世界中に存在する280機のうち半分が飛行不可能
2月28日、米国防省F-35計画室長Mat Winter海軍中将が記者団と懇談し、米軍及び世界各国が受領している約280機のF-35のうち、飛行可能状態なのは51%の機体に過ぎないと語り、特に初期に製造された機体にハードとソフト両面で不具合が多発していると語りました
また、航空機整備体制の革新として、鳴り物入りで導入された自動兵站情報システムALISがうまく動かず、自動診断で故障警報を乱発し、不要な部品の発注を繰り返している混乱ぶりも明らかにしています
開発と製造を同時並行で進めるという、海外輸出振興と国内反対派対策のため無理やり行った無茶な施策の結果が、この惨状を招いたのは明白です。
いずれの問題についても、解消する方向で手を打ちつつあると同中将は語っていますが、外部の有識者や専門家が以前から予測していた問題が次々と現実となる「負の優等生F-35」ぶりは健在です
2日付Mmilitary.com記事によれば
●Mat Winter室長は記者団に、初期のロット2からロット4で製造したF-35の稼働率が最も悪く40~50%で、もっとも最近のロットで現在も製造が続いているロット9と10の稼働率は70~75%だと述べた
●稼働率が低くなっている問題の背景には、機体の不具合を自動診断して部品の調達等を自動処理する自動兵站情報システムALISのトラブルがあり、問題のない部品を故障と診断する「false positives」がかなり発生し、部品の誤発注が続いている
●同室長は良いニュースとして、ALISの最新バージョンソフト3.0は「false positives」問題をほぼ除去可能で、初期型F-35のトラブルについても関係者が信頼性を上げるべく取り組んでいると説明した
●また部品の調達を円滑にし、整備員の技量を向上させ、整備維持システムや工具を適切にし、サプライチェーンや部品供給基盤を整えていくとも説明した
●更に、初期型100機に対するハードとソフト両面の改修事業が開始され、ソフトでは「3F」の搭載も進められると説明し、「機体が整い、ALISがバージョンアップされ、修理部品が必要数揃い、整備員の能力が向上すれば、全体のコストを下げることができる」と語った
●F-35の維持運用経費の高騰問題についても言及した同中将は、現在の維持コストでは今後280機から2021年末の800機に増えた段階で支えることができないのが部隊の現状であると認め、「全ての手段や手法を駆使して維持可能なコストに引き下げたい」と説明した
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過去に他の機種で前例のない増産を計画しているため、部品の供給が追い付かなくなり、維持整備費や高騰して稼働率が下がり、ますます新規購入意欲が低下して単価が上昇するとの「負のスパイラル」を何度も警告してきましたが、その通りの「坂道転げ落ち」現象が現実のものとなっています。
Winter室長のような明るい将来像は5年前から延々と語られていますが、手戻り改修経費が大きな問題となり、維持経費が高止まりする現状に具体的な改善方向は見えていません
輸送艦「いずも」にF-35Bを搭載するとか検討するとかいう前に、もっとしっかり足元を確認し、地に足の着いた議論をすべきです!
今も変わらぬ問題の本質
「F-35の主要な問題や課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
F-35維持費問題を内外が指摘
「F-35維持費負担は不可能」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-02-04-1
「GAOがF-35維持費に警告」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-25
「再度警告:開発と製造の同時並行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-10