グリーンランドに中国企業進出狙いで情勢複雑化

ちょっと複雑ながら、世界の縮図か・・・
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北極圏進出にグリーンランドを狙う中国
米国の重要軍事拠点グリーンランド
旧植民国デンマークと独立目指す自治領グリーンランドの対立
トランプが欧州に関税で欧州住民の米国離れ
欧州の米国離れを促す中国の情報戦
Greenland4.jpg7日付Defense-Newsが、Atlantic Council経費持ちのデンマーク取材記事を掲載しトランプ大統領の西側諸国への強硬な姿勢で同盟関係が揺らぐ中、中国がその隙間を見逃さず、経済的利益をちらつかせて影響力や勢力圏拡大を狙う事例を取り上げています
それにしても中国は巧みです。大戦略に基づき、長期視点でチャンスの到来を粘り強く待ち、好機と見るや確実に新たな足場を確保して前進する・・・が徹底されています。
恐ろしいですし、トランプが貿易分野で同盟国に難癖をつける次のターゲットは日本の様ですので、日本も「他山の石」として、グリーンランドの空港建設への中国企業進出事案をご覧ください
言葉で表現するとちょっと複雑になるので、冒頭の5項目でストーリーを予想・想像いただいた上で、お読み頂ければ・・・と思います。
北極圏進出を狙う中国
Greenland3.jpg●勢力圏の世界拡大を狙う中国は、欧州の経済危機で値下がりした鉱山やインフラや利権の獲得を着実に進めており、欧州の港の貨物スペースの10%を既に確保している。
2016年、かつて米軍基地だったグリーンランドの土地の入札に中国企業が参加する事例(デンマークが阻止した)も確認されており、関係国は短期的視点での経済的利益を求める地元社会と、長期的な安全保障懸念の間で難しい対応を迫られている
●今回グリーンランドが辺境地活性化のため3つの飛行場建設を構想(約600億円のプロジェクト)したところ、かつて世界銀行がブラックリストに入れた中国企業が名乗りを上げ、旧植民国デンマークや米国の懸念にもかかわらず、グリーンランド自治政府は最終候補5企業の中に中国企業を残すことに固執し、比較検討が行われている
グリーンランドは北極圏航路の開発の中で重要な拠点となりえ、また中国からの投資を受け入れることで、グリーンランドが中国政府の影響を受ける可能性も含め懸念が広がっている。
米国の重要軍事拠点グリーンランド
Greenland2.jpg●グリーンランドには、米軍のミサイル警報用レーダー基地や宇宙監視用レーダー、宇宙アセットの指揮統制施設、そしてこれら施設を支える3000m級の滑走路がある
●また港湾施設として、世界最北の水深の深い港を米軍が運用しており、まさしく北極圏活動の拠点としてグリーンランドは重要な位置づけにある
旧植民国デンマークと独立目指す自治領グリーンランドの対立
長くデンマークの植民地だったグリーンランドだが、1975年にグリーンランドに大きな自治権を認める法律が成立し、それ以降、グリーンランド内では独立を求める機運が高まっている
●大きな自治権獲得により、経済的な判断面でグリーンランドが権利を回復した後も、安全保障上の判断はデンマークが行う切り分けになっているが、経済と安全保障問題の切り分けはあいまいで、しばしばデンマークとの論争になっている
Greenland.jpg今回の中国企業参入に関しては、米国との関係を重視するデンマークは反対だが、経済的な面から中国企業に魅力を感じるグリーンランド自治政府との間に意見の相違があり、難しい問題となっている
デンマークは対立を表面化させることでグリーンランドの独立派を刺激したくなく、水面下で中国企業排除を要請している模様も、選定の最終段階の今になっても中国企業が含まれてる。ちなみに他の4企業はデンマーク2企業、オランダとカナダが各1企業である
トランプが欧州に関税で欧州住民の米国離れ
中国企業を排除するため、デンマークはグリーンランドに建設資金の援助を申し入れているとも伝えられているが、トランプ大統領が欧州に対する貿易関税で制裁措置に出る中、米国に味方するためにデンマークが税金を支出して動くべきなのか・・・との意見も出る事態に
●デンマークやグリーンランドに限らず、米国と欧州の関係が悪化する中、中国がその隙間を狙う余地が拡大している
欧州の米国離れを促す中国の情報戦
●グリーンランド議会では、10月末までに空港建設に関する法案の審議が数回計画されているが、デンマークの関係者は中国がグリーンランド内で、反デンマーク世論を形成するための情報戦(Chinese disinformation campaigns)を行うと予期しており警戒している
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記事本文にはより詳細な経緯や中国の北極圏や欧州への進出を紹介していますので、ご興味のある方はぜひ原文をあたってください。
trump5.jpg国際関係は微妙で繊細なバランスで成り立っており、変化は避けられないものの、トランプのような感情に任せたやり方では、中国やロシアの思うつぼです・・・
それにしても・・・周りを見渡せば、似たような事例が日本や極東やアジアでも多数見つかるのでは・・・これから起こりうるのでは・・・と心配になります。本当に心配です
中国の大戦略を考える記事
「英国防相:中国の戦略に学べ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-13
「中国の軍事力レポート2018」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-18
過去の「中国の軍事力」レポート関連記事
「2016年版」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-15
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1
過去の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1
4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22
6回:PLA活動範囲拡大→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-09
7回:中台関係→サボって取り上げてません
8回:米中関係→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03-2

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