推進装置を持つ「Powered JDAM」と呼ぶそうです
米軍の採用は決まっていませんが・・・
巡航ミサイルより安価な長射程兵器を目指し
2月28日付米空軍協会web記事は、精密誘導兵器JDAM(Joint Direct Attack Munition)に推進装置を装着した「Powered JDAM」を開発中だとのボーイング関係者の話を紹介し、中国等のA2ADに対処する安価な兵器の射程延伸オプションとしてアピールする様子を紹介しています
JDAMとは、普通の500ポンドや2000ポンド自由落下爆弾に、GPSやレーザー誘導が可能になる誘導装置と誘導用の羽根(フィン)のキットを取り付け、簡易な精密誘導爆弾にしたものです。
従来の高価なTV誘導爆弾や電波ホーミング爆弾と異なり、戦闘爆撃機等から一度投下したらケアする必要がない「打ちっぱなし」が可能で、安価なキット装着で簡単に精密誘導兵器化できることから、これまでに42万発が製造され、日本も導入しているベストセラー兵器(キット)です
初期のJDAMは精密誘導用の羽根(フィン)を爆弾尾部に取り付け、攻撃目標に落下するよう、落下位置を数NM程度を微調整する程度でしたが、発展型の「JDAM-ER(Extended Range)」では、自由落下爆弾に追加で小型の翼(Wing)をつけて爆弾を滑空させ、40nm程度の射程距離を得ることが可能になっているようです
そして今開発されている「Powered JDAM」は、滑空用ミニWingに加え、小型の推進エンジンをJDAMキットに加えることで、ちょっとした巡航ミサイル並みの射程160nmも可能なレベルのJDAMシリーズを可能にするものです
開発終了時期や販売開始時期等の予定を記事は紹介していませんが、中国等のA2AD網に対抗するため、少しでも打撃力の射程を安価に延ばしたい米軍や西側諸国にとって、魅力のある兵器となりそうです
28日付米空軍協会web記事によれば
●ボーイング関係者は、初期のJDAMにエンジンを装着し、射程距離を20倍にする「Powered JDAM」を開発中だと述べ、500ポンドの弾頭に推進エンジンや小型翼、更に誘導装置をつけても、2000ポンド爆弾程度の大きさに収めて既存攻撃機に搭載可能にすると説明した
●また、「Powered JDAM」製造に必要な各種部品には、既存の兵器で性能や信頼性が確認済みのパーツを使用して開発コストを抑え、巡航ミサイルの代替も可能なレベルの最も安価な精密誘導兵器として位置づけたいとも説明した。
●「Powered JDAM」は精密誘導兵器としてだけでなく、敵の防空ミサイルや防空システムを混乱させ飽和させる「おとり:デコイ」としても使用可能で、そのほかにも軍の希望に応じ、「Mark 82自由落下爆弾」の弾頭部分に多様なセンサー、シーカー、データリンク等装備を搭載し、安価な投入兵器として活用可能である
●ボーイング社の販売担当代表は、「Powered JDAM」の狙いは、実証済みのJDAMの能力を生かし、A2ADエリアの外側から攻撃可能な射程距離を提供し、搭載母機の生存性を確保しつつ打撃力を生かすことに貢献することだと説明している
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タイトルに使用した「射程160nm?」は、ネット上で「ググッた」中のスライド資料に、「JDAM-ER(Extended Range)」の射程が40nm程度可能で、「Powered JDAM」では160nmと記載があったからで、紹介した記事内に射程距離に関する具体的数値の記述は「JDAMの20倍」以外にありません
記事では、価格的には従来型JDAMよりは当然高いが、巡航ミサイルより安価・・・となっています
地上配備の長距離砲、艦艇搭載兵器の射程延伸など、完成に近づきつつある中国のA2ADに対処するため、米軍は兵器の射程延伸に知恵を絞っています。そんな一つのオプションとして・・・
JDAMなどPGM不足関連
「ソフト遅れでJDAM搭載不可F-35」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-03-1
「米陸軍が対北朝鮮に緊急準備開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-12
「米空軍がJDAMやPGM増産」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-10-24
「空軍長官代理のPGM不足発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-05
「精密誘導爆弾の不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-03
「米国の弾薬を当てにするな!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-21-1