中国航空ショーでのJ-20を評価する

J-20 sea.jpg6日から開催された「Zhuhai air show:第13回中国国際航空宇宙博覧会」で、中国空軍の戦闘機が相次いてデモ飛行を行い、その様子をスラストベクター付きの中国国産エンジンや機体のステルス処理と絡めて7日付Defense-Newsが取り上げていますので、マニアの皆様向けには情報不足ですがご紹介いたします。
記事が取り上げているのは、中国初のステルス戦闘機?と言われる「J-20」と、イスラエルのラビ戦闘機の技術者を招いて中国国産機として開発したといわれる「J-10」戦闘機が、スラストベクター付き国産エンジンWS-10B3を初めてのテスト搭載した飛行で、J-20にこの国産エンジンが搭載される可能性を記事が探っています。
読者の皆さんであれば既にお感じでしょうが、米国の次世代制空機PCA検討では、制空機の脅威であるAAMやSAM能力が飛躍的に高まり、多少制空機側の機動性や旋回性能が高まっても脅威から逃れられない・・・との見積もりもあるようですから、何のための「スラストベクターか?」との根本的な疑問がありますが、中国軍需産業の状況を見る機会ですので取り上げます
7日付Defense-News記事によれば
J-20-1.jpg6日から11日まで広東省珠海で開催された同航空宇宙ショーで、J-10Bがスラストベクター付きの国産エンジンWS-10B3を搭載してデモ飛行を行い、その優れた機動性や低速での着陸を披露した
●特別なエンジンを搭載したこの機体が確認されたのは、今年初めにCAC工場で目撃されて以来である
●英国の専門家は、同エンジンを搭載したJ-10Bの機動性は、明らかに空力特性から得られるもの以上を示していた、と所見を述べている
●一方で同専門家は、大部分の西側空軍は既に、最新の格闘戦用のミサイルの機動性進歩を見据え、エンジンにスラストベクター機能を付加することによる重量増、機構の複雑化(整備性低下)、コストアップ等を総合的に勘案し、スラストベクター開発を終了していると付け加えた
しかしながら中国ではJ-20前方にあるカナード翼を補うため、スラストベクター付きエンジンを搭載するオプションがあるともいわれている。またカナード翼がJ-20にとって重要な前方からのステルス性を阻害するため、カナード翼を取り除くためにスラストベクターエンジンが必要だとの見方もある
●また同専門家は、現在のJ-20のエンジン(ロシア製AL-31)より、WS-10B3の方がステルス性が高そうだ、とも分析している
J-20 cere.jpg●J-20開発のチーフエンジニアは、(J-20への同エンジン搭載に関する)中国メディアからの質問に対し、はぐらかすように「まだ試してみてもないことが分かるはずがない」と述べるにとどまった
しかし実際には、同エンジン搭載のJ-20が既に飛行を行い、スラストベクター型の同エンジンでも試験を行っているとのうわさが広まっている
エンジン以外でJ-20が注目を集めたのは(高解像度写真で)、中国空軍が既に運用している低ペース生産モデルで、「急速な質の改善」が確認できたことである。例えば、以前と比較して、機体表面のステルス処理や機体全体の端末処理(mold-line)が進歩していることである
●ただ英国の専門家はこれに関しても、F-22やF-35レベルの電波反射率低減を確保するまでには、まだかなりの道のりがあると指摘している
●例えば、引き続き、機体に多くの外装アタッチメントが確認でき、また光学ターゲティングシステムやエンジンノズルもステルス性に配慮が見られないと評価している
●なお、J-20は今回も地上での機体展示はなく、4機が近傍の空軍基地から飛来して飛行姿を見せたのみであった
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中国製の兵器のすべてがそうではないでしょうが、J-20への評価は厳しいようです。
J-20groundgrew.jpgでも、しっかりと飛行でき、それなりのステルス性を持ち、対地攻撃用の長射程ミサイルを搭載できれば、十二分に脅威です。
2代前の航空自衛隊のトップ(戦闘機パイロット)が、数年前に、「次の戦闘機に求める性能等は?」と問われ、「スラストベクターなど・・」と答えて笑いものになったのは記憶に新しいところですが、そのころ西側諸国には既に、同機能を重要だと考えている人はいなかったということです。そんなレベルなんです・・・
これまでのJ-20経緯を簡単に整理すると
—2011年に初飛行
—2016年11月、Zhuhai航空ショーで初公開
—2017年7月、人民解放軍90周年記念日に軍事パレード初参加
—2017年11月、中国空軍演習「Red Sword 2017」で重要な任務を果たす
—2018年2月、中国空軍報道官が「戦闘任務に入った」発言
J-20関連の記事
「報道官が戦闘能力発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-17-1
「中国国防省が運用開始と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-30-1
「中国報道:J-20が運用開始?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-14
「大局を見誤るな:J-20初公開に思う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-02
米空軍の次世代制空機検討PCA
「秋には戦闘機ロードマップ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-22
「PCA検討状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-12
「次期制空機検討は2017年が山!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-12
「次世代制空機PCAの検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-30
「航続距離や搭載量が重要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-08
「CSBAの将来制空機レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-15-2
「NG社の第6世代機論点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-17
「F-35にアムラーム追加搭載検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-28 

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