トルコを排除すれば、F-35部品等調達が大混乱に・・・
23日付Defense-Newsは、2019年度予算案を審議している議会に対し、マティス国防長官が書簡を送り、ロシア製SAM購入の動きや米国人牧師の拉致関連で米国との関係が悪化しているトルコについて、いろいろ問題はあるが、共同開発国であるトルコをF-35計画から排除すると部品調達等で大きな問題となると訴えています。
マティス長官は4月末にも、ロシアから武器購入を図る同盟国等に制裁を課すことは、長期的な視点で見れば米国の国益に反すると、「ソフトな言いぶり」でトルコや東欧諸国やインドへの対応に慎重さを議会に求めたことがありますが、今回の訴えは切実です
とは言っても、米国に反抗的な態度で接し、一方でロシアやイランと親密な関係を構築しつつあるトルコのエルドワン政権に、このままF-35を100機も売却し、部品製造を任していいのか???との議会の疑問も当然であり、非常に難しい共同開発国(部品製造や維持整備も分担)トルコの扱いです
23日付Defense-News記事によれば
●マティス長官は書簡で、トルコへのF-35売却を中止し、共同開発国であるトルコをF-35計画から排除することは、国際的な「supply chain disruption:部品供給網の混乱」を招くことになると訴えた
●そして、トルコのF-35計画からの排除に反対すると明確に述べ、2002年以降に1400億円をF-35計画に投資し、100機を購入予定である共同開発国トルコの擁護を訴えている
●具体的に国防長官は、トルコ関連のサプライチェーンが混乱すれば、F-35生産に穴が開き、50-75機の機体製造に遅れが生じ、部品調達の正常化に1.5年から2年を要すると説明した
●現在米上院予算小委員会では、ロシア製SAM購入の動きや米国人牧師の拉致関連で、トルコへのF-35売却を遅らせるべきとの法案が審議されているが、トルコ側はこの法案が成立すれば米国に制裁を行うと警告している
●また米上院の外交委員会でも、米国民のトルコによる不法な拘束に対する制裁として、国際的な金融機関からトルコへの資金貸付を制限する法案が検討されており、23日の就任の審議される見込みである
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既にトルコ軍には1機のF-35が引き渡され、米国内の米空軍基地でトルコ人操縦者の養成訓練に使用されていますが、極めて機微な問題となりました・・・
しかし、安全保障上のリスクが相当程度あることが明らかでも、複雑化流動化の中にある中東で、トルコを切ることのリスクをマティス長官は考えているのでしょうか・・・
そういえば最近のとある論説で、マティス長官の国防長官辞任の時が迫っているが、マティス氏はイランとの軍事紛争だけは阻止して政権を去りたいと考えており、最後の力を振り絞っている・・・との話を見ました。その一環なんでしょうか???
トルコの防空ミサイル購入問題
「6月に1番機がトルコに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-15
「露製武器購入を見逃して」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-04-28-1
「連接しないとの言い訳?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-30
「トルコ大統領が言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-14
「ロシア製S-400購入の動き」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-23
「SAM選定で露に最接近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12
「中国製決定を破棄」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-16
「トルコ大統領訪中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-30-2
「NATOと連接しない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-20