第7艦隊が総力を挙げ、中国に盗まれないよう早期回収
水深約4000mの深海から無人水中艇を使用し
昨年の地中海でのF-35B回収経験も活かした模様
3月3日付米海軍協会研究所web記事等は、1月24日に空母カールビンソンへの着艦に失敗してフィリピン沖の南シナ海に海没したF-35C型機を、米海軍第7艦隊や海軍システムコマンドが総力を挙げ、3月2日に水深約4000m(12,400 feet)の海底から引き揚げることに成功したと報じました。
同機はカールビンソンが空母リンカーンと同海域で共同訓練中に着艦に失敗したもので、同空母乗員(士官1名、下士官4名)が流出させ処分を受けた事故時の映像や写真によれば、高度不足で着艦アプローチに失敗して空母端に胴体を接触させ、甲板上を180度回転しながら滑って海中に落下したようです
回収作業は、第7艦隊の水中特殊任務を担当する「CTF75:Task Force 75」と、海軍Sea Systems Commandのサルベージ専門官のチームで行われ、水中作業支援船「Picasso」から発進した約3トンの遠隔操作水中作業艇「CURV-21」が海底のF-35に引き揚げ用ワイヤーを取り付け、支援船「Picasso」のクレーンで引き揚げたようです
同様の引き揚げ作業は、昨年、地中海で英空母エリザベスからの離陸に失敗して海没した英軍F-35B型機にも行われた様で、米英伊軍の協力で実施されたその際のノウハウも、南シナ海での迅速な引き上げ作業につながったようです
めでたし・めでたしですが、本件絡みで要観察事項2つ
●1月24日の海没事故の際、短期間で5件連続事故続きだった空母カールビンソン艦長が「わずか45分で着艦を再開できた。共に訓練していた空母リンカーにも一部艦載機を緊急着艦させるなど、不足事態への乗員の対応は素晴らしかった」と強気の発言を行っていましたが、
●「空母艦載機増加で運用リスク増」「緊張を強いられる対中国示威任務」「コロナ対策で乗員のストレス蓄積」などが事故多発や、乗員による事故映像リークの背景では・・・と、米空母の将来を勝手にまんぐーすは心配しております
「対中国特化米空母の苦悩」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
●もう一つ気になっているのは、この引き上げ成功を最初に報じた3月3日付米海軍協会研究所web記事が、「米海軍は中国やロシアへの情報漏洩を恐れ、F-35Cの海没&改修作業場所を非公開としていたのに、日本の海上保安庁が公示した」と批判的に報じている点です
●海上保安庁は、国際機関から当該海域における航海注意情報を世界に発信する役割を命じられており、「淡々と」サルベージ作業地点情報を事務的に世界に向け公示しただけですが、「配慮不足」を指摘される形となっています。海上保安庁が日本政府と事前に相談したとは思えず、このあたりの対応には今後注意が必要かもしれません
「日本の海保がF-35C海没場所公示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-01
3月13日の北京冬季パラリンピック終了までは、南シナ海や東シナ海は少し静かでしょうが、その後には不安しかない今日この頃です・・・
事故続発・米空母カールビンソンの苦しい航海
「対中国特化米空母の苦悩」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-15
「南シナ海の米空母でF-35着陸失敗等事故5件相次ぐ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-01-26
「日本の海保がF-35C海没場所公示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-01