17日、米空軍協会年次総会で米空軍長官が、半年かけて様々な将来分析を行った結果、2030年までには飛行隊数を25%増して386個にし、併せて必要な人員を4.5万人増強する必要があると明らかにしました。
また翌18日には空軍参謀総長が、各飛行隊は不十分な装備や基地環境に展開しても行動可能な体制、つまり派遣遠征部隊(expeditionary forces)の原点に回帰すべきだと訴えました。また基地防衛の重要性も強調し、「防御年間:the year of the defender」とすると宣言しました
空軍長官の発表には具体的な予算増加額が含まれておらず、空軍参謀総長も派遣展開部隊への原点回帰と飛行隊数増についての関係についてもあまり触れていないようですが、中国やロシアに対応するには現在より戦力増強せざるを得ず、かつ打たれ強い部隊にしなければならないとの考えが背景にあると推測します
特に飛行隊数の24%増要望をどのように議会や国防省に持ち出すのか、ホワイトハウスとの関係はどうなのか等、「?」がいっぱいなのですが、米海軍の全然具体化しない艦艇355隻体制のようなものだとも考えられます
17日Wilson空軍長官は
●現在の312個飛行隊を、2025年から30年までに、74個増やして386個にする。約25%増強する。またこの結果は最新の情勢分析や情報レポート、6か月に及ぶ多様なモデル分析やシミュレーション分析等を行た結果だ
●同総会の後の講演で人的戦力管理担当部長のBrian Kelly中将は、これら飛行隊増強に必要な人員は内部からは捻出できず、純増を要請すると語り、その数を少なくとも4.5万人だと説明した
●増強74個飛行隊の内訳は
・5個爆撃機飛行隊
・5個宇宙飛行隊
・14個空中給油機飛行隊
・7個特殊作戦部隊飛行隊
・9個救難飛行隊
・7個戦闘機飛行隊
・2個無人機飛行隊
・1個空輸飛行隊
・22個指揮統制とISR飛行隊
●長官の講演では、必要な予算額や航空機数については言及がなかった。また予備役や州軍との関係についても語らなかった
●ただ長官はこの増強の背景を、「the existence of evil, and new threats are emerging to which our generation must respond」と表現した
18日Goldfein空軍参謀総長は
●我々はかつての派遣展開軍のルーツから離れてしまっており、地域コマンド司令官の要望に応えるためとの理由で、また兵士に配慮し、十分に整った基地やインフラを前提とした部隊となってしまっている
●我々は基地から戦うことや攻撃下での戦いを知っているかもしれないが、敵攻撃により施設不十分な基地に分散せざるを得なかった場合や、十分な地上支援を受けられなくなった場合の戦いについてはどうだろうか
●米空軍は、施設不十分な基地や装備や物資が状態での展開運用に習熟しなければならない。その際は米本土と指揮統制面での連携が取れる必要がある
●これら変化は、空軍兵士の心の持ち方、装備品購入、演習や検閲の在り方、即応体制の考え方等、広範な分野に変化をもたらすもので、部隊は柔軟性と分割や増強受け入れ可能性を持たねばならない
●このような派遣展開を考える際のカギの一つが「多層的防御:defense in multiple layers」であり、この分野で世界一でなければならない。統合でどのように協力して進めるかも詰める必要がある
●組織の再構築を恐れてはならない。これは「将来性のある将来のための変化:seminal shift」であるし、これまでも空軍はこれを成し遂げてきた。空軍や米軍内だけのアイディアでなく、視野を広く持って対応しよう
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繰り返しになりますが、どのような展開に米空軍は持ち込もうとしているのでしょうか? 確かに国家安全保障戦略NSSや国家防衛戦略NDSでは、中国やロシアの脅威がこれまでになく強く訴えられているかもしれませんが、これだけの軍拡を訴える力となるでしょうか?
これだけの飛行隊増強が実現すれば、過去30年で最大規模、冷戦時のピークレベル(the most squadrons the Air Force has had in 30 years, since the peak of the Cold War)になるようです。
でも実際、中国の軍事力は旧ソ連の脅威を超えているかも・・・ですからねぇ・・・
そういえば、先日ご紹介したRANDの研究レポートは、空軍2トップを援護射撃するものだったんですね・・
でも、空中給油機や指揮統制&ISR機部隊の重要性を抑え、レスキューや特殊作戦機部隊を忘れていない辺りはプロの視点ですね! 当たり前か・・・
4つのシナリオで必要空軍力を分析
「8月末発表RANDレポート」
→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-09-02