21日付Fifthdomain.Com記事は、トランプ大統領が就任時に宣言していた「90日以内にサイバー戦略を見直す」との約束の期限が4月20日だったが、今取り組んでいるとの説明だけで何の発表事項も無く、今後の予定も示されなかったと皮肉たっぷりに報じています
新政権には議会が定めた期限付き報告事項が多数課せられており、国家安全保障戦略や国家防衛戦略等もその一つだと思うのですが、政権発足後100~120日の期限が守られることはほとんど無く、ゲーツ国防長官(当時)は士官候補生への講演で「士官候補生は教官にこの様な発言をしてはならないが、国家防衛戦略を政権発足後数ヶ月で提出するなどと言うクレイジーな要求があるか」と愚痴っていたくらいです
ただこのサイバー戦略見直しは、トランプ大統領自らが就任式直前にぶち上げ、就任直後にも改めて取り組む姿勢をツイートしていただけに、またロシアによる米大統領選挙へのハッキングが大きな話題となっている「サイバー戦」問題絡みなだけに、関係者の間では「ガッカリ感」「やっぱり感」「大丈夫かよ感」が広がっているようです
21日付Fifthdomain.Com記事によれば
●大統領就任直前、ロシアを含む諸外国から米国へのハッキングに関するインテリジェンス報告を受けたトランプ氏は、特別チームを編成して90日以内に「a review of America’s cybersecurity efforts」を提出させると国民に誓った。
●当時トランプ氏は「それが米国政府であれ、一般組織や企業であれ、我々は積極的にサイバー攻撃と闘い、これを止めなければならない」「使用する手段や戦術や手法の議論は相手を利するだけなので公にされるべきでは無いが、大統領就任後90日以内に対応策を報告させるべくチームを編成した」と宣言していた
●またその1週間後もツイートで、「ハッキング対策に関するフルレポートを90日以内に提出させる」と公言していた。
●そして1月31日には、ジュリアーニ元NY市長も交えたサイバー対策の会議を開催し、同元市長に民間部門とのサイバー協力体制構築を命じ、更に「米国民のために運用している政府ネットワークとデータを防御する必要があり、その防御は極めて重要だ」とも述べている
●しかし、その後発出が予定されていたサイバー問題に関する大統領令は、突然、何の説明も無く中止された。そしてその後は、特別チームの動きはよく表現しても「思いつき程度:be haphazard」の活動で、特にロシアがトランプ氏の当選を応援していた事が判明した後は低調である。
●誰がサイバー戦略見直しに関与しているのかもよく分からず、ジュリアーニ氏は加わっていないし、NSCやクシュナー氏が率いる「American Innovation室」の関与も不明確である
●ホワイトハウス報道官のLindsey Walters女史は、「大統領が多様な政府高官と企業専門家を指名してチームを編成し、NSCやAmerican Innovation室とも協力して、第1弾のサイバーセキュリティ計画を取りまとめ中である」と語ったが、今後の日程には言及しなかった
●まぁ・・トランプ大統領自らが宣言したにも関わらず、期限や公約が守られないのは初めてでは無い。「オバマケア」の破棄と見直しは頓挫したし、打倒ISIS戦略を30日以内に示すとの約束も守られていない。また、中国を「為替操作国」と呼びながら、先週の習近平訪米時にはその表現を引っ込めている
//////////////////////////////////////////////////////
4月24日付の三浦瑠麗さんの「山猫日記」では、
北朝鮮への米国の関与を占う上で、以下の4勢力が吟味されています
●米政権で力を持ってきた軍人上がり&現役の「軍派」は、軍人の被害を極力避けたい慎重派
●共和・民主双方の主流派に属するいわゆるエスタブリッシュメント「帝国派」は、欧州や中東を重視する下地がある勢力
●人権を侵害される対象が白人やキリスト教徒だと影響力が増す「リベラルなタカ派」
●国内の経済と雇用を重視し、外交・安保に関心が薄い、バノン氏を代表とする「オルタナ右翼」
そして、核保有国である北朝鮮に米国が先制攻撃を仕掛ける可能性は極めて低い。
日本には何ができるかという点ですが、これが大変難しいのです。実は、解はない
もっと言えば、日本も核抑止への当事者となるために非核三原則のうちの「持ち込ませず」を撤回して、米国との核共有を進めるべき
以上が「北朝鮮情勢」に関する三浦さんの視点ですが、米国政治に影響力を持つ以上の4大勢力が、「サイバー戦」にどのような姿勢なのか伺っても見たいものです。恐らく、脅威に対する共通の認識や利害が一致せず、それぞれが勢力としてまとまらないような気がします。
つまり、陸海空&宇宙への脅威感とサイバー脅威への対応は、全く異なる「筋肉」を必要とする気がします。なのでトランプ政権でもまとまらないのでは・・・と思う次第です
ですから、トランプ政権を単純に攻める気持ちにはならないのですが、「大変だ!」とだけ叫んでおきます。
「米国政府サイバー予算の9割は攻撃用!?」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-31