A-10やプロペラ輸送機やMQ-9無人機を使用して
米本土で初:エンジン稼働のまま、燃料補給や弾薬搭載も
ACE構想訓練の一環と説明
6月30日付米空軍協会web記事は、6月28日と29日の2日間に渡り、米空軍特殊部隊や予備役軍や州空軍部隊の航空機が、ACE(agile combat employment)構想の一環として、ミシガン州の一般公道(Highway M-28)を使用し、A-10地上攻撃機やプロペラ機(U-28A, C-145, C-146, and MC-12W)による離着陸訓練や、エンジン稼働のままの燃料補給や弾薬補給訓練を含む「Northern Agility 22-1」演習を行ったと報じました
米本土での一般公道を使用した米空軍機の離着陸訓練は、2021年夏に「Northern Strike 21-2」演習としてA-10とC-146輸送機がミシガン州の別の公道で実施したのが「米空軍史上初」とされ、その1か月後にC-130輸送機がワイオミング州の公道に訓練着陸したようですが、着陸後エンジンを停止せずに燃料や弾薬搭載を行う「combat turns」訓練まで行ったのは「Northern Agility 22-1」演習が初めてだったとのことです
ACE(agile combat employment)構想は一般的に、敵のミサイル攻撃等で根拠飛行場が被害を受けることを想定し、近傍の施設不十分な飛行場に航空機や地上支援機材や人員を避難や分散して作戦行動が継続可能な態勢を目指す構想で、主に西太平洋での対中国作戦を想定していますが、一般公道を活用することもACEの一環として基礎的な検証が行われているのかもしれません
なお6月末の「Northern Agility 22-1」演習には、ミシガン州空軍が操作するMQ-9無人機(ノースダコタ州空軍保有機)も参加したと記事は紹介しており、ACE構想をアピールする広報イベント的な訓練とは異なり、かなり練って準備された演習との印象を持ちました
6月30日付米空軍協会web記事によれば
●A-10が一般公道に着陸した訓練は、2016年にエストニアで行われた記録があるが、米本土での訓練は2021年夏の「Northern Strike 21-2」演習が初めてだった
●「Northern Agility 22-1」演習に参加した部隊は、
・米空軍特殊作戦軍: 1st Special Operations Group and 6th Special Operations Squadron;
・米空軍予備役部隊:119th Special Operations Wing;
・ミシガン州空軍:127th Wing ・オクラホマ州空軍:137th Special Operations Wing ・メリーランド州空軍:175th Fighter Wing
●Bryan J. Teffミシガン州空軍司令官(准将)は、「・・・22-1演習は、米空軍参謀総長が表明している「変化を加速せよ、さもなければ敗北する:accelerate change or lose」を体現したもので、ミシガン州との良好な関係や訓練環境を生かし、ACE構想を推進する中核部隊が我々だと自認している。今回の演習は大成功で、統合戦力の一歩前進に貢献できた」と演習後語っている
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ジェット機が主力となって以降の軍隊で、一般公道を利用した離着陸訓練を行っていたことで広く知られているのはイスラエル軍ですが、近年では行っていません。
最近では台湾空軍が、F-16戦闘機やE-2早期警戒機で公道訓練を実施して対中国の態勢をアピールしていますが、緊急避難の着陸場所として使用することはあり得ても、燃料&弾薬補給や整備支援までを本格的に行うのは、最新型作戦機では難しいと思います
今回のジェット参加機は、エンジンの設置位置が地上から高く異物がエンジンに吸い込まれにくいA-10ですし、他はプロペラ機である点に注目です。A-10の再発進準備にどれほど地上支援機材が必要かは把握していませんが、現場密着のCAS用攻撃機ですから可能だったと考えられます
でも日本は、代替飛行場を真剣に考えるべきで、一般公道ではなく民航機用の一般空港の自衛隊機使用訓練を精力的に進めるべきです。事前に地上支援機材や弾薬や燃料を配置しておき、ヘリでの地上支援要員の緊急輸送をはじめ、戦闘機の離発着訓練など、政治的ハードルをクリアすれば物理的には比較的容易に実施可能な訓練から早急に開始すべきと考えます
公道での軍用機の離発着訓練
「2019年5月台湾空軍が高速道路で離着陸訓練」
→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-29