米海軍初:無人機の照準情報で対艦ミサイル

そうなんだ・・これも初めてなんだ!?
Harpoon.jpg8月22日、グアム島沖で訓練中の沿岸戦闘艦LCS「Coronado」が、無人ヘリからの目標情報により、米海軍史上初めてハプーン対艦ミサイルRGM-84D Block 1C)を見通し線外の水上目標に発射して命中させました。
またMH-60H有人ヘリも情報伝達リンクに加え、射撃後の攻撃成果確認も(BDA:Bombing damage assessment)行った模様です。MQ-8B無人ヘリは遠方監視用(C型は輸送用)で、MH-60Sは主に輸送を担う多用途ヘリ(R型が対潜哨戒用)で、共に沿岸戦闘艦に搭載されている装備ですが、これに必要なセンサー等を搭載し、今回の遠方目標ターゲティングを成功させたものです
敵がA2AD能力の発展で各種ミサイル等により遠方攻撃能力を増す中、米海軍はNIFC-CA構想の下、米海軍航空アセットの情報をリンクでつなぎ、より遠方から現有対艦及び防空ミサイルを発射しようと試みています。例えば、艦艇防空用のSM-6ミサイルを対艦ミサイルに応用し、E-2DやF-35によって得られた目標情報で攻撃しようとの取り組みです
MQ-8C.jpgMQ-8B無人ヘリやMH-60Sは敵の脅威に弱い装備だけに、実戦の場面で目標情報を入手する前方センサーとして活用する構想があるのか不透明ですが、搭載されたセンサーや他アセットのターゲティング情報で艦艇攻撃を行うのは「重要な一歩」ですので、「まだ初めてなんだ」とも思いましたがご紹介しておきます
また、「アジア太平洋リバランス」の目玉事業の一つとして数年前に打ち上げられた、シンガポールへの4隻の沿岸戦闘艦ローテーション派遣の現状についてご紹介します。
25日付Defense-News記事によれば
MQ-8.jpg●米海軍の発表によれば、沿岸戦闘艦「Coronado」に所属するMQ-8B Fire Scou無人ヘリやMH-60S Seahawkへりは、搭載した水上レーダーや光学センサー等々のセンサー情報をデータリンクを通じて母艦に提供し、対艦ミサイル発射後はその飛翔もモニターし、攻撃後はその戦果確認も行って母艦に伝えた
●MQ-8B無人ヘリには、「AN/ZPY-4(V)1 multi-mode radar」「FLIR Systems Brite Star II day-and-night electro-optical turret with a laser-target designator」が初めて装備され、艦艇に搭載された。
●「Coronado」は昨年10月からの約1年間に及ぶシンガポール派遣の最終段階にあり、同LCSが所属する第73任務機動部隊を指揮するDon Gabrielson少将は、「約5万もの島々が点在するフィリピンからインドまでの海域を担当する上で、同艦の作戦行動と維持整備が成功裏に行われたことを高く評価する」と語っている
●具体的には今回の派遣期間内に、同LCSの定期整備をベトナムのカムラン湾で実施する実績を収め、またフィリピンとの海賊対処共同訓練も行ったと同少将は成果を語った
●また現在のグアム周辺での訓練を終了後、同LCSは9月にスリランカとインドネシアに向かい、それぞれの国の軍と訓練を行う予定だと同少将は説明した
HH-60G.jpg●シンガポールのChangi海軍基地に4隻をローテーション派遣をシンガポールが受け入れることに合意しているが、2018年末までには、初めて2隻の米海軍LCSが同時にシンガポールにローテーション派遣派遣されることになると、同少将は明らかにした
●現時点でLCSは、5隻が任務についており、3隻が進水後に各種装備を搭載作業中で、2隻が建造中である
●沿岸戦闘艦は任務に合わせて多様なモジュールを選択して艦艇に搭載する「modularity」が特長だが、同少将は「このmodularityを実現することが将来には重要で、装備と人員の両面で、多様な任務と装備に習熟することで当地域の多様な任務需要に対応するようにする」と語っている
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LCSindep.jpg「アジア太平洋リバランス」の目玉事業の一つとして、新型艦艇LCSをシンガポールに4隻ローテーション派遣すると米国防長官(パネッタ長官)が打ち上げたのが2012年春でした。
同艦1~2隻の派遣については、前任のゲーツ長官時点(2011年)でシンガポールが同意していますが、6年前の政治的アピールさえまだ実現していないのが「アジア太平洋リバランス」の実態です。
Gabrielson少将が述べているように、2018年末に初めて2隻の派遣が実施されたとして、7年遅れの実現で、2012年に大々的に打ち上げた4隻体制の確立など期待しないほうが良いでしょう
実際のところ、2013年春にヘーゲル長官がLCSのシンガポール派遣に言及して以降、4隻ローテーション派遣に国防省は言及していません
今年の春、マティス長官はアジア安全保障会議で「私は地域の皆さんの話しを聞きに来た。ここで得た情報を元に、政策を煮詰めて生きたい」との主旨の発言をし、具体的なアセットの名前に一切言及しませんでした。これが米国防省のアジア政策で、コミットするとの言葉だけが泳いでいる実態です
無人機によるターゲティング情報リンクについては、今後MQ-8B無人ヘリやMH-60Sが実戦でもその役割を担う構想があるのかに注目したいと思います
関連の過去記事
「映像:MQ-8の着艦試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-25
「リバランスは終了。それで?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-15
「国防長官がLCS削減要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-18
「LCS2隻の派遣は同意」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-10
NIFC-CA関連の記事
「道遠し?:NIFC-CAの進展」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-26
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