3月31日、米戦略コマンドのJohn Hyten司令官(空軍大将)が軍事記者会議で講演し、CPGS(通常兵器による世界即時攻撃:conventional prompt global strike)が戦略抑止の「拡大ビジョン」の一角を担うべきで、特に艦艇に装備してこそ有効性を生かせるのでは無いかと語りました
PGSとは、大気圏内を超超音速で飛翔し、地球上のどの場所でも1時間程度で攻撃可能にする構想で、スクラムジェットや宇宙ロケットの活用などで実現する研究が行われていますが、中国やロシアもこれに追随して開発を精力的に進めています。
米国はこれに通常兵器(鉄の槍とか小玉)を搭載し、核戦争へのエスカレーションを避けつつ、圧倒的な攻撃力で相手に反撃を諦めさせるほどの効果を狙っていますが、発射を探知した相手が核攻撃と区別できるか等の問題提起や、技術的困難性と予算不足がアリ、「第3の相殺戦略」の一部として検討されているようですが、開発状況は聞こえてきません
一方で、中国やロシアは核兵器搭載の可能性もちらつかせ、特に中国はここ数年連続して実験を行っており、米国レベルにあるのではと専門家が懸念する状況にあります
3日付米空軍協会web記事によれば
●Hyten司令官は同会議で、戦略抑止の「拡大ビジョン」の一角を担う「integrated global capabilities」の追求に辺り、CPGSはこの一部となるべきだと語った
●そして、従来より拡大された抑止概念の元で、戦略コマンドは単なる一つの機能コマンドでは無く、「a global warfighting command」として見なされるべきだと主張した
●その際の任務として同大将は、「各地域戦闘コマンドの(CPGSを)戦力として提供する」ことが戦略コマンドの任務の一つだと表現した
●同司令官は、戦略コマンドが1月に実施した2機のB-2爆撃機によるリビア攻撃に触れ、米本土(モンタナ州)から出撃し、2箇所のISIS訓練基地の84箇所を個別に攻撃した同コマンドの能力を紹介しつつ、
●この様な作戦は、全ての場面でより迅速に行われるべきだとの認識を示し、より迅速な手段を手にするため、同司令官自身は引き続き、CPGS開発&導入を訴えていきたいと語った
●そしてCPGS構想が議論され始めた頃は、ICBMやSLBMの代わりに、CPGSの通常攻撃力を導入する案も提示されたことに触れつつ、海上配備型が最も生存性が高く、潜水艦装備より水上艦艇配備を望むと自説を語った
●更にCPGSが「multi-domain指揮統制モデル」に組み込まれて融合されたならば、「根本的な非対称優位性を確保できる」と述べた
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Hyten空軍大将の個人的こだわりか、米軍や国防省としての取り組みがあるのか等々が不明ですが、少なくとも中国の技術はかなり上がっている(昨年までの最近2年間で6回も実験)ので、何とか研究を進めて頂きたいものです
また、戦略抑止の「拡大ビジョン」検討にも注目したいと思います
超超音速技術やPGC関連の記事
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