.jpg米海軍は、懸念されているサブシステムは直近で98%の稼働時間率を記録していると説明していますが、大事な昨年秋の航海で、艦載機運用に欠かせない「jet blast deflector:離陸時のジェット排気遮蔽版」が、「関連部品のサビで4基すべてに不具合」との情けない状態では、誰も安心させることはできないでしょう・・・。

同空母は、2023年末または2024年上旬から、本来の姿である地域コマンド指揮下で任務行動に投入予定だそうですが、そのころまでには「真の状態」が明らかになるでしょう

試験評価部(DOT&E)の年次報告書412ページ
(国防省の全ての開発プロジェクト等を評価)
https://www.dote.osd.mil/Portals/97/pub/reports/FY2022/FY22DOTEAnnualReport.pdf

フォード級空母関連の記事
「初任務航海は米海軍の監督下で」→https://holylandtokyo.com/2022/03/04/2692/
「6年遅れ空母フォード不具合修復完了」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-26
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「フォード級空母を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-20
「解説:電磁カタパルトEMALS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-10

空母の存在意義を巡る議論
「対中国専従空母の厳しさ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇案!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-22
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「国防次官が空母1隻とミサイル2000発の効果比較」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-20

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