U-2偵察機は引退せず:RQ-4と共存へ

U-2 Dragon.jpg23日、米国政府の2018年度予算案が公開された事を受け、米空軍省の予算担当次官補代理James Martin少将が行った説明会見で、2015年に一度退役の方向が決定され、RQ-4グローバルホークを後継機とする事が決まっていた有人高高度偵察機U-2を、引き続き運用すると明らかにしました
U-2偵察機はキューバ危機当時から活躍している超ベテラン偵察機ですが、RQ-4導入後も、多様な高性能センサーを複数同時搭載でき、柔軟に搭乗員が任務を遂行できること等から、前線部隊からはU-2存続の要求が根強くありました
在韓米軍司令官や中東派遣指揮官からの要求が強く2014年当時のACC司令官も「政治が介入し、U-2はだめでGlobal Hawkを買えと言う。そして追加の予算もない」、「U-2を犠牲にする選択肢しか残されていなかった」と怒りをあらわにしていました
U-2 Dragon4.jpgその後2019年から引退開始の方向になったU-2偵察機の後継RQ-4に対し、能力向上とU-2から取り外した光学カメラや多用途センサーをRQ-4に移設搭載する計画が立てられ、Northrop Grumman社が能力向上センサーの開発に取り組んでいました
また、RQ-4の維持費がU-2よりも高額である事も問題となりましたが、一応、RQ-4の維持費も改善が見られ、長期的には老朽化したU-2より安価だとの解釈になっています。
しかし部隊には「U-2愛」が強くあり、また第3者のLockheed Martin社が、RQ-4だけではU-2の穴埋めは不可能だと「TR-X」計画を進め、U-2のエンジンや各種センサーを再活用するステルス無人偵察機を提案までする混戦模様にありました
23日付DODBuzz記事によれば
U-2 Dragon2.jpg●23日、2018年度米空軍予算案の説明会見でMartin少将は、2019年度からU-2を退役開始させる計画を取り下げると述べた。退役計画は2017年度予算にも含まれていたが、2018年度案には含まれなかった
●同少将は「U-2退役時期に言及することは無く、U-2を今後も維持する事にした」「U-2の能力も必要だし、代替機だけではカバーできない任務量がある」と説明した
予算の不透明性からU-2退役を検討したが、「2014年8月以来、世界は変わった」と述べ、対ISIS作戦が始まった時期に言及しつつ判断変更の理由を説明した。
●最終的な2017年度予算額の増額等を考慮し、「より多くの資源投資が可能になったことを受け、(RQ-4とU-2の)両方を活用する事にした」と語った。ちなみに2016年時点で米空軍は、U-2退役により約2500億円の経費節減効果を見積もっていた
RQ-4を製造するNorthrop Grumman社は、RQ-4のセンサー能力をU-2レベルに向上させるための技術開発や試験を進めてきており、例えば今年2月、新しい「MS-177 multi-spectral sensor」の試験を成功裏に行い、U-2が搭載している「SYERS-2」以上の能力を狙う取り組みをしていた
●その様な中であるが、米空軍は断固としてU-2偵察機を維持する事にした
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U-2 Dragon3.jpgU-2偵察機を維持する事で、Northrop Grumman社が準備していたRQ-4センサー能力向上がどのような扱いになるのか不明です。
今回のU-2とRQ-4共存の判断が、前線部隊には歓迎されるのでしょうが、両機種維持は経費負担を重くすることになります。
また、RQ-4の増産にもマイナスでしょうから、RQ-4の海外売り込み圧力が更に高まり、日本などが被害を被るのでは・・と懸念します。既にブロック30を買わされた日本は被害者かも知れませんが。
いずれにしても、U-2偵察機の機体寿命はまだ40年近く残っているらしいく、搭載センサーも改修を重ねて高度なレベルにあるようなので、しっかり頑張って頂きましょう!!!
大人気U-2偵察機の記事
「空軍偵察アセットの現状」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-21
「最新機よりU-2がいい」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-23
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「OMS装備で通信中継機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-25
「U-2はあと40年活躍?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-16
「映像高度7万フィートのU-2飛行」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-07

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