米国の国家安全保障戦略を概観する

NSS.jpg19日、トランプ大統領がDCロナルド・レーガン・ビルで演説し、「国家安全保障戦略NSS」を発表しました。
政権交代時に恒例の国家戦略発表ですが、オバマ大統領は就任後16か月後に発表されましたから、1年以内の発表はトランプ大統領の強い思い入れがあってのことかもしれません。
国家安全保障戦略:National Security Strategy」は、アメリカの政権が定期的に作成し議会に提出する文書で、国の安全保障上の課題を指摘したうえで、政権としての指針を示しもので、外交・安全保障政策の基礎となるものです。
トランプ政権は今後「国家安全保障戦略」に基づき、来年1月に「国家防衛戦略NDS」を、来年2月に「核体制の見直しNPR」や「弾道ミサイル防衛の見直しBMDR」といった個別戦略文書を発表する予定です。
一番平易なNHKの19日付webニュースより
trump5.jpg●トランプ大統領は同戦略発表演説で、「アメリカ第1主義」で強いアメリカを追求するとしたうえで、これに挑む競合勢力として中国とロシアを名指しし、政治、経済、軍事の面でアメリカの優位を確保していく方針を示した。
●また軍事力を増強するとともに、経済面の問題も安全保障上の課題と位置づけ、貿易不均衡の是正などに取り組み、政治、経済、軍事の面でアメリカの優位を確保していく方針を明らかにした
外交・軍事戦略の指針として4つの柱を示し、第1の柱、「国民と国土の防衛」では、テロリストの流入や犯罪組織による麻薬の密輸などに対抗するため、国境管理や移民制度改革を進める方針を示した。トピック的には、北朝鮮の生物化学兵器開発の危険性も指摘した点が注目される
Trump cyber.jpg第2の柱、「アメリカの繁栄の促進」では、経済問題を安保上の課題に位置づけ、規制緩和や税制改革により国内経済を活性化し、貿易不均衡の是正と自由で公正な経済関係の構築に向け、各国と2国間の交渉を通じて貿易や投資の合意を形成していく等とした。
●そして、「中国などの競合勢力がアメリカの知的財産や技術などを盗んでいる」、「違反や不正行為、経済的侵略を米国はこれ以上見て見ぬふりはしない」と表現した
第3の柱、「力による平和の維持」では、中露を米の価値観と利益の対局にある「修正主義勢力」だと厳しく批判し、中国には都合のいいように秩序の再構築を図っているとしたうえで、軍事力の増強に強い警戒感を示し、露には米の影響力を弱めようとしていると指摘し、米の優位性を確保するため、軍事力の近代化や能力の強化、即応力の向上を図ると宣言した
●更に同盟国に対しては、共通の脅威への対応でより大きな責任を負うことを期待すると強調した
trump2.jpg第4の柱、「アメリカの影響力の拡大」では、米の繁栄を守るため国際的な影響力を強化し続ける必要性を指摘した。そして中露は開発途上国への支援を影響力の拡大に利用していると指摘し、米国も開発支援などが米企業にとっての機会拡大につなげる必要性を主張した
●各地位ごとに言及した部分でアジア太平洋地域に関しては、「インド太平洋地域」と位置づけ、中国による南シナ海軍事拠点化が地域の安定を損ねていると批判し、同盟国や友好国との関係を深め、航海の自由への関与を強め領有権問題の平和的な解決を目指すとともに、朝鮮半島の非核化に取り組むとした
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米国の国益をより露骨に打ち出して中露に強くあたるが、同盟国等にも負担をしっかり求めていく・・・と読みました
North Korea2.jpg来年2月の「核体制の見直しNPR」と「弾道ミサイル防衛の見直しBMDR」は、お金がない米国投資を占う重要な文書で、マティス国防長官やダンフォード統合参謀本部議長が、多くの課題の方向性をこの2つの文書で明らかにすると言いつづけた文書です
お二人を責めるつもりは毛頭ありませんが、相当に重要な文書です
参考になる過去記事
「CSISレポート南シナ海中国活動」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-17
「北朝鮮の生物兵器は?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-12-16-1 
「オバマ政権のNSS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-08

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