米軍PGM不足はやっぱり未解決で深刻

昨年末に作戦部長が目途が付いたと語っていたが・・・
年変動がある発注方を改革できるか
弾薬の「切りしろ」扱いを変えられるか
Roper5.jpg6日、米空軍省の調達担当次官であるWill Roper氏が記者団に対し、米空軍は中東での作戦で大量に消費しているPGM(精密誘導兵器) の穴埋め調達に懸命に取り組んでいるが、関連軍需産業の生産能力には限界があり、厳しい状態に置かれていると語りました
そしてその背景として、これまで予算編成時の道具として、予算枠が厳しい時の「切りしろ」、予算編成時に余白や隙間ができた際の「穴埋め」「隙間うめ」扱いを受け、年度年度の受注が安定しない弾薬とその製造を担う厳しい弾薬製造企業の窮状現状を訴えています
米空軍(米軍全体でも恐らく)のPGM在庫危機は、対ISIS作戦が激化、アフガンでのタリバン活発化に伴うPGM大量消費によって2015~16年頃から表面化し、国防省高官が「同盟国に提供する余裕はない」「米軍を当てにするな」と公言するようになりその深刻さが明らかになりました
JDAM.jpg軍隊に弾がなければ「張り子のトラ」で、他国に知られれば弱点をさらすようなものであり、米国はあくまで「当面の作戦に支障はない」、「必要な備蓄量は確保されている」との公式発言を続けていましたが、同時に折に触れ「弾薬増産体制を調整中」「必要な予算を確保」とも言い続けてきました
そして昨年12月5日、米空軍作戦部長が、「地域戦闘コマンド司令官にはPGMの使用を抑制してもらっていたが、何とか改善ができてきた」、「2017年から、関連軍需産業の協力を得てPGM生産量増強に取り組んできたが、前線への供給増や備蓄増に結び付くようになってきた」と改善の兆しをアピールしていましたが、あくまで「兆し」で問題の根が深いことが明らかになりました
7日付米空軍協会web記事によれば
●ペンタゴンで記者団に対しRoper次官は、米空軍が必要とするPGM製造企業の状況に懸念を示し、ISISに対し計7万発を消費している現状にも触れ、「製造能力に注目している」と述べた
JDAM-Empty.jpg●「我々は大量に使用されるPGM等の供給に関する大きな負担を負っている」、「多くの弾薬に関し、大規模調達が可能な体制を整える必要がある」と述べつつも、現状に関し「製造企業が製造可能な限定された数量しか入手することができない」と苦境を表現した
●先週、Roper次官の軍事補佐官であるArnold Bunch中将が、米空軍は対ISIS作戦で大量消費にされているPGM(JDAM bombs, Hellfire missiles, Advanced Precision Kill Weapon System rocket)製造企業にフル操業での増産を要請していると語ったところである
●一方でRoper次官は、2020年度予算案にどの程度の弾薬関連経費を計上する予定化については言及を避けた
●またRoper次官は、一般論として、空軍が80年代に行っていた「一部品2供給元」体制が好ましく、複数の部品や装備供給可能企業が競い合い、品質や価格において競争原理が働くような体制構築議論も歓迎するとしながらも、現状の調達規模では複数のサプライヤーを維持するには不十分であることも認めた
Hellfire2.jpg●そして同次官は弾薬の予算上での扱いについて自戒の念を込め、「弾薬購入予算は、他の装備品予算と予算枠との隙間を埋める役割の扱いを受け、主要装備を多く購入するときは弾薬が削られ、逆の場合は弾薬予算が増えるのが実態だった」と認めた
●しかしこれは製造企業側からすれば、発注が少なければ製造設備や人員を維持できないし、原材料調達単価も上昇する厳しい状況を生き抜くこと迫られ、気まぐれな増産要請に対応できる余裕など確保できない
●また企業が長期計画に基づく設備投資等を行うことも難しく、原材料の大量購入による単価削減も考えにくい・・・等と現状を訴えた
それでも同次官は向かうべき方向として>、「企業間の競争を促せる企業数の確保と、単一企業からの調達を避ける方向」を挙げ、そのため国防省や空軍として「毎年購入する弾薬量の平準化を図り、予算枠の穴埋め役にせず、企業側と5か年計画の視野で話ができるようにしたい」と述べ、「幾つかのアイディアもある」と言及した
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APKWS2.jpg「弾薬の備蓄量」は秘密中の秘密ででしょうから、具体的な数量について語れませんが、対リビア作戦をNATO欧州諸国に任せたときは、欧州諸国が「さほど攻撃目標がない短期作戦で弾薬不足に直面した」として、当時のゲーツ国防長官が酷評していました
米軍の弾薬不足がどの程度かは推測する根拠がありませんが、国防省が「同盟国に提供する余裕はない」「米軍を当てにするな」と公言するくらいですから、相当レベルと推測します。
そしてあくまで邪推ですが朝鮮半島で紛争が勃発しても、思う存分PGM精密誘導兵器を余裕をもって使用できる態勢にはないのでは・・・と邪推します。
米空軍と弾薬関連
「精密誘導爆弾の不足改善へ?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-09
「アフガン軽攻撃機がPGMを」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-31-2
「意味深:グアムの弾薬10%増」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-21
「米空軍が精密誘導兵器増産へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-24
「空軍長官代理の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-05
「精密誘導爆弾の不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-03
「米国の弾薬を当てにするな!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-21-1
ゲーツ長官がリビア作戦の欧州諸国を酷評
→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-12

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