米国政府は中国軍の存在を認知しつつも、多くを語らず・・
長期的に撤退を模索する米国の空白を狙う中国?
2日付MilitaryTimesが、中国軍がアフガンとの国境付近のアフガン内で国境警戒活動を始めている模様だが、米国はその動きを把握していながら黙認又は態度がはっきりとせず、ロシアやイランのアフガンでの活動を公に非難する姿勢と大きな差があると指摘しています。
また、中国がこの地域に関心を見せる背景について、「治安」と「経済」の両面から複数の専門家の見方を紹介しつつ、米国が手を引きたい思いを抱えていることも踏まえつつ、今後の動向を考察しています
言うまでもなく中国と米国は、南シナ海問題を巡り対立関係にアリ、通商分野でもトランプ政権が中国の自国優遇策を非難するなど、色々と対立点を抱えていますが、アフガンに関しては「もしかして暗黙の了解」で進むのかも知れません。
2日付MilitaryTimes記事によれば
●最近、中国軍とアフガン政府軍が、約50マイルの両国国境沿いで、共同の対テロパトロール活動を行っているのではとの噂や報道が相次いでいる。そしてこれらの報道等は、米国やNATOがアフガンを去った後に、中国がアフガンで野心を持っているのではとの憶測に油を注いでいる
●中国とアフガンは、タリバンが勢力を盛り返していることを受け、2015年に協力強化に合意し、アフガン国境警察の訓練や警備車両・防弾チョッキ等の装備品提供を中国が行い、警察同士が共同国境警戒を行っているのみで、両国政府ともアフガン内での軍の共同パトロール(インドの報道)は否定している
●インドの報道は中国製の装甲車がアフガン内を走行している写真を掲載し、最近ロイターも中国軍のアフガン内での活動を報じている
●また1月には中国メディアが、アフガン内で敵襲を受けた米軍特殊部隊を、中国軍が救出したとの記事を報じた。米国関係者はあり得ない救出劇だと否定したが、米国防省報道官は「中国軍がそこにいることは承知している」と答え、それ以上の言及は避けた
なぜ中国はアフガンに関心を?「治安」と「経済」
●東西研究所のFranz-Stefan Gady上席研究員は、中国は、1949年からウイグル族の独立を目指す過激派「東トルキスタン・イスラム運動」の撲滅を狙っており、アフガン国境付近で長年活動する同活動運動家を追撃していると見ている
●米国も2002年に同組織を「テロ組織」に指定しているが、同組織はISILへの支援から、中国内での活動強化を最近打ち出したところである
●米国やNATO諸国は、最盛期には約13万人をアフガンに派遣していたが、現在はアフガン軍の訓練育成やテロ組織指導者の排除作戦などに1.5万人が存在するのみである
●在アフガン米軍司令官のJohn Nicholson陸軍大将は、西側部隊の減少に伴い悪化傾向にある治安情勢を踏まえ、兵力増強の可能性に言及しているが、長期的には撤退が目標である
●中国は繰り返し西側の関与削減への懸念を表明しており、国境付近の治安安定が中国の一番の関心事項だとフレッチャースクールのSung-Yoon Lee教授は説明し、「西側の関与削減に伴い、中国がパキスタンと協力してアフガン国内で治安維持を行う事は、中国の国益にかなっている」「中国が西方の不安定な隣国に軍事力を用いないはずがない」と述べている
●また、中国はアフガン内の豊富な天然資源や鉱物資源を求め、中央アジア市場へのアクセスとしてもアフガンの安定に関心を持っている。そして中国が打ち出した「一路一帯」構想で、中国とユーラシアを結ぶ重要な位置付けにアフガンはある
●中国は地域の安定に関与せず、経済的利益だけを狙う「free rider」と見られており、西側の撤退に伴い生起する「空白」への中国の進出は、いつもの事とも言える
難しい立場に立たされる米国
●米国は難しい立場に立たされている。南シナ海での中国の活動にいらだちを見せる一方で、中国が疲弊したアフガンに関与してくれることは米国にとって有り難いことだ。
●主張すべきは対立しても主張するが、協力できると事では協力するのが米国のスタンスであり、「安定したアフガンは、米中両国にとって国益にかなっている」「ある程度の中国のアフガンへの関与は、米国も理解しているに違いない」とGady上席研究員はコメントしている
●ただし同研究員は、少なくとも短期的には、また米国やNATO諸国が相当数アフガンに存在する間は、中国軍がアフガン内部に深く進出するとは考えにくいし、中国軍の規模も小さく戦力的にも大したことない程度が当面続くだろうと述べている
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トランプ大統領がアフガニスタンに関心があるとは到底思えず、インドやパキスタンの関係、中国とウイグル自治区との関係、中央アジア諸国の動向にも興味があるとは言えないでしょう。
マティス国防長官やマクマスター安全保障担当補佐官が、アフガンの「底が抜ける」事を危惧し、アフガンへの小規模な増派はあり得るとしても、絆創膏を当てる程度の処置しか西側諸国にはとれないでしょう。
そんな背景から、上記記事では中国がアフガンの安定に寄与することを期待していますが、中国が関与して安定した国があったでしょうか??? ロシアとイランと中国が組んだりして・・・怖ろしや・・
中東・アフガン関連
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