中国外務省の兵器管理局長が語る
米英仏中による核兵器共同声明の翌日ですから
1月4日、中国外務省の兵器管理局長(director general of the Foreign Ministry’s arms control department)が、米国防省が2021年11月発表の「中国の軍事力」レポートで、前年見積もりを約2.5倍規模に上方修正した中国による核戦力大増強に関し、「米国の主張は事実と異なる。近代化を進めているだけだ」と主張しました
米国防省は同レポートで中国核戦力の増強を、2020年レポートでは2030年までに400弾頭と予想していたのに、2021年レポートでは1000弾頭以上と大幅上方修正しました。
そして具体的に、衛星写真で新しいICBMサイロが中国3か所で数百個建設中であることや新型ICBMが開発されていること、空中発射及び潜水艦発射開発型でも新兵器開発が着実に進められていること等を、同レポートで主張していたところです
以下で紹介する担当局長のコメントは、米英仏中が、NPT会合の代わりに発表した共同声明の翌日のもので、同声明のラインに沿った官僚の発言かもしれませんが、一応の公式スタンスですから確認しておきましょう
4日付Military.com記事によれば同局長は
●Fu Cong中国外務省兵器管理局長は、中国は国家安全保障のために必要な最低限レベルの核抑止を確実なものにするため取り組んでいると主張し、「中国が核戦力を劇的に拡充していると米側は主張しているが、まず一番に、その主張は正しくないと言わせてもらう」と語った
●米側がICBMサイロ建設の衛星写真を証拠に中国の核戦力増強を主張している点に関し同局長は、ICBMサイロには言及せず、中国の核戦力を衛星写真で見積もるべきではないと反論した
●また同局長は、中国はアジアの安全保障環境の変化に対応するため、必要な措置をとる必要があると主張し、米国による中距離ミサイルのアジア配備計画や印パキスタンによる核兵器開発を事例として挙げた
●米国が米露の戦略核削減条約に中国も加わるよう呼び掛けていることについて同局長は、世界の中でずば抜けた数の核弾頭を保有する米露両国が、まず大幅に核戦力を削減すべきだと主張した
●そして「もし米露が中国レベルにまで核弾頭数を削減したら、中国も喜んで同条約の枠組みに加わる準備がある」、「そして英国やフランスレベルにまで更に米露が削減すれば、他の核保有国も同条約に加わることができるだろう」と述べた
●バイデン政権は核体制見直しを検討中だが、中国が同局長の主張とは真逆の核増強に突き進む中で、米国として大きな方向転換は考えにくい
●同局長はイラン核合意について、米国にはイランへの制裁を解除、イランには核合意枠組みに復帰を要望した。イラン核合意については、米中英仏独がイランと同合意枠組み復活に向けた協議を続けている
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「中国の核戦力を衛星写真で見積もるべきではない」と堂々と主張する中国は、南シナ海を軍事基地にしないと主張し、ウイグル地区での人権侵害がないと言い続ける中国と同じです
中国外務省の兵器管理局長に事態を変える力はないのでしょうが、共産党指導層の意向を受け、ヘリクツを考え、主張を続ける役割を担っているのでしょうからご紹介しておきます
中国の核戦力大増強を指摘した米国防省レポート
「2021年版・中国の軍事力レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-06
中国空軍のH-6大型爆撃機
「中国空軍H-6Nが極超音速兵器試験?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-20
「H-6Kのグアム島ミサイル攻撃模擬映像」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23
新START期限切れ関連
「新STARTはとりあえず5年延長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-22-1
「ドタキャン後にまた受け入れ表明」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-17
「延長へ米露交渉始まる!?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-18-1
「Esper新長官アジアへ中距離弾導入発言と新STARTの運命」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-04
「IISS:対中国軍備管理とミサイル導入は難しい」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-09