アフガンでの低速中高度飛行多数で機体が疲弊
稼働率向上には多額な経費が必要な可能性大
9月17日、Goldfein米空軍参謀総長はAFA航空宇宙サイバー会議での記者会見で、保有機60機に対し稼働機数が「一桁」に落ちていると報じられたB-1爆撃機について触れ、稼働率向上のためにどれほどの予算が必要で、米空軍として今後B-1爆撃機をどのように扱うのが適当かを分析検討していると語りました
そして、B-1への投資を検討する際には、最優先事業の一つであるB-21爆撃機取得促進も考慮要素になると語り、B-1を早期引退させて維持整備費を浮かせ、B-21計画による必要空軍予算の膨らみを抑えることも考慮していると述べました
B-21機種選定の際、米空軍は100機調達を想定して関係企業に提案させてノースロップグラマンに担当企業を決定しましたが、爆撃機を運用するGSCの司令官は、国家防衛戦略を遂行するには他機種を含めて225機の大型爆撃機が必要だと発言しており、B-1とB-2が先に引退するとなると少なくとも140機のB-21が必要となります
米空軍幹部の中にはB-21は175機必要だと述べる者もいて、F-35やKC-46と並行してB-21を調達する米空軍にとって、議会頼みだけでなく自ら費用をねん出する姿勢も求められており、そんな一つの知恵なのかもしれません
17日付米空軍協会web記事によれば
●同参謀総長は、中国の脅威がある中、地域の同盟国が爆撃機を保有していないことから、太平洋地域での「爆撃機需要は高い状態が続いている」と述べた
●同時に多くの検討や分析を通じ、より多くの爆撃機、特にB-21が必要だとの結論が導かれており、この点について参謀総長である私も100%の革新と信念を持っており、爆撃機部隊を大きくする必要がある、とも表現した
●このような全般状況を語った後にGoldfein大将は、B-1爆撃機の状況に触れ、過去18年間にわたる中東での酷使、特にアフガンで重宝された多くの弾薬を搭載しての空中待機と要請に応じた迅速な地上部隊支援対応により機体に想定以上の負荷がかかったと述べた
●B-1は設計上、低空を高速で飛行するため可変翼を後方にたたんで行動することを基本として製造されているが、アフガンなどでは中高度を低速で空中待機する時間が長く、可変翼を広げて飛行するため機体に想定以上の負荷・負担が生じている、と同大将は説明した
●結果として「機体に想定外の負荷が蓄積し、数年前からB-1の機体構造部分に深刻な問題が複数発生している」、「米空軍はB-1が十分な即応態勢を回復できるか、そのためのコストは負担に値するかを確認しようとしている」と参謀総長は説明した
●米空軍物資補給コマンドのArnold Bunch司令官は別の場で記者団に、B-1の構造疲労テストを数年前に開始したが、突発的なB-1の不具合事象でそのたびに中断してきたが現在は再開していると述べたが、いつ結果が出るかかは語らなかった
●参謀総長は、米空軍指導層で疲労度が高い何機かのB-1を早期退役させ、爆撃機グループへの投資に回す手段についても検討を行っており、その中には、長射程戦略兵器やB-52エンジン換装、KC-46導入ペースダウンやB-21導入加速などのオプションが含まれているとも述べた
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一番最後の部分に、「decreases our tanker requirement」との検討オプションが含まれており驚きましたが、俗にいう「聖域なき予算削減検討」が米空軍内で行われているということなのでしょう。
別の記事では、不具合が依然解消されていないKC-46は、今後3-4年は不具合解消に必要との米空軍幹部の発言も紹介されており、今後色々どんでん返しがありそうです
B-1早期引退については、「retire some of the most stressed B-1s」との表現ですから、60機全てに手を付ける検討ではないようです。
爆撃機とロードマップなど
「B-1爆撃機の稼働機一桁の衝撃」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-05
「B-1とB-2の早期引退に変化なし」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-19
「2018年春のBomber Vector」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-2