PEDの時代ではない、SIASに向かう
2日、米空軍情報部長のVeraLinn Jamieson中将らが空軍協会ミッチェル研究所で会見し、非公開の米空軍ISRロードマップ「Next Generation ISR Dominance Flight Plan」が空軍長官や参謀総長の承認を得たと語り、2020-2030年を対象としたものだと説明しつつ、技術や脅威の変化により柔軟に変化しうるものとも説明しました
会見では様々な視点から今回の「ISR Flight Plan」検討の背景が語られており、秘密の部分もあり断定的な話はできませんが、根本には18年間続けた来た対テロ戦争に集中しすぎているのではないか、本格的な戦いに通用しないのではないか、公開情報やSNS上の情報活用をどうする、老朽装備の将来をどうする、商用ベース情報の活用法は・・・等の問題意識が背景にあるような気がしました
またより個別な話題として、大量に米空軍が保有するMQ-9やRQ-4の将来や後継、U-2の今後について記者団から質問が相次いだようですが、これについては今後検討するとして言及を避けており、目の前の予算状況の厳しさも伺わせています
断片的な会見の様子ですが、「Next Generation ISR Dominance Flight Plan」の方向性を把握するためご紹介しておきます
2日付米空軍協会web記事によれば
●同中将の会見から、非公開のISRロードマップが、商用衛星を有効に活用して最新で多様な角度からの画像情報を迅速に入手する必要性や、センサーを搭載するプラットフォームに超超音速飛行や逆の超低速長期在空能力の両方を求める事、更には「群れ技術」の必要性を求めていることが明らかになった
●また、人工知能やディープラーニング等のキーワードで語られる「machine intelligence」や、公開情報をビックデータ技術で処理して活用することや、SNS上の情報を処理して信頼できる主要な情報源として活用する必要性も主張している
●長期間使用している航空ISRセンサーについて情報部長は、E-8 JSTARSの退役について議会の理解が徐々に進んでいると述べ、MQ-9の後継についての質問については、同機が直面する大国との対峙の脅威をNSSやNDSを引用して語るにとどめた
●一方で、現在その稼働率低下が問題視されているRC-135シリーズの今後については、「現在このような写真、電磁波、テレメトリー、放射能など単一センサー任務に特化したアセットは下降気味な状態だが、これら航空アセットをreverseさせる」と表現した
●また、最新の情報技術や前述の「machine intelligence」が急速に発達する中、従来のPED(processing, exploitation, and dissemination of intelligence)との考え方は既に死に体であり、今後はSIAS(sense, identify, attribute, share)との考え方で取り組んでいくと表明した
●将来は、PEDのプロセスのPE部分をセンサー自身が担い、Dまでもこなすことになり、人間が情報の解釈や意思決定に専念できるようにすべきとの考え方を示した
●更に情報部長は、米空軍は「publicly-available media」情報への姿勢を改め、スマホなどを通じたSNS上で流通するデータを最新技術で処理して活用する方向に舵を切る
●具体的なスケジュールについて言及しなかったが、AI技術については国防省レベルで既に取り組みが始まっており、また情報インフラの基準を他機関や軍需産業と両立可能なものとし、「commercial standards」を空軍の基準とする
/////////////////////////////////////////////////////////
まぁ・・・いずれも先立つものがなければ実現できないもので、その先行きは油断を許しませんが、米空軍の危機感や脅威感を感じていただければ幸いです
この手の各種「Flight Plan」はしばしば発表されますが、その効力や影響力をあまり感じたことはありません・・・背景に流れているのかもしれませんが・・・
米空軍ISR関連の記事
「情報部長が中露のAI脅威を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-28
「RC-135シリーズがピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-07-08-1
「ISR無人機の急増」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-21
「無人機要員の削減を」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-25