MQ-4Cトライトン68機では不十分
衛星や陸上発進ISRターゲティング機には頼れない
11月22日、ハドソン研究所が米海軍のISR能力不足を指摘するレポートを発表し、中国海軍艦艇搭載の対艦ミサイルの射程や精度が格段に向上し、米海軍がより遠方からの作戦を求められる中、海軍版グローバルホークMQ-4Cトライトンや衛星による敵艦艇の把握では不十分だと警告し、艦艇搭載可能な無人ISRアセットなどの装備を提言しています
ハドソン研究所の検討は、現在依存している脆弱な衛星による海面監視は有事に期待できないとの見積もりの基、中国海軍艦艇の艦載兵器の能力からして、同艦艇が大陸の海軍基地を出航した後は第一列島線内で常時位置を把握しておく必要があるとの前提で進められています
米海軍もISRや目標ターゲティング能力を確保するため、海軍版グローバルホークのMQ-4Cトライトンを68機調達し、同機が常時5箇所で哨戒活動を継続できる体制確立を目指していますが、ハドソン研究所は東シナ海と南シナ海を含む第一列島線の内側をこれだけでカバーするのは無理だと指摘しています
22日付Defense-News記事によれば
●米海軍は長年にわたり、衛星の監視データを基にFA-18とEA-18Gが目標を攻撃する手法に頼ってきた。しかし中国海軍が長射程対艦ミサイルに投資し、米空母艦載機の攻撃可能範囲を超えるようになり、米海軍はより組織的なISR能力開発を迫られるようになってきている、とハドソン研究所レポートは指摘している
●衛星による監視能力は、有事においては中国のネットワーク攻撃により破砕又は能力低下に追い込まれるであろう事から、現状では米海軍は数少ない無人機によるISRに頼らざるを得なくなる
●レポートは「米軍には、米海軍艦隊に継続的に作戦海域情報を提供して指揮官の意思決定を支えるISRプラットフォームが、有人機無人機を問わず不足している」と指摘し、
●「最悪のケースでは、敵は紛争初期段階で米軍を圧倒し、米軍指導者に撤退か大きな犠牲を覚悟するかの選択を迫ることになる。最悪の場合でなくとも、米軍は中国軍の動きを太平洋で把握できず、中国に時と場所を選んで優位に作戦を遂行する地位を与え、米側に望まないエスカレーションを強いる恐れがある」との分析を提示している
●海軍版グローバルホークのMQ-4Cトライトンを68機調達し、同機が常時5箇所で哨戒活動を継続できる体制確立を目指しているが、2000nm範囲の継続監視体制が5箇所で可能になっても、MQ-4C全てを投入しても第一列島線内部の全海域をカバーすることは難しい
●中国の第一列島線内での脅威を勘案すれば、米海軍の狙いは兵器誘導可能なレベルの中国艦艇追尾が必要であり、目標に対応した攻撃兵器とのペアリングが形成可能な状態が維持されていることである、とレポートは分析している
●これら状況を受けレポートは、MQ-4C調達機数の増加と米空軍MQ-9の海洋使用への改修、空母艦載無人空中給油機MQ-25Aの海面ISRバージョン開発、更に周辺同盟国のISR能力造成を進めること等を提言している
●またレポートは、米水上艦艇の甲板から発進可能な中高度・長時間在空無人偵察機の新規開発を提言し、艦艇から見通し線外の目標探知や目標情報中継機能を担わせる運用を提案している。これは米海軍が最近開発したSM-6海上目標攻撃型や「Naval Strike Missile」との連携も想定したものと見られる
●上記の艦艇甲板から離発着可能なISR無人機として、DARPAが取り組んでいる半径約600nmカバーするTERN(tactically exploited reconnaissance node)や、ベル社のプロジェクトである「V-247 Vigilant」が想定されている
●レポートは米海軍に長射程ミサイルへの投資を進めているが、遠方でのターゲティング能力が伴わなければ意味がないと注意喚起し、以前に増してISR能力とネットワーク力の重要性を肝に銘じるべきだと主張している
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気になるのは、「第一列島線の内側」での連続継続哨戒を念頭に置いているのに、MQ-4CやMQ-9のようなステルス性のない機体をISRアセットとして想定している点です。米艦艇から発進可能なTERNやV-247 Vigilantにしても、プロペラ機(ローター機)ですからステルスではありません。どうやって生き残るのでしょうか?
ハドソン研究所は保守色の強い研究所ですので、現在の米海軍の装備導入計画を「後押し」する方向にレポートをまとめたのでしょうか?(符度?)
もう一つは「同盟国のISR能力増強」推奨です。海上自衛隊は艦艇に無人ISR機を搭載する発想など全くなく、P-1哨戒機の調達に必死な状況ですから、第一列島線内側のISR活動などどうするのでしょうか?
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