年末年始のため、12月29日から1月6日の間の更新は、「忘れたころ(不定期)」になります。
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核抑止戦略の見直し必至か?
プーチンが3月に公言した新兵器が現実に!
12月26日、ロシアが超々音速兵器「アバンガルド」の発射試験に成功したと明らかにし、実験をモスクワの指揮所で視察したプーチン大統領は試験成功後、新型の核弾頭の開発を成功裏に終了し、「仮想敵が、現在あるいは将来、保有するミサイル防衛網でも攻略できない。大成功であり偉大なる勝利だ」と述べたうえで、2019年にはアヴァンガールトが戦略ロケット軍に実戦配備されるとも語りました
この「アバンガルド」は、ロシアが15年前に本格的に開発を始めた新型の核弾頭で、長さは5メートルほどで、翼を持ち、弾道ミサイルで打ち上げられ、上空で切り離されたあと水平に飛行し、敵のレーダーをよけながら攻撃する能力があるとされています。その速度は音速の20倍、マッハ20にも達することから「極超音速兵器」とも呼ばれ、アメリカのミサイル防衛網に対抗するためのロシア軍の切り札の一つとみられてきました。
実験で同兵器は、ロシア南西部にあるドムバロフスキー基地の地下サイロから発射されて約6200km先の極東カムチャッカ半島にあるクラ射爆場に着弾したとされています。
12月26日の発射映像
軍事ブロガーJSFさんの解説によれば
(3月16日と12月27日のヤフーニュースでの解説より)
●「アバンガルド」3月1日にプーチン大統領が一般教書演説で言及した長射程戦略兵器で、米ミサイル防衛網を突破できる画期的な能力を持つとされています。公開されている情報から極超音速ブーストグライド兵器と推定され、実戦配備されれば史上初となる全くの新型兵器です。
●これは弾道でも巡航ミサイルでもない「滑空ミサイル」という新カテゴリーの兵器です。ロケットで打ち上げて加速し、グライダーとして大気が薄く空気抵抗が低い高高度を飛行して、弾道ミサイルに近い高速性と長射程を持ちながら巡航ミサイルに近い機動が可能で、飛行経路の予想が困難で迎撃も困難という特徴を持ちます。
判明している事は以下の通りです。
・最大速度マッハ20(大陸間弾道ミサイルと同等)
・飛行中の機体表面温度は1600~2000℃
・射程は少なくとも5500km以上、最大で1万km超
・発射・加速にはロケット(弾道ミサイル)を用いる
・弾道飛行は行わず、滑空飛行を行う
●最大速度マッハ20はスクラムジェットの理論限界マッハ15を超えている為、アバンガルドには搭載していないと考えられます。これでアヴァンガールトは巡航ミサイルではなく滑空ミサイルであると推定できますが、速度が落ちてからエンジンを始動する可能性もあるので、現時点ではまだ議論があります。
●アヴァンガールトの滑空体には4つの方向舵が存在し、おそらくこれとスラスター噴射を組み合わせて機動を可能とします。ただしこのイメージ映像は機密保持のため実機とは異なる可能性が高く、実際にこのような装備なのかは現時点では確定した事は分かりません。
●アヴァンガールトは新技術の塊のような存在なので実機の写真や映像はごく一部に制限されており、今回公開された映像からは製造中の滑空体胴体部分の部品らしきものが映っているのみで、構造が類推できる箇所はありませんでした。(12月26日の発射映像でも不明)
米軍のアバンガルド対策
●極超音速滑空体は弾道飛行をせず大気の希薄な高高度を飛行するので、大気圏外を想定したGBIやSM-3では対処困難です。THAADならば当該高度を得意としますが、THAADは中距離BM対処を想定兵器なので、ICBM並みの速度のアバンガルド相手だと速度不足です。そこで米軍は2段式の改良型THAAD、「THAAD-ER」を提案しています。
●しかし高度問題に対応できても、弾道ミサイルと異なり飛翔中に経路変更可能なアバンガルドの迂回機動には対処不能です。また、遠距離迎撃は困難なままで、ある程度接近で迎撃する事になるので、米本土防衛には膨大な数のTHAAD-ERが必要になります。
●別の視点で、従来、米本土防衛用MDは北朝鮮やイランの弾道ミサイル対処を想定し、ロシアや中国の弾道ミサイルには対抗せず、核抑止で対応するとの基本的考え方があります
●背景には、現状の大国間での核抑止バランスをなるべく崩したくないとの考え方があります。米が今後もこの方針を維持するなら、露のアバンガルド対策は後回しになるでしょう。しかし方針を転換し、この新兵器への対策を始めた場合、従来の核抑止力のバランスは変わり始め、核軍縮とは逆の方向に突き進む可能性があります
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最近断片的にご紹介してきたように、米国は超々音速兵器への対応に動き始め、国防省高官の発言にも地上配備の新型レーダーや宇宙配備センサーの話がしばしば登場し、従来BMDR(弾道ミサイル防衛見直し)と呼ばれてきた政策文書が、弾道ミサイルとの限定を外し、MDR(ミサイル防衛見直し)に名称変更になったのは、この超超音速兵器を意識したものです
トランプ政権が誕生して2年が経過するのに、未だMDR発表が延び延びになっているのは、超超音速兵器への対応や資源配分をどうするかの議論取りまとめに難航ともいわれていましたが、間もなくとの話もちらほら・・・。国防費も5%カットの流れ次第のような気もしますが・・・
それにしても、米軍内で3軍がバラバラに取り組み、予算不足で尻すぼみ状態の超超音速兵器をロシアが配備とは・・・中国も近い将来追随するでしょうから・・・時代の変化を感じます
超超音速兵器の関連
「日本に探知追尾レーダー配備?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-24
「LRDRレーダー開発が順調」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-12-10
「グリフィン局長の発言」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-08-1
「米空軍が1千億円で」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-21-1
「同兵器は防御不可能」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-21-1
「ロシアが新型核兵器続々開発と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-1
「中国が超超音速兵器で優位」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-27-1
「米ミサイル防衛の目指すべき道」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12
「戦略国防次官にMD伝道者」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-1
「BMDRはMDRに変更し春発表予定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-24-1
「米ミサイル防衛庁の2017年予算」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-12