Kendall空軍長官:米国にとっては必ずしも最適では・・
中国と同じ視点では「mirror-imaging」の過ちを
1月19日、剛腕Kendall空軍長官がCNASのイベントで講演し、極超音速兵器は重要だが中国にとっての重要性と米国にとっての重要性は異なると表現し、何が費用対効果で優れているかを熟考して兵器体系を考える必要ありと強調し、これまで米国防省の一貫した方針だった3軍が共同して「何が何でも極超音速兵器実現」モードからの変更を匂わせる発言をしています
同長官は2021年12月9日のDefense Oneのイベントで講演した際にも、無人ウイングマン機の開発コンセプト見直しを示唆したり、B-21爆撃機の無人随伴機新規開発を「that’s a major change」と表現したり、「移動目標の発見・識別・追尾」に宇宙センサーの導入を明らかにしたりと、「剛腕」が発揮されそうな予感を感じさせていたところですが、その第2段かもしれません
19日は極超音速兵器以外に、空軍の運用構想ACEはぜひと実現する必要があり、基地強化のほか、中国を騙して目標攻撃を困難にする手段の追求など多様な施策実施の重要性を訴え、また次世代指揮統制ABMSは一朝一夕には実現せず、段階的にできるところから推進する必要があるとも説明しています
本日は最も注目される「極超音速兵器」に関する19日の発言をご紹介します
19日付米空軍協会web記事によれば同長官は
●中国が極超音速兵器で攻撃したいと思う、つまり中国が脅威に感じている米軍施設には、空軍基地や海軍拠点などがあるだろう。しかし米軍にとっても極超音速兵器で攻撃したいような目標が中国にあるかと言えばそう単純ではない。「mirror-imaging」で中国と同様に極超音速兵器が米軍にとって重要かは熟考の必要がある
●トランプ政権時代には全力で極超音速兵器開発に邁進したが、同兵器は極めて高価であり、必ずしも費用対効果が最適とは限らない。そのトレードオフを慎重に吟味し、弾薬庫にどのような兵器をどれだけ備えるかを考えなくてはならない
●米国の目標は敵の侵攻を抑止することであり、それは例えばウクライナでも台湾でもそうだ。しかし中国のような国にとっては、その目標は米国を近づけないことであったり、米国に介入させないことであり、作戦運用目的が米国とは相当異なる点にも留意すべきだ
●どのような兵器体系を将来構成するかは未決の検討課題で、極超音速兵器がその一角を占めることは間違いないが、何のためにどの程度保有するかはよく考える必要がある
●(ただし同長官は、米軍にとって、どのような攻撃目標がより速度の遅い巡航ミサイルに適した攻撃対象で、何が極超音速兵器に適した攻撃対象か等については一切言及しなかったが、) 引き続き同兵器の開発と配備に取り組むべきと考えている
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そのほか同長官は無人ウイングマンについて、多くの検討がなされてきたが価格が適当でなければ推進できないと表現し、また全ての優先計画を遂行するには、必要性が低下した装備の早期退役が不可欠で、2022年度予算ではいくつかの提案が米議会の賛同を得られたと語っています
なかなか踏み込んで具体的な計画の内容まで明らかにしない同長官ですが、米空軍内も含めた多様な方面に牽制球を投げ込みながら、中国にもにらみを利かせながら、予算獲得策も練りながら・・・進んでいるのでしょう。多分
しかし、米国と中国の作戦目的は異なる・・・仰せの通りかもしれません。原点に立ち返り、「mirror-imaging」の過ちを犯さないようしなければ・・・
2021年12月9日の同長官講演
「7つの優先事項を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-12
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