パイロットのポストは減らさずに・・・
18日、米空軍は飛行部隊の指揮系統を変更する「試行」を開始すると発表し、典型的な戦闘機航空団(Wing)において、航空団副司令官や群司令官(Group)をすっ飛ばし、飛行隊長(Squadron)が直接航空団司令官に直属するシステムでの運用を開始しました
通常の戦闘機航空団司令官には、すぐ下に副司令官が存在し、更に3つの群(飛行、機体整備、基地運営)がぶら下がり、各群の下に飛行隊など「Squadron」が置かれています。
米空軍は、Goldfein参謀総長が就任直後から、米空軍が将来に備える原動力だと主張する「Squadron」の活性化を旗印に掲げており、「Squadron」に革新推進予算を直接配分したり、付加業務の削減などに取り組んでいますが、そんな活性化試みの一環が、今回の「指揮系統すっ飛ばし試行」です。
指揮ルートの副司令官と群司令官をすっ飛ばす狙いは、前線部隊の意見の迅速な反映と意思決定がメインですが、他にも整備部門を各飛行隊ごとに分割したり、飛行隊の作戦面での役割を強化したり、航空団に所属する人数を替変えないで、かなり人の任務や配置を見直しているようです
今年5月から2年間試行するそうですが、相当に組織の抵抗もありそうですから、現参謀総長が在任のうちに決断しないと実現しないでしょうねぇ・・・・
18日付Military.com記事によれば
●試行は、空軍戦闘コマンド司令官Holmes大将の主導監督下で行われ、アイダホ州Mountain Home空軍基地の第366戦闘機航空団で行われる。
●Holmes大将は、「よりフラットな組織にして意思決定を素早くし、権限を委譲してSquadron指揮官の力を強化し、Squadronの力を増進し、より中核任務に集中できるようすることを狙っている」と説明している
●すっ飛ばされることになる副司令官と群司令官は、航空団司令官の意思決定をアシストし、またsquadronが活動するにあたっての関係組織との諸問題解決をサポートすると共に、squadronの運用状況を評価する
●また航空団司令部には、「Air Staff」との組織運営、訓練管理、装備調達導入に関する業務を行うランクの高いスタッフを配置することになる。空軍司令部や統合参謀本部の形態を模した形で、現場から関連業務を吸い上げる
●同航空団司令官Joseph Kunkel大佐は、「この試行はsquadronを活性化させて前線任務に集中させ、管理業務を航空団司令部スタッフに移管するものである」、「意思決定権限や責任を前線部隊に委譲し、将来の課題への対処に必要な体制を目指すものだ」と説明している
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米空軍にとっても、また世界の空軍部隊にとっても代表的な空軍組織である戦闘機航空団ですから、米国だけでなく、世界中の空軍で、その組織の編成や任務分担について議論されてきたはずです。
その結果として、少なくともベトナム戦争以降の50年以上変化がないのが世界の戦闘機航空団ですから、それを変えるのは大変です。
軍人は自分の経験の範囲内で生きるのが好きですから、指揮官になって部下を持つと基本的に自分の知識の中で価値判断し、それ以上の変化を好みません
変化が必要だと認識させるには、環境の変化を「腹落ちさせる」事が必要ですが、パイロット確保にパイロットにやさしくし、海外訓練派遣も精査して・・・の雰囲気の下、どこまでこの変化の側面が理解されるでしょうか・・・お手並み拝見です
米空軍参謀総長の考え方
「3つの重視事項」[→]http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-13
「迅速にピクチャー共有を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-21
「新空軍参謀総長をご紹介」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-27