レールガン:依然として摩擦と消費電力が課題

Railgun-navy.jpg7月21日付Defense-Tech記事が艦艇搭載レールガンの開発状況を担当責任者に取材し、この夏から開始される試験の狙いや課題について紹介しています。
レールガンは、金属の飛翔体を強力な磁界を砲身内に形成して打ち出す兵器で、炸薬を爆発させて弾頭を飛ばす従来の大砲に比べ、安価に大量の飛翔体(弾頭)を艦艇に搭載でき、敵による各種ミサイルによる飽和攻撃を撃退したり、敵に対応の暇を与えない飽和攻撃を可能にするものと期待されてきました
railgun4.jpgしかしレーザー兵器と同様に2006年に初期型のプロトタイプで試験が始まったものの、各種課題を克服できず、未だ艦艇への搭載予定は明確になっていません
主要な課題には砲身が高速で射出される飛翔体との摩擦に耐えられず、耐久性が確保できないことや、更に必要とされる大電力の確保が容易でないことが挙げられており、実現化に向けた挑戦が続いています
7月21日付Defense-Tech記事によれば
●米海軍はDDG-1000 Zumwalt級駆逐艦にレールガンを搭載する予定であったが、いつ実現できるかは定かでない
●しかし米海軍研究室ONRはレールガンの早期実現に取り組んでおり、今年の夏から来年にかけ、飛翔体打ち出しパワーを「32 megajoules」にすることや、連続発射速度を1分間に10発発射可能にすることを目指している
railgun5.jpg●開発の責任者であるTom Beutner博士は、発射のパワーを「32 megajoules」にすることにより、発射された飛翔体の射程が「約110nm」にまで延びると説明している。
●また研究者たちは発射機の砲身(barrel)に新たな複合材を準備し、射出パワーアップと時間当たりの発射弾数増加に備えており、Beutner博士は「パワーと発射速度の目標達成は、来年には可能になるだろう」と語っている
●しかし依然として未解決の課題を抱えておりその一つが飛翔体と砲身の摩耗でレールガンの耐久性が不十分なことである。それでもBeutner博士は、「システムのパーツをより長寿命なものに変えて取り組んでいる」と語り、「最初のころは数十発でダメになっていたが、最近では400発は射出可能で、将来的には1000発に耐えられるまでにできると考えている」と自信を見せた
もう一つの課題は、大量のパワー(電力)確保である。レールガンが大量の電力を必要とするため、Zumwalt級駆逐艦にしか搭載できない
Railgun-1_svg.jpg●Beutner博士はパワー確保について、「この課題は、例えばレーザー兵器などにも当てはまる課題である」と述べ、「7月に着上陸用輸送艦Ponceにレーザー兵器を搭載して試験した際も、艦艇の電力でなく、特別な電源装置を持ち込んで発射を可能にしていた」と事例を紹介した
●米海軍研究室ONRでは、将来海軍艦艇の電力確保のために、どのような発電システムが必要か検討しているが、これはレールガンのためだけでなく、多様なエネルギ兵器や電磁兵器のためでもあると同博士は説明し、「発電と蓄電の課題は、我々の全ての研究開発事項の構成要素となっている」と語った
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レーザー兵器と一緒で、「いつまでたっても、あと完成まで5年」と揶揄されるようになるのでしょうか・・・?
400発発射ごとに砲身を交換する必要があるレールガン、それが1000発になったとしても・・・どうなんでしょうかねぇ・・。艦艇はいったん出航すると半年程度の任務派遣は普通ですからねぇ・・。
railgun.jpgましてや対中国正面では作戦基盤基地が少ない上に、佐世保や横須賀など、戦いの初動で攻撃対象となり、艦艇の修理補給が不可能になる可能性も高いですから、頻繁に交換が必要な装備は、更に運用上の制約を受けるのではないでしょうか
更に、ワーク前副長官は昨年5月、「レールガンだが、当初我々は主要な開発領域だと考えたが、試験を進めるうちに「従来型の炸薬型高性能砲弾:powder gun with a hypervelocity round」でも同様の効果が得られる事が判ってきたそれも開発や試験などの経費が不要な形で」と講演で語り、レールガンの有効性や開発コスト負担の妥当性も今後問われることになるのでしょう
レールガン関連の記事
「期待の星レールガンの現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-27
「Work副長官の指摘」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「Zumwalt級駆逐艦を学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-22

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