MASCP:Mobile And Survivable Command Post project本格化
機動性、アンテナ性能、強靭データ貯蔵、隠蔽性、発電力など追求
7月27日付Defense-Newsが、米陸軍が開始した将来前線指揮所の在り方検討MASCP(Mobile And Survivable Command Post)projectについてレポートし、本格紛争に備え、様々な専門家や技術者と新たな候補装備品を今年夏にも試験している様子を紹介しています。
米陸軍はこの前線指揮所改革を陸軍の指揮統制改革プロジェクト「Project Convergence」と連携させ、最終的には国防省のJADC2(統合全ドメイン指揮統制プロジェクト)との一体化も2026-27年頃に目指したいとする取り組みですが、現状の前線指揮所が持つ、輸送が大変で、多量の熱や音や電磁波を放出して敵に発見されやすく脆弱で、通信能力が限定的で、最新デジタル技術に追随不十分だ等々の弱点を改善する方向を目指しているようです
技術分野で革新を目指している分野には、機動性改善、より遠方と接続可能なアンテナ性能、強靭なデータ貯蔵能力、指揮所のカモフラージュ技術や素材開発、自立可能な自家発電力確保、指揮所全体の物理的防御要領(banking)などが含まれ、プロジェクト責任者Tyler Barton氏は「現状の脆弱性を克服し、本格的脅威に対峙する生存性確保が大きな課題だ」と語っています
今年の夏には、New Jersey州で実施されたNetModX (Network Modernization Experiment)に、MASCP project用の新装備候補がいくつも持ち込まれ、特に今年は機動性確保と熱・音・電磁波放射の抑制に主眼が置かれたテストだったようで、来年は更に対象を拡大して数週間のNetModXに臨む計画だそうです
Barton氏は「送信機やセンサーを高所に配置するタワーなどなど、様々な新インフラ試行導入でチャレンジングなテストを行うことができたが、様々な関係者のチームワークが素晴らしかった」と、様々な産業界の専門家や技術者の支援も得てテストが行われた様子を紹介し、MASCP project初期段階の成果に手ごたえを感じていると語っています
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極めて地道な取り組みながら、極めて重要なプロジェクトだと思います。対テロ戦から本格紛争への頭の切り替えに際し、とても大事なパーツです。以下の話が良くその点を表現しています。
2016年8月の講演で当時のNeller海兵隊司令官は自虐的に
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-16
●最近のある海兵隊演習で、展開先での前線司令部設置訓練を行い、仮設指揮所に大きなカモフラージュ用ネットが被せられた。敵の航空攻撃を想定する必要が無かった最近の実戦では、あまりやらなかった訓練だ。
●ネットの偽装効果確認のため上空からの映像で検証すると、仮設指揮所の周りの様々な通信ケーブルやワイヤーが太陽光を反射し、敵なら容易に重要な施設が中心に隠されていることが発見できる状態だった。そしてその欠陥に部隊の誰も気付いていなかったのだ
●これまでの対テロ戦の敵とは、異なる相手と本格紛争では対峙する現実を直視し、自分自身の姿を見直し、考え方を変えなければダメだと教育している
米海兵隊の前線指揮所カモフラージュ能力低下の衝撃
「海兵隊司令官が嘆く現状」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-06-16
Project Convergenceについて
「2021年末までの教訓」→https://holylandtokyo.com/2021/12/21/2514/
「米陸軍と海兵隊F-35が情報共有演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-13