ドイツが国防費増強プランを打ち出すも・・・

10年計画でGDP比を1.2から1.5へ・・・
連立与党内でも不協和音が既に・・・
G-Leyen.jpg5日付Defense-Newsは、ドイツ政府が米国から強く迫られている国防費増加要求に対応し攻防増強の10年計画を明らかにしたと報じ、5年後には国防費を現在のGDP比1.2%から1.5%まで引き上げる野心的なものだと表現しています。←写真左はドイツの女性国防大臣
米国からの強い圧力を受け、NATOは2014年の首脳会議で加盟国の国防費をGDP比2%にまで増加すべきとの目標を採択しましたが、冷戦終了後に東西統一経費捻出もあり極端な軍縮を行ったドイツは1%程度の国防費で他国から非難を浴びてきたところです
軍事メディアが「野心的な」と表現していますが、その意味するところは、首相や国防相など政権幹部の希望を言葉にしただけで、野党だけでなく連立政権を組む他政党からも「なんの裏付けもない」「希望リスト」と揶揄される有様で、その実現性に早くも暗雲が垂れ込めています
まず冷戦後のドイツ軍の状況
東西ドイツ統一で1990年には約80万人のドイツ軍を保有。しかし軍縮の流れで2010年までには約24万人体制(軍人18.5万人、文民5.6万人)にまで縮小
●更に2011年当時の政権は追加縮小を打ち出し、軍人6.5万人まで削減し、戦車や戦闘機を3割、攻撃ヘリは80機から40機へ削減する計画までまとめた。
G-Leyen2.jpg●しかし、その後の情勢変化や米国の要請(圧力)もあり、2016年には軍人と文民あわせて約1.8万人の増強計画を打ち出しました。
ただ少子化や人々の軍隊離れから、人集めは難航し、2014年には給料・諸手当の改善や勤務時間の融通性向上などを含む人材確保策を打ち出し、2015年には今後5年間は国防費5%増を約束するなどしているが、思うようには進んでいない
●また人員だけでなく、国防費を一度大幅に削減した付けは装備品維持に影を落とし、2017年10月には6隻保有の独国産潜水艦が全艦稼働不能となる情けない事態に
5日付Defense-News記事によれば独政府は
●Ursula von der Leyen国防相は、「capability profile」と呼ぶ10年計画で、包括的で大規模な軍備近代化コンセプトを提示した。
●計画によれば、中間の2024年には国防費のGDP比が1.5%に達し、年7.5兆円を超える規模となる。なお現在は約5.4兆円である
Merkel.jpg●国防相は、この計画実行で長年予算削減と装備や人員削減に苦しんできた独軍を、自国防衛と海外任務に十分対応可能な能力レベルに向かわせると説明した
●国防省配布の計画サマリーによれば、計画は2つの優先事項を設けている。一つは兵士の装備改善で、もう一つは独軍をサイバー時代に対応可能な速度を与えることである
●一方で、政権指導層以外はこの計画に懐疑的で、連立政権を組む社会民主党は財務省を出しているが、以前国防相が提出した必要な国防費増額を狙った予算案を拒絶した経緯がある
●今後、この計画を具現化する予算案が議会で審議されるが、早くも閣内の社会民主党は「希望リストに過ぎない」と必要な細部予算内訳を政府に要求しており、別の同党有力議員もこの計画が政府の「debt-neutral budgets」方針に反すると不快感を示し、議会に相談なく発表されたことを批判している
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trump7.jpgドイツをはじめ多くの欧州諸国は、多かれ少なかれ、国防能力は一度緩めてしまうと取り返すのが極めて難しいとの反面教師ですが、ドイツは欧州の中核国にして対ロシアの西側中軸国ですから、その変化に期待したいものです
しかし難しい政権運営と経済情勢の中、それほど画期的な展開が期待できるとも思えずドイツの戦闘機選定への米国の関与など変な噂が漂う米独関係の今後と合わせ、暗雲が忍び寄るドイツ情勢でした
ドイツ軍の苦悩関連
「独戦闘機選定に米圧力?」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28
「独仏中心に欧州連合で第6世代機開発」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-07-2
「独潜水艦が全艦停止」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-22
「美人大臣の増強計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-12
「独と蘭が連合部隊創設へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-05
「今後5年間国防費6%増へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-21-1
「ドイツ軍の人材確保策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-09-1
「2011年時には大軍縮計画」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-30

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