2021年に艦艇防空用レーザーを米艦艇に搭載

不退転の決意で進軍する覚悟とか
まだまだ出力は不足していますが・・・
helios.jpg23日付Defense-Newsが、米海軍の水上艦艇作戦部長であるRon Boxall少将や関連のロッキード社幹部にインタビューを行い2021年に太平洋艦隊配属の駆逐艦Prebleに、対艦ミサイル迎撃用のレーザー兵器システムを搭載する予定だと報じています
対艦巡航ミサイルを迎撃するのに最低必要な500kw出力にははるかに及ばない60キロワットレベルからスタートのようですが、当該レーザーをセンサーとしても活用するためイージスシステムと連接し、現有の近接防空システムCIWS等を撤去し、電源確保等のため相当の船体改造を必要とするなど、「後戻りできない不退転の決意」で臨むと同少将は語っています
この艦艇防空用レーザーシステムは、中国やロシアが対艦ミサイルによる同時攻撃で米艦艇の防空システムを「飽和」させ、また防御用ミサイルを「弾切れ」に追い込んで無防備にすることの企図していることに対抗するもので、対処が迅速で弾切れの心配のないレーザーの特性を生かそうとするものです
厳密には所望の出力のレーザー兵器が装備できたとしても、連続発射にはエネルギー重点のため時間的間隔(finite amount of time) が必要であることから、従来の迎撃ミサイルも並行して使用しないと中露の飽和ミサイル攻撃には対応困難なようですが、大きな動きだと思いますのでご紹介しておきます
23日付Defense-News記事によれば
helios2.jpg●5月に行ったインタビューに対しRon Boxall海軍少将は、2021年にハワイ所属の駆逐艦Prebleに、艦艇防空用レーザー兵器システムHELIOS(High Energy Laser and Integrated Optical-dazzler with Surveillance system)を搭載する計画だと語った
●その際同少将は、南米を征服に赴いたスペインのコルテスが、艦隊の船を沈めて船員たちに不退転の決意を迫った逸話を引き合いに出し、従来のCIWS等の近接防空システムを撤去してこの事業に臨む決意を強調した
駆逐艦Prebleに搭載するロッキード製レーザーの出力は60kw(150kwまでの拡張性有)で、同社製のイージスシステムと融合し、イージス側にもレーザーをセンサーと捉えて得た情報をインプットする計画である
●これは、イージスの電波レーダーが近距離を不得意とするが、レーザーは近距離で監視追尾能力を発揮するからであるが、この密度の異なるデータ融合が大きな課題だと同少将は説明し、出力アップには現時点で注力していないと述べた
ロッキードのHELIOS担当部長は、今年3月に設計審査を終え、2020年中旬に艦艇への搭載を終えるよう今年年末には艦艇への搭載をニュージャージー州で開始すると説明した
●そして同部長は、このシステム搭載は単に装置をボルトで甲板に据え付けるものではなく、電源を艦艇に追加することなく実施する船体への融合作業である点を強調した
CSBAのBryan Clark研究員はこの計画の位置取りについて、米海軍はメガワット(1000kw)級のレーザーに向け進んでおり、500kw級が達成できれば超音速巡航ミサイルにも対処できるようになると説明してくれた
●また同研究員は、米海軍は更に超超音速兵器(hypersonic threats)に対してどこまでレーザーに期待すべきかを検討していると語ったが、狙いの規模の兵器開発搭載には電源確保等の課題は不可能ではないものだと述べた
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helios3.jpg米海軍のレーザー兵器研究開発は、試験艦Ponceに搭載しての水上の小型ボートや空中の小型無人機対処の試験である程度の成果をご紹介した記憶がありますが、イージスシステムの融合が一つの命題となっていることを学んだ次第です
CSBAのClark研究員の艦載レーザー防御兵器自体の実現可能性に関する見方は明るいですが、冒頭でもご紹介したように、中露のミサイル飽和攻撃への効力についての冷徹な「それだけでは不十分」との評価には謙虚にならねばなりません
今回の駆逐艦Prebleへの搭載については、イージスとの融合とレーザー防御兵器の交戦規程を含む運用ノウハウ蓄積が一つの狙いと想像いたします
それにしても、高度なインカやアンデス文明を滅亡させた侵略者コルテスを引用するRon Boxall海軍少将のセンスにはついていけません・・・
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