米空軍発表「recently removed the restriction」
でも改修方針が正式承認されただけ
座席改修はこれから、改修ヘルメットも初期生産段階
15日、米空軍F-35準備室長Scott Pleus准将(間もなくACCへご栄転予定)が、体重61.7kg以下(136 pounds)の操縦者のF-35への搭乗を禁じる制限を解除すると発表しました。要求性能である体重約47~111kg(103~245 pounds)の操縦者全てが搭乗可能となる方策が正式に承認されたようです。
2月中旬に同准将が、様々な電磁波が飛び交う環境下で座席が不時射出しないかを確認する最後の「電磁環境試験」を3月に行い、4月には「搭乗禁止令」解除の方向にあると予告していましたが、その解除令が5月中旬になったのでしょう。
ただし賢明な皆さんに置かれましては、「報道の見出し」に騙されない注意が必要です。
同体重以下の操縦者への制約が、どれくらいF-35操縦者養成に影響があるのか不明で、それほど影響が無いような気もします(少なくとも女性操縦者1名が該当)が、あくまで3つの対策方針が正式承認されたと言うことでアリ、座席やヘルメットの改修が完了したわけではありません
2015年に発覚したF-35射出座席の問題は、低速飛行状態で射出脱出した際、軽量操縦者が首を負傷する恐れがあるというモノで、対策として「3つ」、つまり座席に体重に応じた切り替えスイッチを付加して射出後のパラシュート開傘タイミングを調整する事、射出時に頭を支えるパネルを座席頭部に付加すること、更に操縦時に着用するヘルメットHMDの重量を約250g削減する3施策で対処することになっています。
Pleus准将も、それなりに対策が継続中である事を言葉で表現していますが、あくまで以下でご説明するように、少なくとも来年1月までは座席改修は完了しませんし、ヘルメットも部隊に行き渡るまでにどれくらい必要なのか極めて不明確です
典型的なF-35諸問題への対応であり、輸出に影響を与えないようになるべく問題は穏便にコソコソ対応し、小さな成果を大きく発表するスタイルが徹底されている事例としてご紹介します
15日付Defense-Tech記事によれば
●Pleus準備室長は、「制限解除には2つの要件がアリ、座席改修と重量削減済みのヘルメットHMD装着である」、「この2つの対策で、低速時も高速時も軽量操縦者のリスクを軽減できる」と語った
●米空軍は現在107機のF-35を保有しており、1ヶ月間に14機の座席回収が可能なことから、来年1月までに座席改修が完了すると同准将は説明した。また座席とヘルメットの改修経費は、共に製造企業が負担することも改めて明らかにした
●HMDヘルメットについては、外付けのバイザーを取り除くことで軽量化を図り、内蔵の透明バイザ-とダークバイザーの切り替えで操縦者は対応することになり、またHMD内部のストラップを一部無くして軽量化を図ると同准将は解説した
●また、新しく軽量化されたヘルメットは、現在本格生産前の段階でアリ、今年秋からフル生産に入る予定でと説明した
●改修した座席とHMDヘルメットによるF-35操縦者養成課程は、今年末には開始し、同コースの飛行は2018年初めに開始することになる予定だと、同准将は説明した
●同准将はまた、米海軍や海兵隊用のF-35も同じ射出座席を使用しているが、各軍種は運用方式が異なるためそれぞれが異なった基準でF-35を審査しており、この問題は米空軍だけの話であると解説した
●なお、問題となっている英国Martin-Baker製の射出座席「US16E」に不満を持つ米空軍関係者は多く、昨年夏には空軍省の調達担当次官補佐のArnold Bunch空軍中将が国防省に対し、代替座席として米国United Technologies製の「ACES 5」を導入した場合のコストやスケジュールを検討するよう求める書簡を出している
●10日、Bunch空軍中将は同書簡を無効にすると明らかにした。
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Scott Pleus准将は、近く米空軍戦闘コマンドACC隷下の要職にご栄転のようなので、この発表で米空軍F-35準備室長としてのお仕事に区切りを付けられるのでしょう。
そしてこの話題も、世間を賑わすことはもう無いのかも知れません・・・。
それにしても、国防省F-35計画室長のBogdan中将も退役間近で、米空軍F-35準備室長もご栄転です。
こうやってF-35は、淡々と「亡国」の道を進んでいくのでしょうねぇ・・・
F-35射出座席の問題
「17年3月に確認試験終了か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15-1
「射出座席問題に部分的対策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-09
「米空軍に国防省と企業が反論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-06-1
「米空軍が代替座席の検討依頼」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-25
「座席対策は2018年までか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-09-1
「責任譲り合い:F-35射出座席」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-17
「F-35軽量操縦者が飛行停止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-02
F-35の主要課題
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-17
F-3開発の悲劇と日本への提言
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-18