初めて中国企業も推計:世界の軍需産業Top100

米企業がTop3も、Top15に中国企業が6つも
米英共同チームが苦心の中国企業推計
100 Top.jpg22日付Defense-Newsが、2001年から毎年集計発表している「世界の軍需産業トップ100リスト」を公表し初めて中国企業を含めたランキングを作成して話題を集めています
西側企業の場合は、ロシア企業も含め、企業活動に関する情報開示が行われていますが、兵器製造に当たる中国企業の多くは巨大国営企業であることから情報開示が十分ではなく、その推計にDefense-Newsと英国IISS合同チームは苦労したようです。
厳密に西側企業と同レベルで収入(defense revenue)が把握されているかは疑問符もありますが、この点について合同チームは以下のように説明しています
J-31 2nd4.jpg●中国巨大国営企業の推計に当たっては、民生部門と軍需部門の売り上げを区別することが大きな課題だったが、各巨大国営企業の数百の下請け企業まで追跡し、各下請け企業が民需か軍需かを見極め、配分を推計した
●全体8位のChina North Industries Group Corporation Limited(Norinco)のみが民需と軍需を分けて情報開示していることから、上記手法をこのNorincoに適用して手法の正確性を検証したところ、Defense-Newsと英国IISS合同チームの手法で導いた数値と公開数値がほぼ一致することが確認でき、手法の確度を証明できたと考えている
リストからトップ15とその2018年軍需収入額は
1 ロッキード  5.5兆円
2 ボーイング  3.7兆円
3 ノースロップ・グラマン 2.7兆円
4 レイセオン  2.7兆円
5 Aviation Industry Corporation of China  2.6兆円
6 GD  2.6兆円
7 BAE システム 2.4兆円
8 China North Industries Group Corporation Limited  1.6兆円
9 エアバス 1.5兆円
10 China Aerospace Science and Industry Corporation 1.1兆円
11 China South Industries Group Corporation  1.1兆円
12 China Electronics Technology Group  1.1兆円
13 Leonardo (イタリア) 1.1兆円
14 China Shipbuilding Industry Corporation  1.05兆円
15 Almas-Antey (ロシア) 1.0兆円
トップ100のリストは
→https://people.defensenews.com/top-100/ 
22日付Defense-Newsはトップ100リストを眺めて
China Aircraft Ind..jpg試算した中国の主要な巨大国営軍需産業の収入合計は約11兆円で、これを超える米国軍需産業合計に次ぐ第2位である。またこの額は欧州全域の軍需産業収入合計とほぼ同額である
●分析したIISS研究者によれば、中国企業は大きなプレーヤーだが、世界市場でどれほど大きいかはよく吟味する必要がある。世界の国々は米国製か中国製兵器選択を迫られることになるが、近い将来において現在米国製を使用している国で、中国製に乗り換えるたいと考えている国はない
中東諸国で中国製無人機を導入したとの事例はあるが、中国企業は(技術流失を恐れて)輸出を制限している
中国軍需企業の納入先の大半は中国軍向けで、輸出は大部分バングラデッシュ、アルジェリア、ミャンマー、パキスタンに限られ、パキスタン向けが輸出の36%を占めている。これは中国との共同開発戦闘機JF-17の生産によるものである
Luyang III 052D.jpgロシアや欧州の軍需産業は企業存続のため輸出する必要があるが、中国や米国企業は国内市場で生き残れる。また米国が世界各国に中国製兵器の導入規制を課しているため、中国企業は当面中国市場に焦点を絞らざるを得ない
●仮に中国企業の輸出による影響を懸念するとしたら、それはロシア企業だろう。ラテンアメリカやアフリカ諸国は予算が限られることから低コストの兵器を求めており、中露が市場を争う可能性がある
中国軍需企業の鍵となる弱点は3つある航空機エンジン、艦艇推進システム、戦闘コントロールシステムの3つである。これら分野でのテコ入れのため、国を挙げた開発センターを整備したり、外国企業と協力体制を構築したりしている
Liaoning-Dalian.jpg中国大規模企業の合併も政府が主導して進めている。米国では、軍需産業の合併は競争機会の喪失や開発コスト増大の元凶とみられることが多いが、中国は政府監督による統制があり、シナジー効果やイノベーション促進、重複部門の効率化などを期待する見方が多い。
●かねてから噂の「China State Shipbuilding Corporation」と「China Shipbuilding Industry Corporation」の合併が成立すれば、本リストの9位に相当する巨大造船企業が誕生することになる。中国海軍は、今年前半だけで11隻の戦闘艦艇を就航させるが、当面旺盛な艦艇建造を効率化する狙いがあるようである
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Defense-Newsと英国IISSの合同チームとは柔軟な組み合わせです。米軍事メディアと英シンクタンクが協力し、このような基礎的なデータ集計を行い、分析を提供するとは大したものです
この辺りが安全保障研究における伝統の重み、懐の深さ、基礎研究を怠らない足腰の強さなのでしょう。
トップ100リストは、2000年のデータ分析結果まで遡ってご覧いただけますので、色々な視点で眺めて見てはいかがでしょうか。
トップ100のリストは
→https://people.defensenews.com/top-100/ 
米国軍需産業の分析レポート
「2019年版 米国防省軍需産業レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-28
「2018年版レポート」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-26-1
艦艇の修理や兵たんの課題
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24
「空母定期修理が間に合わない」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09
「優秀な横須賀修理施設」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-05

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