4月29日発表の試験成功の細部に言及
2022年度予算案の最優先装備としてアピール
13日、David Berger海兵隊司令官が講演で、4月末に同司令官が発表したNMESIS(海軍海兵機動型艦艇阻止システム:Navy Marine Expeditionary Ship Interdiction System)発射試験の成功に関し、実は目標が90nm以上沖合の海上を移動する艦艇であったと明らかにし、NMESISの能力の高さをアピールしました
先日の「海上目標攻撃試験成功」時にご紹介したように、NMESISは、既に沿岸戦闘艦LCS等に搭載されている対艦対地ミサイル「naval strike missile」を、既に運用実績がある軽戦闘車両JLTVを無人運用可能にした車両に搭載したもので、海兵隊が開発リスクを最小限に抑えたと宣伝するシステムです。
なお、JLTVを無人運用可能にするため、「ROGUE:remotely operated ground unit for expeditionary」とのシステムを搭載して無人運用可能としています。
Berger海兵隊司令官はMcAleese defense 会議で
●12日、加州沖合の小島に展開したNMESISからの海上目標攻撃試験成功についてBerger海兵隊司令官は、同試験での攻撃目標は「海上移動中の艦艇:a ship on the move」であったと明らかにした
●「大変成功した試験だった」、「この攻撃能力を前にした敵は、どう行動すべきかを慎重に考えざるを得なくなる」と試験成功を改めて振り返り、2022年度予算案での米海兵隊最重要案件であるとアピールした
●同司令官は更に、海兵隊は敵水上艦艇を除去するだけでなく、敵潜水艦までも危機に陥れることで米海軍の作戦行動を支援したいと語り、そのため米海兵隊は海峡などの水路や海上交通路をコントロールし、米国や同盟国のためにオープンな状態を維持したいと語った
●そして、「沿岸地域からの戦闘が米海兵隊にとって強化すべきエリアであり、その方向に向かっている」と述べ、(過去20年余りの対テロ戦や従来の海兵隊が重視してきた)戦車や短射程火砲は海兵隊の将来脅威にフィットしておらず、長射程火砲と軽着上陸艦艇がふさわしい、と説明した
●また「米海兵隊は、一つの場所に継続して拠点を張る地上部隊から、海洋機動モードへと方向転換を図りつつあるのだ」と語った
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4月29日に同司令官が議会証言した際は
●我々はNMESISを米艦艇や沿岸地域に配備し、敵水上艦艇に脅威を与えることができ、海上交通路を開放することができる。このNMESISを有効に活用できる迅速な機動展開運用が我々の目指すべき方向である。
●米海兵隊にとって、2022年度予算で地上や艦艇配備の精密誘導火力を確保することが死活的に重要だ。海洋エリアをバリアに変え、敵の海上交通路を遮断し、我が交通路を確保することが目的だ
・・・と述べており、その主張は一貫しています
一方で米海軍や米空軍のように、中国の綿密に練られた戦力構成や作戦構想A2ADを前に従来の主役であった空母や戦闘機の扱いに困って、検討中とか、玉虫色の発言が多い組織とは異なり、戦車を捨て、短射程火砲を犠牲にし、歩兵中心だった組織も大変革しようとしている米海兵隊はたくましいです
米海兵隊の変革関連
「海兵隊NMESISで海上目標攻撃成功」→https://holylandtokyo.com/2021/05/03/213/
「歩兵の多能兵士化を推進中」→https://holylandtokyo.com/2021/04/27/117/
「海兵隊で歩兵が砲兵を支援する新形態演習」→https://holylandtokyo.com/2021/04/15/107/
「対潜水艦作戦にも」→https://holylandtokyo.com/2020/11/09/382/
「在日海兵隊の飛び石演習」→https://holylandtokyo.com/2020/10/26/441/
「司令官が在日米海兵隊削減を示唆」→https://holylandtokyo.com/2020/09/28/488/
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06