米軍即応態勢:影の課題2つ

Selva-CSIS.jpg1月末、米軍No2である統合参謀本部副議長Paul Selva空軍大将が記者団と懇談し、20年近く継続する実戦と海外派遣の繰り返しの中で、米軍部隊の即応体制低下が問題視され、予算不足などの課題が話題となる中、部隊の足元に兵士の即応体制をむしばむ問題があることが明らかになってきたと吐露しています
米国防省や米軍幹部が口々に、強制削減法による暫定予算体制が装備品の維持整備や更新、更に部隊訓練を阻害していると訴え続けている中、実戦派遣に必要な健康管理面や身体能力面での基準を満たせない兵士が増加していることが、小さくない課題だと明らかにするのは恥ずかしいことだと思いますが、これが現実の様です
先進国の軍隊に同じような傾向が見られるのでは・・・と気になる部分もあり、軍隊の現実を垣間見る視点としてご紹介します
1日付米空軍協会web記事によれば
airman.jpg●Selva副議長はワシントンDCで記者団に対し、部隊の即応体制を阻害する「2つの鍵となる課題」として、兵士を取り巻く健康管理行政面での課題と、兵士の体力面での課題を説明した
●そして同大将は、「米軍は兵士レベルに注目する即応態勢検証を開始し、個々の兵士の問題に行き当たる興味深い状況を目にすることとなった」と表現した
●兵士の即応体制を阻害する第1の要因として、兵士が即応態勢に求められる健康チェックを通過できない事例が増えている点がある。最も大きいのは歯科検診を通過できないことや派遣に必要な予防接種を受けられていないケースである
●様々な理由で基地内から歯科医がいなくなり、基地外の契約歯科医に検診を依頼すると、治療や検診がスケジュール通り進めることが困難となり、所定の基準も満たすことができない兵士が増加しているのである。
●また予防接種で言えば14種類の予防接種を求められている例があるが、これに加えて航空機登場要員の多様な項目にわたる定期健康診断への対応など、極めて手間のかかる業務が滞っている実態が部隊で生じている
Selva brok.jpg第2の要因は各兵士の健康管理・体調管理レベルの問題(physical fitness)である。具体的な数字を把握していないが、確実に身体検査を通過できない兵士が増えている
●典型的な例は、体重と身長の関係である。わかりやすく言えば太りすぎで派遣基準を満たせない兵士が全軍で明らかに増加し、部隊としての即応体制に悪影響を与えているのだ
●これらの問題についてSelva副議長は、「前線部隊レベルのリーダーシップの課題であるが、組織としての取り組みも影響している」、「健康管理に必要な医療機関や設備に問題があれば、国防省として前線部隊指揮官だけに責任を負わせるわけにはいかない」と語っている
●しかし健康管理・体調管理レベルの問題(physical fitness)は部隊レベルで指導監督すべき問題である。部隊指揮官や中堅および上級下士官が指導すべき課題である。前線指揮官が「基準が決められており、これをクリアしなければならないと部隊の先頭に立って改善すべき課題である」というべきである
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Wiltsie4.jpg任務の増大や維持整備費不足から、米海軍のFA-18の実質稼働機が1/3程度しかないとお伝えしたことがありましたが、Selva副議長が明らかにした兵士レベルの問題が、どの程度悪影響を与えているのか気になるところです
基地内から歯科医が居なくなるのは、基地外で開業したほうが収入が良くなるからでしょうし、予防接種が大変なのは、派遣される地域がそれだけ辺鄙な場所に拡大しているからでしょう
しかし「肥満」に代表される個人レベルの課題は、社会全体の縮図ですからねぇ・・・。高級幹部も含め、肥満や体力チェックを通過できない兵士の給料を下げるとか、昇任審査に反映させるとか、荒療治が必要なのかもしれませんねぇ・・・
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