1日、RANDやCSIS等が共同開催した「West Coast Aerospace Forum」で、O’Shaughnessy太平洋空軍司令官が講演し、西太平洋地域の戦略環境が米国にとって急激に厳しいものとなっており、新技術や新コンセプトの導入が急務であるが、当面は現有戦力や既計画分でしのぐしかないと語りました
そして、一箇所に戦闘機を集中配備する現在から、第5世代戦闘機を分散して運用する新コンセプトACE(Agile Combat Employment)に基づく演習をアジア太平洋エリアで行っていると語りました
新コンセプトACEについては、10月末に国防省高官が記者団に、、「在日本の米軍最新戦闘機は、(有事に)地域の島々の10-15の未整備な緊急展開基地に分散させる」、「このコンセプトでは、分散した不便な展開場所でも最新戦闘機が作戦可能なように、迅速に兵たん支援も分散支援体制を整える必要がある」、「米空軍は最近のArctic Ace演習などで、燃料の緊急配分訓練をすでに開始している」とブリーフィングしたと過去記事でご紹介したところです
本日は太平洋軍司令官の発言と、ACE検討の一端をご紹介します
8日付米空軍協会web記事によれば
●講演でO’Shaughnessy大将(次の太平洋軍司令官の有力候補)は、「太平洋空軍の作戦環境は信じられないペースで困難さを増している」と語り、米側が想定していたよりも遥かに速いペースで周辺国の軍事力強化が進んでいると述べた
●しかし、「予算の強制削減と過去約20年間の継続した戦いにより、わが米空軍に再投資して立て直すには時間が掛かるので、現有戦力で戦う方法を考えるしかない」と現状を語った
●そして同司令官は、太平洋軍エリアで訓練が開始され、戦力を分散して柔軟性と強靭性を確保するACEコンセプトに言及し、従来の巨大基地が敵攻撃に対して脆弱だと背景を語った
●また同大将は、米国の軍事的優位は決して確約されたものではなく、日々の取り組みにより勝ち取っていかなければならないと訴えた
ACEについて:米空軍協会機関誌5月号より
●2013年から、F-22を飛行隊単位ではなく数機のF-22を機敏に展開させる方式(Rapid Raptor)を、燃料配分や兵站支援要領に焦点を当てて試してきたが、ACEはこれを発展させたコンセプトである
●2月に12機のF-22を豪州のRAAF Base Tindal基地に展開させ、そこから更に2機をより小規模で設備不十分な基地であるRAAF Base Townsvilleへ展開させた
●2機のF-22はC-17とKC-135を伴って展開し、到着後、C-17を指揮統制通信基盤として活用してハワイの作戦センターと連絡を取り、C-17の翼燃料タンクから給油を受けた。燃料は陸海軍の簡易ゴム製タンクからも供給を受けることが出来る
●C-17に搭載された弾薬は、同じくC-17で移動してきた整備員によってF-22に搭載され、C-17の通信機を利用して作戦命令を受けたF-22操縦者は具体的な飛行計画を立てることが出来、約3時間で再発進してBase Tindal基地に帰還できた
●また同大将は、太平洋地域に分散配備した事前集積物資や、海兵隊F-35Bの基地の支援も期待できると語った
●ただF-35についてはまだ部隊導入が優先で、ACEコンセプトでの訓練は不十分だと太平洋空軍計画部長は認めている
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米空軍が明確に在日米軍基地の脆弱性を認識し、具体的な対策に動いている中、航空自衛隊はどうするつもりでしょうか?
せまい日本列島の中で、敵の射程距離内にある日本内部で、戦力分散を図ると言うのでしょうか?
普通の空軍を目指す・・・などと叫んでいる人がいるらしいですが、世界の脅威の最前線に存在する日本の空軍が、人並みを目指していて良いのでしょうか?
脆弱な多くのインフラに依存する戦闘機への依存や偏った資源配分を、今こそ見直すべきだと思います
在日米軍の変化を語る
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「岩田元陸幕長の発言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-10-09
沖縄戦闘機部隊の避難訓練
「再度:嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
「嘉手納米空軍が撤退訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
「中国脅威:有事は嘉手納から撤退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13