米空軍ではなく、米陸軍のMQ-1シリーズです
13日、在韓米軍は、米陸軍が保有する無人偵察攻撃機MQ-1C(Gray Eagle)をソウル南の「Kunsan Air Base」に配備すると発表しました。同機の展開時期は不明ですが、運用開始は来年早々になる計画のようです。
発表を受け、米国務省報道官が「THAAD配備に加え、これら無人機は、日米韓への安全保障上のリアルな脅威に対応する防御的な手段となる」との声明を発表し、中国外務省高官(Hua Chunying)が北朝鮮情勢への影響を懸念し「火に油を注ぐようなモノ」と非難するなど、波紋が広がりつつあります。
一方で報道によれば、旧式の武装ヘリ「OH-58D Kiowa Warrior」の後継として、米陸軍が以前から計画的に進めていたとも紹介されており、とりあえず整理しておこうと考えご紹介します。
なお米陸軍MQ-1C(Gray Eagle)は、2018年に引退することが発表された米空軍MQ-1(Predator)の兄弟分で、操縦を車両搭載可能なコンテナ型装置やアパッチ攻撃ヘリからも可能にしていることが大きな特徴で、衛星通信による操縦も可能ながら、前線密着の偵察や攻撃任務を想定した無人機です
14日付Defense-Tech記事によれば
●米空軍や韓国軍の協力を得て、米陸軍は、第2師団第2航空旅団に中隊規模のMQ-1C(Gray Eagle)部隊を配属し、「Kunsan航空基地」を根拠に運用する計画だとStars and Stripes紙は報じている
●米陸軍は合計152機のMQ-1Cを購入希望だが、予算的制約から現時点で34機の確保のみ目途が立っている。韓国への配備機数の発表はなかったが、1個中隊だとすると12機である
●MQ-1C(Gray Eagle)は米空軍MQ-1(Predator)とほぼ同様に、約25時間の連続飛行と29000フィートまでの上昇が可能で、約500kgの搭載能力があり、各種センサーやレーザー照準装置、通信中継装置、4発のHellfireミサイル等が搭載できる
●同無人機は2010年からイラクとアフガンで使用されており、報道によれば、対ISIS作戦で喪失した同機の穴埋めのため、議会は約30億円の予算振り替えを認めている
14日付TheDrive.com記事によれば
●米政府や国務省は、MQ-1Cの韓国配備を北朝鮮対応のように表現しているが、実は米陸軍が長期計画で進めている回転翼機と無人機活用計画が、朝鮮半島でも計画に基づき実施されることになったというのが正確な表現である
●MQ-1Cは「OH-58D」武装ヘリの後継機で、最後まで「OH-58D」を使用していたのが韓国派遣の第82戦闘航空旅団だったのである。同飛行旅団はアパッチ攻撃ヘリ部隊との連携戦闘を想定し、訓練を積んできた部隊である
●MQ-1C(Gray Eagle)は衛星通信で遠隔操縦可能で、また移動式コンテナ型操縦装置からも操縦できるが、アパッチヘリからも「クリック操作」で操縦可能であり、アパッチがMQ-1Cを前方偵察機や攻撃機として活用し、アパッチ母機の攻撃や偵察能力を増強する運用が可能となる
●また、25時間連続飛行可能なMQ-1Cを常続的な偵察機として衛星通信の遠隔操作運用し、いざ作戦を行う際は、最前線指揮所のコンテナ型操縦装置やアパッチヘリに操縦を切り替えて使用する事も構想されている
●アパッチヘリとの連携以外にも、非武装地帯の常続偵察、電子妨害機、即応性のある攻撃機としても柔軟な活用が可能でアリ、「OH-58D」武装ヘリよりも維持整備経費や人員も少なくて済むことから、朝鮮半島への展開は極めて有効だと考えられる
●北朝鮮への対処と言った政治的なメッセージとか、中国の反発とか、メディアの見出しだけでなく、軍事的な本質事項に目を向けたいモノだ
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米陸軍の考える、アパッチヘリからのMQ-1C操縦がどの程度有効で効果があるのかピンと来ませんが、アフガンで実績があるのかも知れません。
後半の記事には、無人機の前線での使用を巡り、米陸軍と空軍間で主導権争いがあるとの記述がアリますが、MQ-1やMQ-9と言った同レベルの無人偵察攻撃機を使用すれば「さもありなん」と思います
米国政府や国務省的には、アジア太平洋地域への関与をアピールする材料かも知れませんが、軍事的には上記のような基礎知識を押さえておくべきと考え、ご紹介しました
朝鮮半島のご参考記事
「CNAS:北朝鮮でなく中国の問題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-28
「在韓米軍司令官はあのBrooks大将」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-19
「ルトワックの日韓関係分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-17
「韓国の混乱と戦後の哀史」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-11-25
「米空軍は2018年にMQ-1を退役へ」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-02