テキストを投入すると自動で教材を作成
生徒の進度を教官がリアルタイム把握
生徒個々の理解度に併せて柔軟に教材変更調整
学習時間を4割削減かつ定着率アップ
米陸軍と空軍の基礎課程で試行
Military.comが、米陸軍や米空軍が試用を始めた人工知能を活用した教育教材の作成と活用について取り上げています。
冒頭で手短にご説明しているように、AIによる「自動学習:machine learning」機能を活用しつつ、オンライン機能を活用して教官がリアルタイムで生徒の様子を把握する手法で、相当の効果を上げているようですのでご紹介します
この新しい学習software systemは、従業員教育に数十年の経験がある「Cerego」との企業が開発したもので、教育対象科目に制約はなく、現在ある教材(文書、ビデオ、図表などなど)をこのsoftware systemに投入すると、何を、いつ、どのように生徒に提供して学習させ、どの様に理解度・進捗度を評価するかを提供してくれるそうです
また教材はアプリ形式で提供され、個々の生徒のアプリへの反応(教材の理解度や弱点)に応じ、教材の提供要領を修正変更していくということです
記事では、米陸軍が全ての兵士が受講する必要がある負傷者手当(Tactical Combat Casualty Care)の教育に導入した様子や、米空軍が初級基礎コース(BMT:Basic Military Training)の新入隊員110名を対象に昨年12月から試用を始めた様子を取り上げています
教育分野は問いませんし、「Cerego」社のwebサイトは一般企業の従業員教育への活用を宣伝アピールしていますので、ご興味のある方はどうぞ
Military.com記事によれば
●これは、パワーポイント・スライドを使用した教育が招く「脳死状態」を救うかもしれない
●教育対象者の理解度を向上し、かつ教育時間を削減するために「Cerego」社が米陸軍と空軍に提供し始めたsoftware systemは、一般企業の従業員教育に関する数十年間の経験と、AIの機械学習・自動学習能力を結び付けた製品である
●同社CEOのPaul Mumma氏は、「我が社は、適切なタイミングで適切な教材を提供し、時間を無駄にしないことを重要コンセプトにしている」、「我が社のソフトを活用すれば、従来の手法に比べ、4割少ない時間でより高い学習効果が得られる」とアピールしている
●米陸軍と空軍は、共に同社のソフトを活用した試行プロクラム開発を終了し、米空軍は2019年12月から、テキサス州ラックランド基地での新入兵士基礎課程BMTで試用を開始して効果を確認している
●ラックランド基地の第321教育隊では、110名の新入隊員に「Microsoft Surface Proタブレット」が配布され、各新入兵士はいつでも教材にアクセスでき、かつ教官もいつでも生徒個々の学習状況をリアルタイムで把握出来る仕組みになっている
●同部隊の教育担当軍曹は、「このシステムは個々の生徒の弱点を明らかにし、これまで感覚的に把握していたものを明確にしてくれる。教育をより効率的にしてくれる」と語っている
●同システムにインプットする元教材を作成する教官にも、生徒が理解苦労している部分を早期に把握でき、修正が直ちに生徒への提供教材に反映できることから好評である。
●米空軍は、このラックランド基地での試行結果が良ければ、米空軍の全ての新入兵士基礎課程BMTに同システムを導入することも考えている。現時点では、教育効果向上にも、教育時間の短縮にも良い結果が表れている
●同社CEOは、AIの機械学習や自動学習技術を活用しているものの、「教育原理の基本として100年以上前から知られている、分散・反復学習(distributed learning)技術や、知識をテストすることで定着させるretrieval practiceの原理を活用する基本は変わることはない」とシステムを説明している
●同時に同CEOは、AI活用ソフトを導入したとしても、身体を動かして学ぶ「muscle memory aspects」や、生徒の様子を観察して適切な方向に導く教官が不要になるわけではないと強調している
●例えば、米陸軍の基礎課程では、「Tactical Combat Casualty Care」と呼ばれる負傷者救護法が全兵士に必須の科目だが、同社のAI活用システムで基礎知識を効率的に得たとしても、実際に包帯や止血帯をどのように負傷者に使用するかは、手を動かして実地に体験させることで教える必要がある
●それでも米陸軍では、この「Tactical Combat Casualty Care」教育全体に必要な時間が、12時間から6時間に短縮できたとの成果を確認している
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下にご紹介するCerego社のwebサイトものぞいてみてください。
記事でご紹介したCEOのPaul Mumma氏が約2分間の動画に登場し、同社とその製品をアピールしていますが、若いです! 20代後半から30代半ばにしか見えません。
「Paul Mumma Cerego」でググってみても、そのご活躍ぶりが伺えますので、ご興味のある方はどうぞ!
Cerego社のwebサイト
→https://www.cerego.com/
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