12月29日付Defense-Newsは、国防省の国防高等研究計画庁(DARPA)が12月に構想を公表し、今年1月6日に企業関係者への説明会開催を明らかにした、新たな手法での「超長波」及び「超超長波」通信装置への取り組みを紹介しています
物理学の原理からすれば、超長波(VLF:very low frequency)及び超超長波(ULF:ultra low frequency)は低周波数を利用することから、水や土や岩や金属や建物を突き抜けて進む事が可能で、潜水艦と水上艦艇や無人水中艇間の通信が可能になり、また地下施設や洞窟との通信や地雷の操作や生き埋め者の捜索にも活用できるはずです
しかしVLFやULFを発信には、例えば10ヘルツの送信の場合、波長の半分の約1500kmのアンテナが必要になり、またアンテナが巨大なため、電力にもメガワット単位のエネルギーが必要なため、戦場での兵士の使用や潜水艦や艦艇への搭載は実用的でないと言われてきました
この課題に対処するため、DARPAのTroy Olsson担当責任者が取り組もうとしているのが新しいアンテナAMEBA(Mechanically Based Antenna)です。
細部については現時点で不明な部分が多く、1月6日の企業説明会以降の話でしょうが、夢のありそうな話ですのでご紹介しておきます
12月29日付Defense-News記事によれば
●AMEBAは、VLFやULFの特性を生かした上で、手持ち可能か人が運べる通信機を目指すものである
●Olsson担当責任者は、「アンテナから電波信号を発射するため、アンプや電子回路で電流を周期変化される代わりに、AMEBA計画では強力な電力や磁界を帯びた物質を機械的に動かす事を考えている」と説明したが、細部には言及していない
●VLFやULF通信は大きな潜在能力を持っており、水中で活動する潜水艦や無人水中艇間の直接通信を可能にし、潜水艦などが浮上するリスクを避けることが出来る
●また、GPS信号は水中では活用できないが、ULF通信により三角測量方式で他の潜水艦の位置特定を可能にし、2020年運用開始を見込む無人潜水艦の運用に朗報である
●陸軍や海兵隊などの地上部隊にとって、VLFやULF通信は見通し線外の長距離通信を可能にする技術となろう
●現在地上部隊が使用する高周波無線機(PRC 117 SATCOMやPRC-150)は、送信者が受信者の位置を精密に把握して置く必要があり、またアンテナは電波伝搬状況に応じて昼夜で変更する必要がある
●またGPSと同様に衛星を使用するSATCOMは、有事に通信衛星が中国やロシアの前に脆弱であることを考慮すれば脆弱でアリ、VLFやULF通信実用化への期待は大きい
●12月に公になったばかりのAMEBA計画は、まだ研究開発の初期段階でアリ、企業との開発協力契約もまだであるが、1月6日にバージニア州で開催される企業等関係者に対する「Proposers Day」をDARPAは計画している
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どの程度、「handheld or man-packable」な機材が実現可能なのか不明ですが、夢のある技術ですし、日本企業も絡めそうな気がします。
初夢で終わらないよう期待しつつ、続報を待つことと致しましょう
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