「米が露の背中を追う近代史上で前例のない状況になった」
24日、ロシアのプーチン大統領がロシア軍首脳との会議で訓示し、改めて、世界で初めてロシアが超超音速兵器の開発に成功して部隊配備を開始しており、「米が露の背中を追う近代史上で前例のない状況になった」と表現して軍事力をアピールしました
プーチン大統領は、2018年3月の年次一般教書演説でも、数々の新型核兵器や超超音速ミサイルの開発を明らかにしていましたが、より明確に「世界で唯一」とか「米国より優位に立っている」と表現して見せました
米国のエスパー国防長官は今年8月、超超音速兵器開発を最優先事項と語り、「完成までに恐らくcouple of years必要だろう」と述べていますが、そのような米国を見下すようにプーチン大統領は、長射程の大陸間超超音速兵器を今月部隊に配備し、射程2000㎞級は既に配備部隊が運用を開始していると述べたようです
エスパー長官は中国も開発している(hypersonic missiles being developed by Russia and China)と表現していますが、プーチンは世界で唯一ロシアだけが超超音速兵器を部隊配備していると表現しており、この辺りの差が気になるところです
25日付Military.com記事によれば
●24日、プーチン大統領はモスクワで軍首脳たちに訓示し、「米が露の背中を追う近代史でユニークな状況になった。ロシアを除いて超超音速兵器を保有している国はなく、ましてや我が国のように大陸間射程の同兵器を配備する国は存在しない」と語った
●そして、史上初めてロシアが、米国の後追いでなく、世界の兵器開発をリードする立場になったと語り、更に、冷戦期に核兵器や戦略爆撃機やICBM開発で米国に後れを取った時代からの変化を強調した
●具体的にプーチン大統領は、速力マッハ10、航続距離2千キロとされる航空機搭載型の極超音速核ミサイル「キンジャールKinzhal」が既に運用を開始し、大気圏内をマッハ20で飛べるという大陸間飛翔ミサイル「アバンガードAvangard」装備部隊が今月12月から任務体制につくと明らかにした
●「アバンガードAvangard」についてプーチンは、飛翔中にコースや高度を変化させて敵の迎撃を困難にすると説明し、「これは未来の兵器だ。現存するものだけでなく、将来のミサイル防衛システムを突破する能力を持っている」と強調した
●射程2000㎞の「キンジャールKinzhal」については、Mig-31に搭載する空中発射型として2018年に運用を開始し、地上目標と艦艇の両方を攻撃可能とアピールした
●プーチン大統領はまた、NATO軍がロシア国境に近い東欧に部隊を増強してることや、米国によるINF全廃条約からの脱退を、ロシアに対する脅威だと訴え、「これは引き分けの無いゲームであり、ロシア技術は西側より優れていなければならず、鍵となる分野で達成可能だ」と訓示した
●ロシアのSergei Shoigu国防相は同じ会議で、2019年にロシア軍は143機の新造機と潜水艦1隻、8隻の水上艦艇等を調達し、2020年にも同様のペースで戦力増強を続け、航空機106機、潜水艦3隻、水上艦艇14隻、ICBM22発等を導入すると述べている
●プーチンはその他の重要開発兵器として、新型大陸間弾道ミサイルICBMのRS-28 「サルマトSarmat」、ポセイドン核推進魚雷、Burevestnik核推進巡航ミサイルの開発に取り組んでいると言及した
●なお、核推進巡航ミサイルは冷戦期に米ソが共に開発に取り組んだが、あまりにも汚染拡大リスクが高いとして開発を中止した経緯がある。またBurevestnik核推進巡航ミサイルについては、8月の試験中に爆発事故を起こし、研究者など7名が死亡した模様である
●米国防省も新たな長射程兵器として最優先で取り組んでいるが、8月にエスパー国防長官が「完成までに恐らくcouple of years必要だろう」と述べている
●同時に国防省は、超超音速兵器の脅威を繰り返し訴え、米本土や海外展開米軍部隊を防護するためには、宇宙に重層的なセンサーを配備し、迅速な探知と発射後の進路変更を追尾できる体制が必要だと主張し、併せて迎撃用ミサイル等を宇宙に配備して、発射直後のブースト段階で対処する必要があるとの考えを展開している
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ICBMサルマト、核巡航ミサイル、核魚雷についても、ロシアは実験や開発に成功したと主張しているようですが、米国の専門家の間では、いずれの兵器も技術上の問題で実戦配備に至っていないとの見方が多いようです。
24日のプーチン発言について米国防省報道官は、「特にコメントすることはない」と対応しているようですし、昨年3月にプーチンが一般年度教書演説で超超音速兵器開発や配備について明らかにした際も、、ロシアによる核戦力の拡充は核態勢見直しNPRにも織り込み済みで「驚くにあたらない」とし、一連の新型兵器にも「米国は対抗できると確信する」と強気でしたが、何となくむなしく響く感じがします
超超音速兵器に関していえば、陸海空軍がバラバラに開発を始め、全てが予算不足でとん挫し、最近になって国防省が音頭を取って絞り込んだ開発に着手した状況です。
中国にしてもロシアにしても、兵器開発には「独裁国家」の腕力が必要ということでしょうか・・・残念です
2018年3月のプーチンの年度教書演説
「ロシアが続々新型戦略兵器開発主張」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-03-1
超超音速兵器開発で中国が優位だと認め、バラバラな米国を嘆く米軍幹部
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-27-1
プーチンが公式表明した核魚雷の関連記事
「米NPRも露核魚雷に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13-1
「露が戦略核魚雷開発?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-06
CMや超超音速ミサイル対処
「CMから米本土を守る3つの方策」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-10-30
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31
「露の巡航ミサイルへの防御無し」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「超超音速兵器への防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
ミサイル防衛関連の記事
「ミサイル防衛見直し発表」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-01-19
「グリフィン局長の発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-1
「米ミサイル防衛の目指すべき道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「BMDRはMDRに変更し春発表予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1