次期国防副長官は膨大な仕事をこなせるか?

Shahahan.jpg13日付Defense-Newsが、約1ヶ月前に次の国防副長官候補として名前が挙がったボーイング社副社長のPatrick Shanahan氏について、経験豊富で馬力もアリ、国防省のやっかいな検討事項を一手に引き受けている現Work副長官の後任として、機能するかを懸念する記事を掲載しました。
正確には「懸念する」と言うよりも、こんなに大変な仕事が待っていますよ、民間企業重役から国防省幹部になった例は幾つかあるが、成功例もあればそうで無い例もありましたよ・・・との「さらっと」した記事ですが、現Work副長官に課せられた仕事一覧が紹介され、その質&量に改めて唖然としましたので、国防省の課題や問題を整理する意味でご紹介します
ちなみに候補のShanahan氏は、3月16日に候補者として発表がありましたが、未だ正式に大統領から議会に承認手続き要求が為されておらず、今後急いだとしても副長官就任には数週間を要します。
なお、Shanahan氏の経歴等については、以下の過去記事をご参考に
「副長官候補にボーイング重役」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-17
13日付Defense-News記事によれば
Shanahan4.jpg●いつShanahan氏が上院の承認を受け、国防省No2ポストに就任するにしても、2014年4月から副長官を務め(その前は海軍省次官を09年~13年努め、08年にはオバマ政権誕生時の政権移行海軍チームリーダー)て経験豊富なWork副長官の重く複雑な仕事を引き継ぐことになる。
まんぐーす注Work氏は02年から09年まで、シンクタンクCSBAで上級分析官から副理事長までを務め、George Washington大学で軍の役割や国防分析分野の教鞭も執っており、国防省の業務やその機構について、外側と内側から観察経験してきた人物である)
国防省高官によれば、Work副長官は現在11個もの主要なレビューや計画の責任者に当たっており、その代表的なモノは、
・米軍の即応態勢
・CMO(chief management officer)設置の検討
・米軍の医療保険制度改革
・サイバーコマンドの格上げ検討
・国防省の効率性・効果度改善のための組織横断チーム設置検討
調達技術兵站担当次官(AT&L)業務の分割検討 などなど
●上記の他に、トランプ大統領から国防省が指示されている複数の特別レビューも、実質的にはWork副長官が担っている。そのレビューには、
弾道ミサイル防衛体制
・核態勢見直し(NPR:Nuclear Posture Review
対ISIS戦略の見直し
F-35と大統領専用機(Air Force One)価格&コスト低減
Shanahan2.jpg●上記のレビューや諸検討の中には、後任副長官の就任までに終了しているモノもあるが、このリストが示すように、国防副長官には国防省内の様々な課題や官僚機構への理解が不可欠でアリ、国防省とのビジネス経験は豊富なものの、内部での勤務経験が無いShanahan氏に懸念を有する者も居る
●ゲーツ国防長官時に国防長官室長を務めたRobert Rangel氏(現ロッキード副社長)は、「組織課題や政府の行動特性、政治との関係、更に極めて複雑な予算構造を早急に学ぶ必要がある」と指摘している
●そしてRangel氏は、「ビジネス界での豊富な経験はもちろんプラスだが、その経験を国防省という全く異なる環境にマッチさせる姿勢があるかどうかが問われることになる」「成功例も見てきたが、そうでない例も存在する」と表現した
●議会で承認手続きを担うマケイン上院軍事委員長も心配を隠さず、「だから我々は軍事委員会でヒアリングを行い、その姿勢を問いただすのだ」と述べ、併せて、現在副社長を務めているボーイング社との関係を断ち切ることを確認する必要があると語っている
ボーイング社は現在、米空軍の次期練習機T-Xや次期ICBMの機種選定に名乗りを上げており、仮に承認を得たなら90日以内に政府倫理室と上院の定めた基準を満たすように、企業との経済的関係や利害関係を整理しなければならない
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Shanahan3.jpgShanahan氏に具体的な懸念事項があるわけではなく、一般的な懸念事項を説明した記事です。
巨大な官僚機構である国防省ですから、5月1日からの強制削減の可能性がある中、今も淡々と業務が進められているように何とかなるのでしょう。これまた根拠の無い見方ですが・・・
それよりも何となく気になるのが、「国務省」の方です。予算の大幅削減や軍人経験者が力を持つNSCの状態から、その士気が「ウナギ下がり」と良く見聞きするようになりました。
国防長官当時のゲーツ氏は、「国務省」予算の増額のためなら、全力で旗を振って支援すると繰り返し述べ、国防省と国務省が両輪として機能することの重要性を訴えていました
また如何に多忙でも、週1回は国務長官と直接会って、話をする機会を設けたと言っていたくらい、その関係を重視していました。国務省予算は今後の予算案審議の注目点でもあります。
「副長官候補にボーイング重役」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-17
ゲーツ長官退任の辞より(2011年6月30日)
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-01
gatesSTART2.jpg国務省に関する私の見方は大きく進化した。私が国家安全保障評議会のメンバーだったニクソン政権時代、彼らの働きはお世辞にも褒められてものではなかった。私が公務に就いている期間の大部分で、国務長官と国防長官が相互に話しかけることがほとんどなかったぐらいである。
ライスとクリントン国務長官とは、この強力な2人の女性と話し合うだけでなく、助け合う同僚や良き友人として過ごすことができた。私は国務省の予算を増やすように大演説をしたいぐらいである。同時に米国の外交官、援助機関の人々等、世界各地でリスクを冒しながら世界や米国のために尽力する人たちに感謝したい。
おまけ:ゲーツ長官語録100選より
(http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19)
ロバート・ゲーツ語録39
→私が国防長官に着任したとき、特段これと言って何かを変えようとは思っていなかった。しかし最初の2年間で、私を困らせる国防省の仕組みを強烈に学ぶことになった。例えば・・・→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-17
ロバート・ゲーツ語録41
→(記者会見で)皆さんにとってペンタゴンは仕事がやりやすい場所ではなかったかもしれない。タイムリーで役に立つ情報を官僚組織から得ることはいつも困難を伴ったと思う。時に私だってそうだったから
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-17-2

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