19日、米会計検査院GAOが監査レポートを発表し、米空軍がF-22を領空保全任務や海外への「Show of Force」任務に活用していることにより、機体の持つ優れた能力やステルス性を発揮する訓練が不十分で、結果として税金で購入したF-22がその能力を発揮する体制になっていないと指摘しました
米空軍はこの指摘を受け、現在189機保有するF-22ステルス戦闘機部隊の組織や体制や配備の再検討を始めるようですが、軍隊の装備品運用要領にまで「口を出す」米国の会計検査院(GAO:Government Accountability Office)の監査能力の高さとその影響力の大きさに改めて驚かされます
素直にGAOの指摘を認めるあたりも米空軍の懐の深さを感じさせますが、不足戦力の振り回しを考え、世界での米軍の存在感をアピールするため苦心した結果が現在の使用法でしょうから、そう簡単に解決できるとも思えません。米空軍はどうするのでしょうか?
20日付米空軍協会web記事によれば
●GAOの報告書は、「規模の小さなF-22部隊を保有維持する米空軍の組織は、189機を最大限に有効活用する体制になっていない」と指摘し、「F-22稼働率が維持整備の問題や組織編成のために制約を受けている」と問題視している
●そして、F-22操縦者が航空優勢確保任務に必要な年間の最低飛行訓練時間を満たしておらず、F-22の能力を十分に活用しない演習や海外展開参加により、操縦者の訓練機会が奪われているとも指摘した
●GAOは訓練不足になる事例として、F-22が友好国等に「partnership building exercises」に派遣される場合、F-22のステルス性や優れた能力を十分発揮する訓練環境が与えられることは少なく、実際に戦闘で求められる能力を鍛えることができないとGAOは指摘している
●また、F-22がアラスカやハワイで領空保全任務のために緊急発進可能体制を維持しているが、この任務のために他の目的で使用できなくなっている。更にハワイの基地所属の操縦者によれば、訓練で敵役を担う仮説的部隊が活用できないため、十分な訓練ができないと訴えている
●F-22の性能等を考えれば、現在のような組織、配置、体制ではその能力を十分に発揮する準備ができないとGAOは指摘した
●米国防省はGAOの指摘に同意し、米空軍が指摘事項への対応を検討し始めている。検討の中には、領空保全任務を他の航空機に担わせる案も含まれているようだ
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記事を書いているうちに、もしかしたら、国防省や米空軍関係者が、F-22をハワイやアラスカから移動させ、欧州や米本土に配備したいために「GAOに指摘させた」のではないか・・・との疑惑が頭に浮かびました。
最近は米陸軍で、アジア太平洋より(慣れ親しんだ昔かららの経験や教訓が生かせる)東欧重視の方向にあるようですし、厳しい環境では兵士が退役してしまう恐れがあるので、アジアから遠ざかりたい本音もあるようですし・・・
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