トランプ大統領「トルコにはF-35を売らないと伝えた」
トルコ企業の部品供給契約は2020年初めまで
米国に550~700億円の追加経費発生
16日、定例閣議の前にトランプ大統領は記者団に、「トルコにF-35を売却するオプションはなくなった」と語り、12日にトルコ政府がS-400受け入れ開始を発表して以来、初めて米国政府としての姿勢を明らかにしました
トランプ大統領は本件に関し、オバマ政権時代にトルコに米国製地対空ミサイルシステム・パトリオットを売らなかったことで、トルコはS-400をロシアから購入せざるを得なくなったと最近主張していましたが、トルコが自国軍需産業への技術情報開示を要求したことで話がまとまらなかったのが真実で、トランプ流の「強弁」の一種と理解しておきましょう
S-400とF-35の件はさておき、米トルコ同盟は引き続き重要だ・・・がトランプ大統領のスタンスのようで、対イランも見据えてこれ以上事を荒立てない雰囲気ですが、外交安全保障関係者のトルコへの不信感を払しょくすることは難しく、今後の両国関係は予断を許さないものなのでしょう
16日付Military.com記事によれば
●16日トランプ大統領は、「大変難しい状況だ」と述べつつ、トルコにF-35を売却するオプションはなくなったと語り、トルコがS-400受け入れ開始後、初めて米国政府として本件への態度を明らかにした
●また大統領は、「トルコに対しては、我々が推薦するものとは異なるミサイルシステムを買わざるを得なくなったことを受け、米国はトルコにF-35を売らない」と伝えたところだと語った
●更に大統領は、「色々な側面から議論され、色々と試みたが、大変残念だが、このような結果を見ることになる。トルコ側は購入したいだろうが、私はトルコの行為を弁護することはできない」と述べ、一方で「エルドワン大統領とは依然として良い関係を維持している」とも語った
●国防長官就任の承認を得るため上院軍事委員会に出席したエスパー前陸軍長官(前臨時国防長官)は、トルコによるS-400購入決断は誤った選択だと語った。この発言は、トルコがS-400を受領開始した後の、国防省関係者としての初めての言及だった
●前の国防省F-35計画室長Chris Bogdan退役中将は電話取材に対し、F-35関連の情報を保全するため、S-400とF-35の同国内での運用はあり得ない選択肢だと述べ、同氏が室長を務めていた2012年~17年までの間、外交や政治など、あらゆる手段を交えてS-400導入をやめさせようとしたと振り返り、今回の結果を残念だと表現した
●またBogdan退役中将は、F-35計画パートナー国が途中で抜けることについては、このような大規模な計画では避けられないことだと語り、カナダが政権交代でF-35導入に慎重な姿勢に変化しつつある点に言及した
●トルコはF-35パートナー国として、937種類の部品製造にかかわっており、サプライチェーンの再編過程で部品コスト上昇や需要を満たせない可能性があるが、Lord米国防省調達担当次官は、トルコ軍需産業との部品供給契約を終了する予定の2020年初めまでには、米国をサプライヤーを中心に徐々に代替企業に仕事を引き継いでもらうと語っていた
17日調達担当次官はコストについて
●17日、Ellen Lord調達担当次官は、2020年3月までにトルコから部品等製造を米国等の企業に移管するために、550~700億円の経費が発生すると述べた
●またトルコ軍需産業がF-35計画から除外されることにより、トルコ軍需産業は約1兆円のビジネス機会を失うことになるとも述べた
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トルコは次の戦闘機をどうするんでしょうか? F-35がダメであれば、FA-18だって容易ではないでしょうし、欧州のタイフーンやグリペンだって慎重になるでしょう。
ロシアから買うんでしょうか? エルドワン大統領の強引なやり方に、トルコ空軍幹部もさぞかしイライラしている事でしょう・・・
最初にも述べたように、対イランも見据えて、トランプ大統領はこれ以上事を荒立てない雰囲気ですが、米国の外交安全保障関係者のトルコへの不信感を払しょくすることは難しく、今後の両国関係は予断を許さないものなのでしょう
米トルコ関係
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09
「6月第1週に決断か」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-23
「トルコが米国内不統一を指摘」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-06-2
「もしトルコが抜けたら?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-21
「来年10月S-400がトルコ配備」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-27-1
「マティス長官がトルコF-35を擁護」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-24
「6月に1番機がトルコに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-15
「露製武器購入を見逃して」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28-1
「連接しないとの言い訳?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-30
カナダ首相がF-35から「足抜け」を狙う
「やり直し機種選定開始」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-03
「カナダが中古の豪州FA-18購入へ!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-10
「米加の航空機貿易戦争に英が参戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-16-1
「第2弾:米カナダ防衛貿易戦争」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-04
「痛快:カナダがF-35購入5年延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-23